“定額働かせ放題”の闇 教師の長時間労働の原因を探る
SNSなどで”定額働かせ放題”と揶揄されることもある教師の働き方。
なぜ長時間労働になってしまうのか、その原因や、地域と共に教育現場を変える取り組みについてご紹介します。
教員の1日の仕事のイメージ(出典:広島市教育委員会)
“定額働かせ放題”の原因「増えすぎた仕事」
教育現場の労働環境について、現役の教師であり、教育現場の労働環境改善を訴える活動をしている西村 祐二さんに話を聞きました。
「今の状況は”どブラック”。残業時間が莫大になっていて、過労死ラインを超えちゃっている」
公立教員の1カ月の平均残業時間(名古屋大学大学院 内田 良教授調べ)
これだけ働かなければいけない原因は何なのでしょうか?
「国が定めた学習指導要領というものがあるのですが、10年前と比べると文字数でいえば1.4倍になっている。内容は増える一方だけど、教師の数は増えない。となると、当然残業は増えますよね」
時代に合わせて、授業の量や種類を削減する方向に見直し、準備した授業を提供できる教育課程にした方が、生徒のためになるのではないかと西村さんは話します。
さらに、PTAに関わる会計業務や学校のホームページ更新など、教師じゃなくてもいい業務を教師が担っていることが追い打ちをかけているようです。
日本の小学校担任業務の階層構造(出典:現役小学校教師rayさん)
“定額働かせ放題”の原因「給特法」
さらに、ある法律が長時間労働の原因になっていると西村さんは訴えます。
「”給特法”という法律に根本原因があって、働き方改革が進まない現状がある」
給特法は、公立教員の給与について定めた法律で、1971年に制定されました。
月額給料4%を上乗せする代わりに、残業代や休日勤務手当を支給しないとしています。
しかし、この4%という数字は、当時の残業時間(8時間)を反映させた数字で、現代とは大きくかけ離れています。
半世紀以上見直されていない法律が、教師の”定額働かせ放題”という現状を作り出しているのです。
月額給料25万円の場合、わずか1万円しか上乗せされない
さらに、給特法では、「教師がやっている残業は自発的な物で、管理職が命令したものではない」としており、残業は教師の自己責任とされています。
残業時間の過労死ライン超過などに対して、管理職や教育委員会が対策をとるよう見直しが必要です。
部活動の地域移行
教師の負担を減らそうと、全国で「部活動の地域移行」が進んでいます。
部活動の地域移行に関しては、まだ課題があり、仕組みづくりを模索しているという段階です。
部活動の地域移行
広島県内でも、すでに地域の方々と部活動の指導を始めた学校があります。
「東広島市立 志和小・中学校」では、7つの部活動で外部指導員を招いており、地元と連携して部活動を支える取り組みを目指しています。
「地域移行」ではなく「地域展開」として地域の方々と協力をしています
「的確なアドバイスをしてくださるので自分が上手くなると実感できる」と生徒からも好評
生徒への対応や授業準備といった、本来教師が時間をかけるべき業務に集中できる環境を整えること。
それが、教育現場の活性化・教育の質の向上につながっていくのではないでしょうか。
広島ホームテレビ『ピタニュー』(2023年6月28日放送)
ライター:神原知里