バスと電車と足で行くひろしま山日記 第62回市間山・立岩山(安芸太田町・廿日市市)

前回の「内黒山と那須古道」(https://hread.home-tv.co.jp/post-318126/)の道中、那須古道の「みはらし岩」から対岸の市間山(1108.7メートル)・立岩山(1134.9メートル)を望んだが、頂上付近はガスに覆われて見ることができなかった。山と渓谷社「分県登山ガイド33広島県の山」を開いてみると、立岩山は「近くの十方山や吉和冠山などのような人気はないが、登った人は十分に満足する隠れた名山」とある。ガイドブックには「公共交通機関を利用しての登山は難しい」と書かれていたが、頑張って歩けばなんとかなるだろうとチャレンジしてみることにした。

 

立岩山山頂から縦走路と市間山を望む

 

▼今回利用した交通機関 *時刻は休日ダイヤ
行き)広電バス三段峡線(おとな片道1470円)/横川駅前(8:23)→(9:28)安芸太田町役場
帰り)石見交通新広益線(おとな片道1280円)/安芸太田町役場(15:58)→(17:03)広島バスセンター
*往復とも高速道経由

 

 


登山口までの長いロード・第2章


最寄りのバス停は安芸太田町役場。ここから登山口まではグーグルマップ上では約5キロの道のりだ。予想所要時間が1時間30分もかかっているのは気になったが、「15時台の帰りのバスには十分間に合うだろう」と考え、前回利用した始発便に比べ行動時間が1時間ほど短くなるものの、高速道路経由で乗車時間の短い便に乗ることにした。

安芸太田町役場のバス停で下車。青空が広がり、気温は15度くらい。風もほとんどなく絶好の登山日和だ。南西方向の谷沿いに広がる田吹集落へ向けて歩く。スタートして間もなく、道が半端なく上っていることに気がついた。「そりゃあ登山口までは上りが続くわな」と思ったが、標高はぐんぐん上がるばかり。スマホに入れた登山アプリ・YAMAPの地図を見直してみると、登山口の標高はなんと約870メートル(!)。バス停の標高が270~280メートルだから、舗装路と林道歩きで約600メートルも上らなければならないのだ。これまでは周防大島の瀬戸内アルプス(https://hread.home-tv.co.jp/post-269711/)の時が登山口まで歩いた最長だったが、その時でさえ5.6キロ、標高差約400メートル。見通しの甘さに愕然としたが、行くしかない。黙々と歩く。田吹の集落は谷間に下田吹、田吹、上田吹と一直線に並んでおり、上田吹の標高は580メートルほど。ここから臼谷林道に入り、一転して曲がりくねった道をさらに300メートルほど上る。登山口に着いたのは午前11時5分、歩行時間は1時間35分。グーグルマップでは5キロとなっていたが、標識によると実際には6キロあったようだ。一山登ったような気分だが、これからが本番だ。

 

田吹集落の入り口付近から登山口方向を見る。奥に行くにつれて道路の高度が上がっていく

 

道路沿いにあった窯。炭焼窯だろうか

 

臼谷林道の入り口。右手を上る

 


いきなりの急登


看板には「市間山山頂1時間30分」の表示。トレッキングポールを伸ばして登山開始だ。地形図を見て覚悟はしていたが、いきなり急な上りだ。約20分で杉林に入ると傾斜はさらに急になる。道はとてもよく整備されているので危険はないが、結構こたえる。標高1000メートルを超えると左手は明るい広葉樹の森になり、気持ちも上がる。ブナの巨木も現れた。傾斜も緩やかになり、ほどなく市間山の頂上に着いた。ここまで約1時間。看板より早く登ったと思ったが、YAMAPの地図ではコースタイム通りだった。山頂は広葉樹の樹林に囲まれており、残念ながら眺望はなし。先へ進もう。

 

市間山登山口。標高は約780メートル

 

杉林の中の急坂を上る

 

ブナの巨木を見上げる

 

広葉樹の森に囲まれた市間山の山頂

 


