バスと電車と足で行くひろしま山日記 第74回葉田竜王山・筆影山(三原市)
広島県内には「冠山」という名の山が多くある。区別するために地名を冠して「吉和冠山」「湯来冠山」などと呼ばれることが多いが、竜(龍)王山もあちこちにある。よく知られているのは比婆山連峰の一角を成す竜王山(1255.6メートル、庄原市)や酒都・西条の街並みを見下ろす龍王山(574.7メートル、東広島市)などだ。2024年の干支は辰。ならば「竜」の名のつく山に行ってみるのも一興だ。車を使わずに行けるアクセスの良い山を探したところ、三原市の海岸沿いにある葉田竜王山(444.9メートル)が目に止まった。山頂からは「瀬戸内海随一」とも評される多島美景観が楽しめるという。峰続きの筆影山(311メートル)まで縦走するプランを立てて電車に乗り込んだ。
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▼今回利用した交通機関 *時刻は休日ダイヤ
行き)JR山陽線・呉線(おとな片道1340円)/横川(6:50)→(8:19)三原(8:25)→(8:32)須波
帰り)JR山陽線(おとな片道1340円)/三原(12:59)→(14:17)新白島
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天気晴朗なれど…黄砂襲来
3月は週末ごとに不順な天気が続き、なかなか山に行くことができなかった。最後の週末になってようやく好天に恵まれたが、天気予報では中国大陸から黄砂が襲来するという。心配したが、朝起きて空を見上げてみるとそれほどひどくはなさそうだ。
JR三原駅で呉線に乗り換え、最初の須波駅で下車。駅前からは海が見える。集落を抜け、登山口に向かう。要所に「三原山の会」が設置してくれた案内標識があるので迷うことはない。麓から見上げる葉田竜王山は、地図の等高線の混み具合を見てもわかるようになかなかの急斜面だ。砂防堰堤から右に上る。登山道は直登ではなくジグザグに付けられているので傾斜は緩和されているのだが、それでも結構息が上がる。道沿いに咲くヤマザクラに癒される。公園などで見るソメイヨシノはまだ咲き始めだが、ヤマザクラは既に満開だ。
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約1時間で山上の駐車場に到着した。葉田竜王山は南側の幸崎久和喜地区から「竜王みはらしライン」とよばれる車道(林道久和喜竜王線)が通じており、頂上の直下まで車で行くことができるのだ(4月3日現在のり面崩壊のため通行止め)。車道を歩くこと数分で山頂に着いた。
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展望台に上ってみる。眼下に多島海の景観が広がる。評判にたがわぬ絶景だ。小佐木島、佐木島、因島、生口島などの芸予諸島と内海が織りなす景色は、瀬戸内エリアの宝だ。ただ、黄砂のせいで見通しはいまひとつ。空気が澄んでいれば西日本最高峰の石鎚山(1982メートル、愛媛県久万高原町)も望めるはずだったのだが、残念ながら見ることはできなかった。
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平家の落人の隠れ里伝説
山頂を後に舗装路を筆影山に向かう。しばらく歩くと沖浦町の集落だ。標高350メートル内外の山間に突然現れた人家にはちょっと意外な気がした。人が住まなくなった家も見受けられたが、隠れ里の風情がある。
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伝承によると、源平合戦の折、屋島の戦い(1185年)で敗れた平家の家臣秦四郎國重(葉田重五郎正時という説もある)が落ち延びて開いたのだという。麓からは集落があるとはわからない立地だ。地元ではこの付近の山を畑山(はたのやま)と言っていたそうで、市の北部にある龍王山(664.8メートル)と区別する意味もあって葉田竜王山と呼んでいるのだそうだ。
にぎわう筆影山山頂
沖浦の集落を後に、車道と山道を20分ほど歩くと筆影山の駐車場に出た。こちらも車で行ける山だ。車の整理にあたっている警備員さんから「桜には1週間早かったね」と声をかけられた。筆影山の山上は約2千本のソメイヨシノが植えられており、三原市内でも有数の桜の名所なのだそうだ。
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山頂広場は登山者のグループや行楽客で大賑わい。ソメイヨシノのほとんどはまだつぼみで、一週間後に来たら満開の見事な桜を楽しめたことだろう。ここにも展望台があり十分景色を楽しめるのだが、おすすめは東に少し下ったところにある展望広場。高度感は葉田竜王山ほどではないが、海との距離が近く、迫力のパノラマが楽しめる。桜はまだだったが、園路にはスモモが白い美しい花を咲かせており、紫のスミレやピンクのツツジも目を楽しませてくれた。
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下山は北側の和田口へ
さて、下山だ。まだ11時半過ぎなので余裕だ。駐車場から山道を少し引き返して分岐を右に下る。20分ほどで和田口登山口に着いた。ほどなく前方に立派な石像が見えた。立ち寄ってみると、弘法大師空海の像だ。完成記念碑には、三原商工会議所の会頭らの名前が刻まれている。この場所に建立された経緯はよくわからなかったが、無事登山を終えられたことに感謝して手を合わせた。さらに約3キロ歩き、JR三原駅に到着したのは12時50分。戦国武将の小早川隆景が築いた三原城の美しい石垣の景色を楽しんだ後電車に乗った。総歩行距離は11.4キロだった。
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2024.3.30(土)取材 《掲載されている情報は取材当時の内容です。ご了承ください》
50代後半になってから本格的に山登りを始めて5年ほど、中四国の低山を中心に日帰りの山歩きを楽しんでいます。できるだけ公共交通機関を利用しますが、やむを得ない場合に時々レンタカーを使うことも。安全のためトレッキングポールは必ず携行。年齢のわりに歩くのは速い方です。
■連載コラム「バスと電車と足で行くひろしま山日記」