【2024年版】GWに家族で登りたい広島の山10選/バスと電車と足で行くひろしま山日記

今年は新型コロナウイルス感染症が5類に移行して初めてのゴールデンウイークだ。外国人観光客の数も回復しており、有名な観光地や行楽地はどこも相当な混雑が予想されている。人ごみや交通渋滞に巻き込まれる可能性もある。こんな時は、家族そろって自然の中で山登りを楽しんでみてはどうだろう。これまで「バスと電車と足で行くひろしま山日記」(https://hread.home-tv.co.jp/tag/mountaindiary/)で紹介した山の中から、家族で登れ、眺望も楽しめる10座を選んでみた。長距離のロード歩きは避けたいので、登山口までの交通手段は車を利用することを基本にしている。どの山もそれほど難易度は高くないが、安全のため登山・トレッキング用の靴はぜひ用意しよう。関心のある方は、以前掲載した「GWに家族で登りたい広島の山7選」(https://hread.home-tv.co.jp/post-157333/)も併せて参照してほしい。なお、写真は過去の取材時に撮影したものを使っているため、季節感がずれた写真があることはご容赦いただきたい。

 

 

 


①恐羅漢山(1346.2メートル)「広島県の最高峰」


コラムの「恐羅漢山・旧羅漢山」の記事はこちら https://hread.home-tv.co.jp/post-173289/

県内で最高の高さを誇る。スキー場もあり、よく知られた山だ。最高峰とはいえ、登山口の標高が965メートルなので標高差は400メートルほどだ。アクセスは中国道戸河内インターチェンジを下り、国道191号を島根方面に向かう。ナビに任せると険しい内黒峠超えの道を案内されることがあるので注意。深入山を過ぎ、小板で左折して大規模林道を通り、恐羅漢エコロジーキャンプ場の駐車場を目指すルートで行こう。広島市内からなら約1時間30分の行程だ。

 

砥石郷山の1166メートルピークから眺めた恐羅漢山

 

登山ルートは夏焼(尾根)コースと立山コース。家族で行くなら歩きやすい夏焼コースを選ぼう。夏焼の峠(峠は「キビレ」と読む)までは森の中を行く緩やかな道で、「恐羅漢セラピーロード」に指定されている癒しの道だ。約40分で峠に着くと、左に折れて尾根を上る。山道らしくなるが、急登というほどではない。峠から山頂までは約1時間の道のりだ。頂上の東側は展望が開けており内黒山から十方山、臥龍山などの山々が広がる。天気に恵まれれば日本海方面も望める。

帰りは往路と同じ道を引き返すか(所要約1時間20分)、急坂の下りに足が耐えられるならゲレンデをまっすぐ下る立山コース(同40分)をたどれば大幅に時間短縮になる。

 

恐羅漢山の山頂

 


②道後山(1268メートル)「伯耆大山の展望台」


コラムの「道後山・岩樋山」記事はこちら https://hread.home-tv.co.jp/post-205923/

広島県と鳥取県の県境にまたがるよく知られた山。峰続きの岩樋山(1268メートル)と一体になった丸っこい山容が特徴的だ。国道183号から分かれて道後山高原スキー場を抜けて標高1080メートル付近にある月見ヶ丘駐車場まで車で行くことができる。山頂との標高差は200メートルもなく、地形も緩やかなので体力にあまり自信のない向きにも安心だ。

駐車場から岩樋山の山頂までは約45分の道のりだ。まずは遮るもののない展望を楽しもう。道後山へは斜面をほぼまっすぐに下りる。道沿いに岩を積み上げた石塁が続いている。かつて山上が牧場だった時代に、鳥取県側の牛と広島県側の牛が互いに「越境」しないよう牧柵代わりに築かれたのだそうだ。

 

岩樋山から見た道後山(手前)と大山

 

岩樋山から道後山までは30分余り。鞍部まで下った後は草原の中を行く緩やかな道だ。天気と透明度が良ければ、伯耆大山(1709メートル)も望むことができる。広い山頂広場はお弁当タイムに最適だ。

下山はいったん東へ向かい、分岐を右に。山腹を巻くように続く道をしばらく歩くと、大池に出る。かつて砂鉄を採取するために行われていた「鉄穴(かんな)流し」に必要な水を確保するために造られた人工の池だ。帰路は岩樋山を通らずに麓の道をたどって下山する。

