国の天然記念物 日本のオオサンショウウオ 消滅の危機 【地球派宣言】

国の特別天然記念物のオオサンショウウオ。
世界最大の大きさを誇る両生類で、水がきれいな場所に生息しています。
安芸太田町の三段峡(さんだんきょう)では、地元のNPO法人が月に3回程度、生息調査を行っています。

生息調査の様子 生息調査の様子

NPO法人三段峡-太田川流域研究会(通称さんけん)の本宮炎(ほんぐう・ほのお)理事長は
「オオサンショウウオは河川の最上位種といわれていて、河川環境を知る指標にもなっている。
多く住んでいるといわれながら、どれだけ住んでいるかという調査が、これまで行われていなかったので実際に自分たちで調査をして明らかにしたい」と話します。

NPO法人さんけんの本宮炎理事長 NPO法人さんけんの本宮炎理事長

 

夜行性のオオサンショウウオ。
1日の調査で10匹捕まえたこともあるそうですが、そこは、特別天然記念物、簡単には捕獲できません。
本宮宏美(ほんぐう・ひろみ)事務局長は「オオサンショウウオはエサをとるために出てくる。
おそらく魚が来る場所があって、そこに向かって口を開けたり閉じたりしながら同じ場所で待っている」と話します。

水中のオオサンショウウオ 水中のオオサンショウウオ

岩の影に隠れていることが多いため、調査は冷たい川の中に入って行います。
すると・・・黒い斑点が特徴の国産のオオサンショウウオを見つけました。
気配に気がついたのか動き始めます。
脅かさないようにゆっくりと近づき、慎重に網へと誘導し
3回目にしてようやく捕獲できました。

網に入ったオオサンショウウオ 網に入ったオオサンショウウオ

すぐさま河原に運び、全長や体重、傷の有無などを確認。
新たに発見した個体には記録用のマイクロチップを埋め込みます。
本宮理事長は「マイクロチップにより、今度捕まえたときにどれだけ大きくなっているか、重くなっているか、ケガが増えてないかがわかるようになる」と調査の目的を説明します。

オオサンショウウオの生息調査 オオサンショウウオの生息調査

清流の主といわれるオオサンショウウオ。
今年5月の調査では、日本のオオサンショウウオとチュウゴクオオサンショウウオとの間に生まれた交雑種が、広島県内で初めて5匹見つかり、その後、さらに22匹確認されました。

交雑種と国内のオオサンショウウオ 交雑種と国内のオオサンショウウオ

 

なぜ、遠く離れた中国との交雑種が広島に現れたのでしょうか。
オオサンショウウオに詳しい広島大学総合博物館の清水則雄(しみず・のりお)准教授は
「元々オオサンショウウオは、文化的に食べられている生き物。国の特別天然記念物になって食べられなくなったため、中国から輸入をした経緯がある。その輸入先で逃げ出してしまい日本全国に分布が広がっている」と話します。

捕獲された交雑種 捕獲された交雑種

また、清水准教授は気性の荒いチュウゴクオオサンショウウオは繁殖する力が強く、広島では30年後には全て交雑種に入れ替わる可能性が高いと指摘。
さらに「親はたくさんいて赤ちゃんも生まれているのに、50mmから430mmまでのオオサンショウウオがほとんど見つからない」と説明。
つまり、人間でいえば中高校生ぐらいのオオサンショウウオが育っておらず、このままでは日本のオオサンショウウオは消滅すると警告します。

広島大学 清水則雄准教授 広島大学 清水則雄准教授

三段峡の調査でも体長22cm、重さ200gしかない小さなオオサンショウウオが見つかりました。
本宮理事長は「これがいま一番日本で減っているサイズ。沢ガニなどの天敵に食べられる。このサイズになるまでがすごく貴重」と話します。
オオサンショウウオは岩場などに隠れて天敵から身を守りますが、護岸工事などで岩場がなくなった場所では、敵に食べられてしまい、大きく育っていないといいます。

小さなオオサンショウウオ 小さなオオサンショウウオ

この日は3時間の調査で5匹を捕獲。体長などを計測した後、川に戻されました。
清水准教授は「オオサンショウウオにとってはピンチの連続で厳しい環境にある。我々が『正の連鎖』をつくって立ち向かっていくのか、オオサンショウウオとともに暮らせる社会を目指していくのか問われていると思う」と話します。

オオサンショウウオを逃がす オオサンショウウオを逃がす

「生きた化石」と呼ばれるほど古い歴史を持つオオサンショウウオ。
共存できるために何ができるか、あらためて考えなければいけません。

オオサンショウウオ オオサンショウウオ

 

 

広島ホームテレビ『5up!
地球派宣言コーナー(2022年11月2日放送)

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