【竹原市】希少種も飛来 冬鳥が集まるハチの干潟|地球派宣言
今年も、竹原市にある「ハチの干潟」に多くの冬鳥たちがやって来ました。
干潟とその周辺では、年間およそ110種類の野鳥を見ることができます。
長年、この場所で生態調査を行っているのが、広島大学の大塚教授。
今回、野鳥観察に同行させてもらいました。
広島大学の大塚教授
早速見つけたのは、「ジョウビタキ」。
鳥は人間に対して警戒心が強く、すぐに飛んで行ってしまうことが多いのですが、ジョウビタキは人懐っこく、たくさん写真サービスをしてくれました。
木にとまるジョウビタキ
少し場所を移動して川沿いへ向かうと、黒くまるまるとした鳥を群れで発見。
秋から冬にかけて渡ってくる冬鳥「オオバン」でした。
主に河川や水辺で過ごすそうで、干潟ではエサを探す姿も見ることができました。
オオバン
観察を続けていると、かわいらしい鳴き声が聞こえてきました。
大塚教授は、「人懐っこい声で、面白い鳴き声で鳴く」と言います。
川で過ごすオオバン
鳥の声も研究されており、鳥たちは「危ないから逃げろ!ヘビが来たから逃げろ!」など同種や他種に対していろいろな会話をしているそうです。
鳥たちの声に耳を傾けると、想像が膨らみますね。
群れで過ごす鳥たち
さらに道を進んでいくと、冬にやってくる珍しいハヤブサの仲間「チョウゲンボウ」に出会いました。
何故かじっとしています。チョウゲンボウが人間を目の前にしても逃げていかないのは珍しいそうで…。
大塚教授は「狩りに失敗して落ち込んでいるんだろう」と推測。
よく見ると、顔を下に向けションボリしているように見えます。
電柱にとまるチョウゲンボウ
冬鳥がこの干潟周辺に集まる理由のひとつが、豊かなヨシ原があること。
一見、不毛の土地に見えるヨシ原にも、実はエサがたくさんあります。
ヨシ原
鳥たちは、このヨシ原で草をめくり、カイガラムシなどを食べます。
大塚教授によると、最近ではヨシ原も減っているそう。
カイガラムシ
干潟では、県内ではあまり見ることのできない貴重な鳥にも出会うことができました。
それが、「ツクシガモ」です。
ツクシガモは、ユーラシア大陸中央部で繁殖し、越冬のため南下してきます。
主に九州北部にやってくる冬鳥ですが、この干潟にも、今年は3羽やって来て仲良く過ごしています。
これまで、ハチの干潟のほか、松永湾でも観察されているそうです。
ツクシガモ
ツクシガモは環境省の絶滅危惧Ⅱ類に指定されており、絶滅の危険性が増大している鳥です。
人間の活動によって生息地が奪われていることが原因だと大塚教授は言います。
ハチの干潟で過ごすツクシガモ
大塚教授が野鳥を観察していると、身近な鳥で感じる変化も…。
それは「スズメ」の減少です。
スズメは、軒下に巣を作って生活をしていましたが、現在は軒下がない住宅が増え、巣を作る場所が減少。
それにともない、スズメも減少してしまったそう。
人間に密着しすぎた結果と大塚教授は考えます。
スズメ
環境が変化していく中で、ハチの干潟周辺に多くの冬鳥たちがやって来るのは、自然が残り、コンパクトにさまざまな環境が整っているから。
干潟や池、川などが近くにあることで、エサも豊富にあり、いろいろな生息地を好む鳥が集まってくるそうです。
干潟に集まる鳥たち
環境が変わりつつある現在、鳥たちが暮らす場所には、いまも豊かな自然が必要です。
その姿を絶やさないため、守るべき場所があります。
広島ホームテレビ『ピタニュー』
地球派宣言コーナー(2024年1月17日放送)