やっているふりだけ?「異次元の少子化対策」にもの申す

政府は、異次元の少子化対策の加速化プランとなる「こども未来戦略方針」を発表しました。

しかし、内容は到底”異次元”と言えるものではありません。

「異次元の少子化対策」の問題点を解説するとともに、前明石市市長の泉房穂さんに本当に必要な子育て支援について話を聞きました。

 

先週公開された「こども未来戦略方針」

 

【児童手当拡充の裏で扶養控除廃止の罠】

政府は、異次元の少子化対策の加速化プランに3.5兆円かけると言うが…。

 

政府は、こども未来戦略方針において、歳出改革や支援金制度の創設を行い、追加負担や増税はしないと言いますが、「高校生の扶養控除を整理する」とも明記しており、扶養控除廃止の可能性もあります。

もしも扶養控除廃止となった場合、異次元の少子化対策の一つである「児童手当の拡充」においてどのように影響するのか、ファイナンシャルプランナーの波多間 純子さんに試算していただきました。

 

高校生にも年12万円のはずが、実質手当は約半分程度になる可能性も。

 

政府は、児童手当の拡充において、所得制限の撤廃や高校生にも年12万円支給するとしていますが、扶養控除廃止となると、所得税や住民税の負担が増すため、実質手当として受け取る額が12万円よりも大幅に減る可能性があります。

 

年収ごとの実質手当額

 

また、扶養控除が廃止されると、年収が高い世帯ほど受け取ることができる実質の児童手当額も少なくなっていくことになり、児童手当よりも税負担の方が大きくなる世帯が出る可能性があります。

少子化対策と言いながら、一部の家庭にとっては負担増となる愚策ではないでしょうか。

 

【高校生の子どもがいる親の意見】

実際に高校生の子どもを育てる親は、政府の少子化対策をどう思っているのか、話を聞きました。

 

高校1年生の子どもがいる瀬川 恵理子さんは

「(扶養控除廃止で受け取る児童手当が半額になることについて)トータルで考えて減っていなければ良いと思いますが、見せ方が不信感につながる。(少子化は)お金だけの問題ではない気がします。若い人が結婚したいと思える環境づくりが必要」

と話します。

 

子どもが3人いる久保田 沙夜香さんは、児童手当の拡充について、

「個人的な話をすると、うちはあまり恩恵を受けれないです」

と話します。

 

というのも、現行制度では、第1子が高校を卒業すると、第2子を第1子とスライド、第3子を第2子とスライドしてカウントをします。

 

第3子であるにも関わらず、第1子が高校卒業すると第2子としてカウントされる

 

児童手当拡充が実施されるのは2024年10月。久保田さんの長女は、その半年後には高校を卒業するため、児童手当が増額されるのは半年間のみということになります。

「『異次元』というとすごいパワーワードだけど、中身はスカスカ。リアルな声を反映させてほしい」

と、訴えます。

 

【本当に必要な子育て支援とは?異次元の少子化対策をぶった斬る】

いち早く子育て支援を充実させ、注目を集めた自治体があります。

兵庫県明石市です。

 

明石市の子育て支援

 

明石市は子育て支援を充実させたことで、10年連続人口が増加

 

こうした子育て支援充実に取り組んだ前明石市市長の泉 房穂(ふさほ)さんに、本当に必要な子育て支援について話を聞きました。

 

前明石市市長の泉 房穂さん

 

「子どもに予算を重点化すればいい。簡単。医療費、保育料、給食費の無料化をすればいい。明石市でできているんだから、国でできないわけがない」

 

さらに、政府の異次元の少子化対策については、

「中身は不十分、スピード感がない、負担がどうなるかも不透明。これでは国民に安心感は生まれない。政策として効果は生まれない。始まる前から終わっている」

とバッサリ。

 

政府が提示する児童手当の拡充についても、

「3人目から(手当倍増)なんて、お金使いたくないからやっているふりだけですよ。今の日本は、1人目から躊躇する、結婚すら躊躇する。そのあたりに対して策が打てるかですから」

と指摘します。

 

扶養控除の廃止については

「理解不能。扶養控除の拡充をはかって、子どもが高校卒業するまで税金を払わなくていいくらいの政策をすればいいのに。逆にもっと税金を取ろうなんて何を考えているのか」

と怒りをあらわにしました。

 

「扶養控除は言語道断」と語る

 

今の日本において優先すべきは、子どもという未来だと泉さんは語ります。

「明石市は子ども予算を2倍以上に増やしたから、子どもに優しい街になった。お金と人を動かすのが政治。総理大臣は予算編成権を持っているんだから、総理が腹くくったらできる。今の政治家は政治をしていない」

と、最後までぶった斬っていただきました。

 

手当が増えても、扶養控除廃止などで負担が増えてしまえば少子化対策の意味がありません。

「財源確保のため」という言葉をよく聞きますが、安心して子育てができる社会にするためには、国会議員の調査研究広報滞在費や報酬の見直し、使途不明金の明確化を含めた「異次元の改革」が必要なのではないでしょうか。

 

 

広島ホームテレビ『ピタニュー』(2023年6月21日放送)

ライター:神原知里

 

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