 

登山道沿いに残る牧場跡の石塁

 


③比婆山(1264メートル)「古事記伝説の山」


コラムの「吾妻山・比婆山連峰」記事はこちら https://hread.home-tv.co.jp/post-211876/

比婆山登山は県民の森公園センターを起点にするのが一般的だが、体力レベルに差のある家族で行くなら標高1180メートルの立烏帽子駐車場まで車で上るといい。まずは比婆山連峰最高峰の立烏帽子山(1299メートル)へ。急登だが距離はそれほど長くない。山頂から下り、少し上り返すこと15分ほどで池ノ段へ着く。360度の展望が開けた広場は休憩や昼食に最適だ。天気次第で道後山や伯耆大山を見ることもできる。

 

池ノ段から見た比婆山

 

北に目を向けると比婆山(1264メートル)だ。山頂付近には古事記の国生み神話の主役の1人、伊邪那美命の墓とされる比婆山御陵がある。(比婆山・吾妻山の伝説についてはコラムの記事をお読みください)池ノ段から25分ほど下ると越原越(おっぱらごえ)の峠。ここから御陵までは標高差約130メートルを上る。最初の急登を上り終えると傾斜が緩やかになり歩きやすくなる。一帯は国の天然記念物に指定されているブナの純林が広がる。御陵には30分ほどで到着だ。歴史と伝説に彩られた荘厳な雰囲気を味わってほしい。

帰りは来た道を戻る。越原越を過ぎるとすぐに分岐があり、千引岩経由で立烏帽子駐車場に通じるルートを選ぼう。池ノ段、立烏帽子山の山腹をショートカットするので楽に駐車場まで戻ることができる。

 

伊邪那美命の陵墓と伝わる比婆山御陵

 


④深入山(1152.5メートル)「圧巻!360度の大展望」


コラムの「深入山」記事はこちらhttps://hread.home-tv.co.jp/post-150617/

ファミリー登山に適した山は、といえば真っ先に名前が上がる。ドーム状の優美な形をした草原の山だ。毎年春に山焼きをして草原の景観を維持している。今年も4月7日に山焼きをしたばかりなので、ゴールデンウイークはまだ緑が戻っていないかもしれない。

 

深入山と百畳岩

 

スタートはふもとにある「いこいの村ひろしま」か「深入山グリーンシャワーオートキャンプ場」の駐車場。車を駐車場に置いてすぐに登山に向かうことができる。登山口と山頂の標高差は350メートルほどで、3つのルートがある。南登山口からまっすぐ山頂を目指す草尾根ルートは約1時間で登頂できる最短コース。結構傾斜はきついが、遮るもののない登山道を山の形を確かめながら上っていけるのはなかなか爽快だ。一番緩やかなのは林間コース。南登山口を上らず左に向かい、林の中で「頂上2.4K」の標識を右に曲がる。コナラの林を抜け、「頂上1.5K」の標識をすぎて樹林帯を歩き続けると展望岩へ。恐羅漢山や十方山、砥石郷山を展望できる。ここから山の裏側へ回り、20分ほどで山頂に着く。「いこいの村」を起点とする東登山口コースはブナ林歩きを楽しめる。

深入山は独立峰なので、山頂からは掛け値なし360度の展望を楽しめる。北側の眼前には臥竜山や掛頭山が鎮座し、北東方向には天狗石山。南西に恐羅漢山など西中国山地の山々を展望できる。

 

山頂からは360度の眺望が楽しめる

 


⑤大峯山(1050メートル)「広島市最高峰の絶景」


コラムの「大峯山」記事はこちら https://hread.home-tv.co.jp/post-170137/

広島市の最高峰として大人気の山だが、紹介するかどうか少し迷った。登山口から山頂近くまで結構な上りが続き、その間はほとんど眺望も楽しめない。ファミリーで行くとお子さんには少しきついかもしれない。だが、その先にある頂上の展望は、それまでの苦労を忘れさせてくれるすばらしさなのだ。

 

麓の集落から見上げた大峯山

 

