バスと電車と足で行くひろしま山日記 第50回安芸アルプス㊦(広島市安芸区・海田町・熊野町)
長大な安芸アルプスの縦走記。前週の㊤(https://hread.home-tv.co.jp/post-233463/)に続く後半です。
▼今回利用した交通機関 *時刻は休日ダイヤ
帰り)JR呉線・山陽線(おとな片道240円)/矢野(17:31)→(17:50)広島(18:00)→(18:04)瀬野
無名峰の急登・急坂
天狗防山から来た道を戻り、洞所山(どうところやま 641.1メートル)に向かう。その前に標高591メートルの無名峰(591メートル峰)を越えていかなければならない。この山、ほぼ平坦だった天狗防山と違い、最初から急な登りだ。油断するとバランスを崩しそうになる。途中には真新しいロープが張られており、右手でロープをつかむと安定するので助かる。これもボランティアグループ「あきく魅力探見隊」のメンバーが整備してくれたのだろうか。
591メートル峰への急登。ロープがありがたい 591メートル峰の山頂。眺望はない591メートル峰のピークを越えると急坂。陸上自衛隊の通信設備の横を通り、滑るように下る。鞍部から洞所山へはまた急登が続く。息を切らしながら上りきる。頂上までは時間にしたら15分くらいだったのだが、結構体力を削られた。
洞所山の山頂は樹林に囲まれて眺望はない。安芸アルプスの「弱点」は、眺望を楽しめるポイントが少ないことだ。10分ほど休憩して先を急ぐ。
陸上自衛隊の通信施設 洞所山の頂上。樹林に囲まれ眺望はない
3つの峠と3つのピークへ
ここから先は、稜線伝いに三つの峠と無名峰(566メートル峰)、城山(じょうやま 592.5メートル)を越え、最後の金ヶ燈篭山(かながどうろうやま)を目指す。
洞所山から新峠への下りがまた結構な急坂だ。25分ほどかけて慎重に下った。新峠は西に行けば海田総合公園、東に行けば熊野町初神に通じている。切り通しには「陸軍省」と刻まれた石柱が立っていた。写真を撮っていると、洞所山方面からトレイルランの男性が下ってきた。山中でトレイルランを楽しむ人に時々会うが、登山靴にトレッキングポールでも苦労する山道を軽快に走り抜ける姿にはいつも驚かされる。出会った男性もあっという間に峠を越えて566メートル峰に向けて姿を消した。
新峠そろそろ疲れがたまってきている当方はそうはいかない。重くなり始めた足を引き上げながら上る。566メートル峰のピークを過ぎると地形はなだらかになり、15分ほどでふたつめの峠・古峠に着いた。峠とはいえ標高は約500メートル。熊野と海田を行き来するための里道だったのだろうが、結構な難路だったことだろう。
566メートル峰も眺めなし 古峠。熊野町への下山路は荒れているらしい
巨石連なる城跡の山
次のピークは城山だ。その名の通り、戦国期には城があった。かつては嵩山(たけやま)といい、城は嵩山城と呼ばれていたという。広島藩の地誌「芸藩通志」には、菅田豊後(守)という城主がいたと記録されているが、経歴など詳しいことは不明だ。熊野町側の麓には居館跡もあるという。(未確認)
城山山頂。ここも眺望なし尾根沿いに複数の郭(くるわ)を巡らせた連郭式山城と呼ばれる構造で、山上には多くの巨石や奇岩が連なっている。中にはテーブルの上に塊状の岩を載せたようなものもあった。昨年3月に登った府中市の岳山で見た「はさん箱岩」の小型版だ。同10月に行った廿日市中央アルプスのおむすび岩にも似ていなくもない。
城山山頂近くにあった岩。岳山のはさん箱岩や佐伯中央アルプスのおむすび岩にも似ている 巨岩城山も山頂の展望はなし。「大岩展望地」と標識があった岩の上に上ってみると、東側の熊野町方面から遠く野呂山を望むことができた。ただ、視界は狭く、「絶景」とはいえない。
大岩展望地から熊野町方面、遠く野呂山を望む
最後の峠から最終ピークへ
城山の山頂から1キロほど下るとルート最後の峠・赤穂峠だ。立派なあずまやが整備されている。一息入れようかと思ったが、冬の日は短く、木々の影が長く伸び始めている。先を急ごう。峠を過ぎて2、3分歩くと送電用鉄塔に出会う。周囲は樹木が伐採されており、広島市方面の展望は良好だ。もやもかなり薄くなってきた。縦走ルート上では一番の展望ポイントかもしれない。
立派なあずまやが立つ赤穂峠。日が傾き、立木の影が長く伸びる 赤穂峠上の展望地から広島市街地方面を望む最終ピークの金ヶ燈篭山へはだらだらとした上りが続く。疲労もあって楽しむ余裕はない。15時47分、ようやく金ヶ燈篭山の山頂に着いた。ここも見晴らしはいまひとつだが、きれいに整備されていて気持ちがいい。ベンチも置かれていたのでしばし休憩した。
最後のピーク・金ヶ燈篭山
最後にご褒美の展望
約20分で串掛林道横の登山口に下山した。ここは林道ゆえ公共交通機関はなく、矢野まで歩くしかない。ゴルフ練習場の横を抜け、舗装路が巨岩の手前で行き止まりになったところから山道に入り、岩を巻くように西斜面に出ると愛宕神社だ。石段を上り(結構きつかった)、社殿前の境内からは広島市街地の展望が広がる。依然として透明度はいまひとつだが、市街地までの距離が近いのでなかなかの絶景だ。安芸アルプスのルート上ではないが、あまり眺望に恵まれないロングコースだったので、最後にご褒美をもらったような気がした。
愛宕神社 愛宕神社の境内から広島市街地を見るこの神社は遠征編でも紹介した京都の愛宕山山上にある愛宕神社の末社だ。火事を防ぐ火伏の神として知られているが、1971年に山火事で焼失した歴史がある。説明板に「それにしても、火伏の神(火の神)信仰の愛宕権現が、火難に遭うとは」と書かれていたのには苦笑してしまった。
愛宕神社の説明板このあたりの標高はまだ300メートルもある。夕暮れが近付いてきたので下山を急ぐ。県道34号に出て絵下山に行ったときに利用した矢野天神バス停からJR矢野駅まで広電バスに乗ろうと思ったが、次のバスまで50分待ち。あきらめて駅まで歩いた。総歩行距離は19.2キロだった。
安芸アルプスの全景。左から鉾取山、原山、洞所山、566メートル峰、城山、金ヶ燈篭山2023.1.8(日)取材 《掲載されている情報は取材当時の内容です。ご了承ください》
50代後半になってから本格的に山登りを始めて5年ほど、中四国の低山を中心に日帰りの山歩きを楽しんでいます。できるだけ公共交通機関を利用しますが、やむを得ない場合に時々レンタカーを使うことも。安全のためトレッキングポールは必ず携行。年齢のわりに歩くのは速い方です。
■連載コラム「バスと電車と足で行くひろしま山日記」