アナ直伝 人生を豊かにする質問力 ~世界で最も力を持つのは? #4

ある日突然、番組プロデューサーから聞かれました。

「世界で最も力を持っているのは何だと思う?」

私は謎かけだと思い、「理由がわからないけど怒っている妻!?」と返しました。
プロデューサーは笑っていましたが、その答えは違いました。

「世界で最も力を持っているのは質問です。人は誰でも質問されると答えようとする。誰も質問からは逃げられないんです!」

「えっ!?」意外な答えに驚きましたが、たしかに、私も彼からのこの質問に懸命に考えて答えていました。

質問にこんなパワーがあるとは驚きでした。

 

質問には2種類


その力を持つ「質問」には大きく分けて2種類あります。

① 「オープン・クエスチョン」
先ほどの質問のように「限定せず何でも自由に答えてもらう」もの。
「自由」とはいえ幅広いので、相手の立場に立って答えやすいよう質問します。

昔「なぜ・・ですか?」「なぜ・・?」と繰り返し、とことん追い詰めてしまったことがありました。「何が」「どのように」「今は‥」など、相手の気持ちを考えて具体的に質問していくことが大切です。

 

②「クローズド・クエスチョン」
質問に枠があって答えに自由度はなく「どちらか選ぶ」というスタイル。
「AとBどちらにする?」と答えを早く導き出すことができます。

では「質問」で「人生を豊かにする」とはどういうことでしょうか。

八幡美咲 八幡美咲アナウンサー (C)HOME

 

「質問」の3つのポイント


私たちアナウンサーには「質問=インタビュー」として、3つのポイントを説明します。

1.ワクワクは伝わる
インタビューする人に「この番組で話をしてよかった」と思って頂けるよう、調べられることは時間の許す限り調べ、どのように質問するかを練ります。
著書を読み、その人の最近の話題をインターネットで調べ、その人と仕事をしたことがある人が社内や知人にいたら話を聞きます。
そして、実際はどんな方なのか、ワクワクドキドキしながらお会いします。そのワクワクする嬉しい気持ちは自然に相手に伝わります。

 

2.温かい空気を作る
世界で最も力のある「質問」を投げかけるのですから、「どうすれば気持ちよく答えてもらえるか」を考えます。
いきなりインタビューするのではなく、まずは「お会いするのを楽しみにしていました」という心からの気持ちで挨拶し、カメラが回る前、事前に調べておいた「共通の話題」(出身地や趣味が同じ、犬を飼っている)等で話しかけます。
女優さんにインタビューしたとき、マイクを付けている間に趣味の水泳について聞いたところ、「宿泊したホテルで今朝も5000m泳いできたんですよ」と楽しそうに話してくださり、私だけでなくスタッフ一同その気さくな人柄に感動。インタビューも女優さんの気遣いもあって温かいコメントを頂くことができました。

また、インタビューしている間は「話を聴く表情」が大切。終始微笑みを絶やさず、話に何度もうなずいて、相手への敬意を表します。

 

3.人生を変える気づきを頂く
質問することによって、「この方の苦労や学んで来られたことをインタビューで聞かせていただける。本当にありがたい」と思いながらお話を聴きます。
今は、検索するとネット上の動画や記事で大学教授や有識者の話を聞くことができる便利な時代になりました。昔は、自分で文献を調べたり電話をかけて聞いたり‥情報を得るにはかなりの労力が必要でした。
しかし今の時代でも実際にお会いして、その人の持つパワーや雰囲気・人柄を知ることは何より刺激を受けます。自分自身の人生を変えるような気付きが得られることもあり、それは一生心に残るインタビューとなります。

 

いかがでしたか。
あなたにとって「人生が豊かになるような質問」の機会が訪れますように。

次回は、「両想いになる表現力」について、お話しします。

 

 

伊藤みのり
ライター:伊藤みのり(HOMEアナウンサー)
アナウンサー歴35年を経て放送運行、CM考査業務を経験。
現在はアナウンスグループで、番組ナレーション、アナの育成指導を主に担当。

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