駐車場から別荘地内の道路を10分ほど歩くと標高600メートル付近に貯水槽があり、ここが実質的な登山スタート。前半は針葉樹の造林地、後半は広葉樹の森になるが、約1時間、木段の急な上りが続く。1000メートルを超えるとようやく傾斜も緩み、間もなく頂上に着く。頂上には大岩が積み重なっており、ここも360度の展望台だ。吉和冠山や十方山など西中国山地の名山のほか、大野権現山、極楽寺山、東郷山、三倉岳などの近郊の山々、厳島や似島など瀬戸内海に浮かぶ島々まで一望できる。最高地点は狭いし次々登山者がやってくるので、お弁当は別の場所で食べよう。個人的には「回り縁」の岩棚がお気に入りだが、前方が崖になっているのでお子さん連れは避けた方がいいと思う。

下山は上ってきた道を引き返そう。西大峯山、オオネントウを周回する選択もあるが、一般向きではない。

 

山頂は眺望抜群

 


⑥窓ヶ山(711.4メートル)「岩稜の双耳峰と瀬戸内海の展望」


コラムの「窓ヶ山」記事はこちら https://hread.home-tv.co.jp/post-119738/

広島市佐伯区と安佐南区にまたがる窓ヶ山は、東峰・西峰の2つの岩峰の間にキレット(深く切れ込んだ鞍部)をもつ印象的な容姿の山だ。一般的な登山ルートだと南側の広電バス湯来線魚切バス停から上るのだが、標高差が600メートル近くもあるうえ急登が続くのでファミリー向けとはいえない。車を置く場所もない。そこでオススメするのは、北東の「窓が山憩いの森」(https://www.city.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/7196.jpg)からのルートだ。かなりの台数が止められる駐車場があり、登山口と山頂の標高差は200メートルほどだから、魚切ルートに比べると断然楽だ。40~50分もあれば東峰の頂上に立つことができる。登山道もよく整備されていて歩きやすい。

 

窓ヶ山東峰(右)と西峰

 

東峰の山頂からの展望は抜群だ。とりわけ広島湾に浮かぶ厳島、能美島、江田島、似島などが織りなす多島美は一見の価値がある。食事スペースも十分だ。

西峰へは急坂をキレットの底まで下りて上り返す。底部には崩れ落ちた巨岩が折り重なっている場所もある。片道20分ほどの行程だ。憩いの森から上った場合は往復しなければならないので時間を計算しておこう。

 

東峰のピークから見た五日市の町と広島湾の島々

 


⑦せんこう頭部・天狗岩(358.9メートル・370メートル)「駅から歩ける眺望の縦走路」


コラムの「せんこう頭部・天狗岩」記事はこちら https://hread.home-tv.co.jp/post-247066/

広島近郊の山歩きの面白さの一つが、海と島山の景色を楽しめることだ。窓ヶ山からの景観も見事だが、海との距離が近くなれば雰囲気も変わる。その景観を気軽に楽しめるのがせんこう頭部(ずぶう)~天狗岩の縦走路だ。ルート上の山はどれも低いが、その分海と島に近いので高い山とは違った景観を楽しむことができる。

スタートはJR呉線の坂駅。この山は車よりも電車が便利だ。駅の南口を出て左に折れ、すぐに道路を渡って小路に入る。住宅の間を上っていくと墓地があり、標識に沿って歩くと遊歩道の入り口だ。30分ほどで立派な展望台のある頭部みはらし公園。似島や元宇品、金輪島が指呼の間に見える。遠く西中国山地の山々も見渡せる。

 

縦走路上の展望台とせんこう頭部

 

よく整備された縦走路はとても歩きやすい。せんこう頭部までの間には、平岩や見晴岩などの展望&お弁当ポイントがある。せんこう頭部の山頂よりも景色がいいのでオススメだ。天狗岩の山頂は巨岩が連なっており、呉方面から倉橋島も展望できる。天狗岩からは来た道を戻ろう。

 

天狗岩山頂からの眺め。手前は金輪島

 


⑧倉橋火山(408メートル)「万葉集の舞台を眼下に」


コラムの「倉橋火山」記事はこちら https://hread.home-tv.co.jp/post-121486/

倉橋島(呉市)の南側の海域は、古代から瀬戸内海航路の要衝だった。奈良時代に編まれた最古の歌集「万葉集」には、当時長門島と呼ばれていた倉橋島の桂浜の松原を題材に詠んだ歌が収められている。倉橋火山は桂浜の背後に立ち上がる眺めの良い山だ。山頂近くは巨岩が林立しており、岩の間をすり抜けていくところもあった。桂浜の登山口からは1時間ほどで頂上に立てる。はしごを使って山頂の大岩に上ると、360度遮るものがない絶景が楽しめる。周防大島はすぐ近く、西日本最高峰の石鎚山も望める。