極上の縦走路と絶景の立岩山へ


縦走路にも色々あるが、切れ落ちたやせ尾根だったり、激しいアップダウンや岩稜帯があったりするとあまり楽しめない。〔仮称〕瀬野八アルプス(https://hread.home-tv.co.jp/post-313220/)がそうだった。その点、立岩山への道は明るい広葉樹の森の中を楽しみながら歩くことができる。ボランティアの方々の仕事だろうか、道を見失わせることが多いササも刈り取られていて快適この上ない。こんな楽しい縦走路は、短かったけれども、絵下山~天狗城山縦走(https://hread.home-tv.co.jp/post-161984/)の際に通った子ノ岳から市光山までの「北天尾根」以来かもしれない。

 

広葉樹の林を通る緩やかな道

 

立岩山へ向かう縦走路はササがきれいに刈り取られていて歩きやすい

 

緩やかな起伏の縦走路を行く

 

紅葉も始まっていた

 

約1時間歩き、最後の急登を越え、巨岩をよじ登ると立岩山の山頂だ。これまでほとんど眺めを楽しめる場面はなかったが、ここからの眺望は格別だ。

 

立岩山山頂は名前の通り岩山になっている

 

眼前に十方山(1318.8メートル)(https://hread.home-tv.co.jp/post-160333/)が雄大な姿を現し、麓には立岩ダムのダム湖が見える。十方山の全景を眺めるには最高のロケーションだ。十方山は三百名山にも入っていないが、このどっしりとした景観を見ると名山の列に入れてもいいように思う。

 

眼前に雄大な山容を見せる十方山と立岩ダムのダム湖

 

北側には丸子頭(1236.2メートル)、彦八の頭(1151.8メートル)、前回登った内黒山(1082メートル)などのピークが連なり、内黒峠の下には山懐に抱かれた那須集落が確認できる。

 

内黒山(正面手前)と那須集落

 

歩いてきたコースを振り返ると、市間山。1000メートル級の稜線は紅葉も始まっている。南側に目を転じれば、遠く広島湾も望むことができた。かすかに四国連山の姿も見えたような気がした。まさに絶景、まごうことなき「隠れた名山」だと実感した。

 

市間山(中央)と紅葉が始まっている稜線

 

国土地理院の地図では、ここから40分ほど歩いたところにある1091.3メートルのピークを「立岩山」と表記しているが、正しくは「日の平山」らしい。天に向けて築き上げるような山頂の巨岩を見るにつけ、こちらが間違いなく立岩山だと思う。

 

東郷山と阿弥陀山の間に広島湾が見えた

 


同じコースを逆から見ると


今回は往復とも全く同じルートをたどった。同じ道でも逆から見ると、往路では気付かなかった「発見」がある。縦走路沿いの木の幹には天然のナメコ(多分)が生えていたし、赤い果実が鮮やかなミヤマシキミ(有毒)、白い小花を穂のように咲かせたサラシナショウマも見かけた。傑作だったのは林道の車両通行止めの看板。「チャレンジしないで下さい 通行できません」。確かに単に「通行止め」と表記するよりは効果があるだろう。(ただし歩いた限りでは車が通れないような危険な箇所はなかったような…)

 

天然のナメコ?

 

ミヤマシキミ。きれいだけれど有毒

 

小さな花が集まったようなサラシナショウマ

 

鮮やかな赤色のマムシグサの実。これも有毒

 

ユニークな文言の通行止め看板。通れないことはなさそうだったが…

 

林道の出口付近から上田吹の集落を望む。ここからバス停まで約45分かかった

 

秋の日はつるべ落とし。天気は良くても午後になると山間は暗く感じるようになる。登山口に下山したのは午後2時46分。下り勾配の道路を一生懸命歩くこと1時間余り、石見交通の広島行き高速バスに間に合った。この後の広電バスは下道を通るので時間が倍かかるので助かった。

総歩行距離は19.2キロ、時間は6時間29分(休憩時間含む)だった。

 

2023.10.22(日)取材 《掲載されている情報は取材当時の内容です。ご了承ください》

ライター えむ
50代後半になってから本格的に山登りを始めて5年ほど、中四国の低山を中心に日帰りの山歩きを楽しんでいます。できるだけ公共交通機関を利用しますが、やむを得ない場合に時々レンタカーを使うことも。安全のためトレッキングポールは必ず携行。年齢のわりに歩くのは速い方です。
■連載コラムバスと電車と足で行くひろしま山日記
LINE はてブ Pocket