 

巨岩が連なる倉橋火山の山頂から南方を望む

 

倉橋火山の背後にある後火山(455.4メートル)に上る途中には展望台があり、ここからの眺めもすばらしい。北側の能美島との間、早瀬瀬戸にかかる早瀬大橋のトラスの造形が美しい。東屋もあるのでランチタイムにも格好だ。鞍部には駐車場がある。西側の宇和木峠から車道が通じており、ここまで車で来たら倉橋火山の山頂までは徒歩10分だ。

下山後はくらはし桂浜温泉館で汗を流して帰ろう。

 

展望台から見た能美島(左)と倉橋島を結ぶ早瀬大橋

 


⑨古鷹山(394メートル)「旧海軍兵学校鍛錬の山」


コラムの「古鷹山」記事はこちら https://hread.home-tv.co.jp/post-133570/

江田島の古鷹山は南の麓にある旧海軍兵学校(現在は海上自衛隊幹部候補生学校・第一術科学校)の生徒たちが、心身鍛錬のために繰り返し登った山だ。スタートは奥小路登山口。駐車場とトイレがある。広島から車で行くなら、広島呉道路を利用して呉から音戸大橋、早瀬大橋を経由して約1時間半。広島港からフェリーを利用すれば1時間くらいだろう。

 

鷹が翼を広げたようにも見える古鷹山

 

標高約330メートルの鞍部までは約1時間の上り。古鷹山は岩峰で、眼前にはきれいな三角錐のピークが見える。頂上直下は急な岩場になっており、鎖やロープが張られている。10分ほどで頂上に立つことができる。山頂は広場になっており、中央に方位盤が置かれている。もちろん眺望は良好。眼下に江田島湾と旧海軍兵学校、西に能美島と厳島、南には遠く四国連山も見渡せる。お弁当を食べるスペースも十分だ。

下山後は海上自衛隊第1術科学校(旧海軍兵学校跡地)を見学するのもいいだろう。平日は1日3回、土日祝日は4回見学を受け入れている。詳しくは見学案内のページ(https://www.mod.go.jp/msdf/onemss/kengaku/index8.html)へ。

 

頂上広場

 


⑩葉田竜王山・筆影山(444.9メートル・311メートル)「芸予諸島の絶景スポット」


コラムの「葉田竜王山・筆影山」記事はこちら(https://hread.home-tv.co.jp/post-361797/

登山コースは、コラムの記事で利用したJR呉線の須佐駅から上るルートと、下山に使った和田口から上るルートがある。須佐駅から葉多竜王山の山頂までは約1時間20分、和田口バス停から筆影山の山頂までは1時間余りの道のりだ。葉田竜王山と筆影山は車道と登山道を通って約1時間。所要時間を参考に、ルートを組み合わせてプランを作ってほしい。記事では和田口に下山後、JR三原駅まで歩いたが、芸陽バスの和田口バス停と三原駅を結ぶバス路線もある。

 

筆影山と芸予諸島

 

両山とも山頂近くまで車道が通じており、駐車場も整備されているので、車で行く選択もある。4月現在、南の幸崎久和喜から葉田竜王山に通じている竜王みはらしラインはのり面の崩落で全面通行止めになっているので他のルートを利用しよう。筆影山から葉田竜王山へも車で行くことができる。

眺望は両山とも抜群だ。向島、因島、生口島、大三島、伯方島のしまなみ海道の島々がほぼ見渡せる。ルート上の因島大橋や多々羅大橋なども確認できる。このエリアは瀬戸内海でも島が多い海域だけに、多島美を楽しめる絶景スポットだ。ぜひ好天の日に行ってみたい。

 

多島美を満喫できる筆影山の展望広場

 

ライター えむ
50代後半になってから本格的に山登りを始めて5年ほど、中四国の低山を中心に日帰りの山歩きを楽しんでいます。できるだけ公共交通機関を利用しますが、やむを得ない場合に時々レンタカーを使うことも。安全のためトレッキングポールは必ず携行。年齢のわりに歩くのは速い方です。
■連載コラムバスと電車と足で行くひろしま山日記
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