東広島市にある『100年後には消える島』ホボロ島 【地球派宣言】

東広島市安芸津町から船で約5分の場所にある無人島のホボロ島(ほぼろじま)。

あることが原因で消滅の危機にひんしています。

一体なにが起きているのでしょうか。

ホボロ島 ホボロ島

年に1度は島に渡るという古本敦子(ふるもと・あつこ)さんと一緒に、島に上陸してみました。
古本さんは「砂浜が多くあるなという時もあったけど、今はまた砂が少なくなっているように思う。少しずつ崩れている。」と話します。

島を歩く古本さん 島を歩く古本さん

ホボロ島は、全長約50メートル。
ホボロという竹かごに形が似ていることから、その名がついたといわれています。
島の歴史に詳しい植野洋文(うえの・ひろふみ)さんによると、江戸時代の資料には、島の形は丸く1周364mと記載されていました。

歴史について説明する植野さん 歴史について説明する植野さん

植野さんによると島は明治時代に中央が割れ、大小2つの山になったそうで
その後も、時間とともに岩が削られ、シルエットが変わっていきます。
2007年の映像では大きい方の山は完全に消滅。
それから15年、島はさらに小さくなってしまいました。
子どもの頃に島で遊んだこともある植野さんは
「人々から親しまれた島なので、なくなっていくのは非常にさみしい」と話します。

ホボロ島の軌跡 ホボロ島の軌跡

なぜ、ここまで小さくなってしまったのでしょうか。
奥へと進んでいくと、岩にあいた蜂の巣状の穴がみえてきました。
表面は乾燥し、いまにも崩れそうです。
古本さんは「ナナツバコツブムシという小さい生き物が穴を掘って暮らしている」と説明します。

ナナツバコツブムシの穴 ナナツバコツブムシの穴

ダンゴムシに似ているナナツバコツブムシ。
あごで岩を砕いて穴を掘り、外敵から身を守るために潜って生息しています。
15年前、島に渡った古本さんらが、ナナツバコツブムシが岩を崩していたことに気づいたそうです。

ナナツバコツブムシ ナナツバコツブムシ

虫が頑丈な岩を崩していく・・・、一体どういうことなのでしょうか。
長年、ホボロ島を研究している広島大学の沖村雄二(おきむら・ゆうじ)名誉教授は
「元々は流紋岩といって硬い溶岩ですが、熱変成作用を受けて少し風化作用を受けやすい岩石になった。そこでナナツバコツブムシが穴をあけて壊れる」と説明します。

広島大学の沖村名誉教授 広島大学の沖村名誉教授

風化が進んだ岩にナナツバコツブムシが住みつき、岩を穴だらけにしてしまったところに荒波や大雨などがあたり、時間をかけて崩していったのです。
薬品で虫を駆除する方法もあるそうですが、周辺で行われているカキ養殖への影響を考えると現実的ではありません。

上空から見たホボロ島 上空から見たホボロ島

ただ、ナナツバコツブムシは島中の岩に穴をあけ続けたため、生息できる場所も減り、数は減ったそうです。
では、島はこのまま残るかというと・・・。
沖村名誉教授は「岩の両方から穴をたくさんあけて、その上に残っている岩石の塔のような物が倒れたら島はなくなってしまう。これまでの速度から考えると、長く持って100年」と話します。

島に残る“岩石の塔 島に残る“岩石の塔

岩を補修して島を維持する方法もありますが、東広島市は「かわりゆく姿そのものが魅力の一つと考えている。
島の保護についての検討は、特にしていない」としています。
100年後には消えてしまうというホボロ島。
人々は見守るしかありません。

遠くからみたホボロ島 遠くからみたホボロ島

 

 

広島ホームテレビ『5up!
地球派宣言コーナー(2022年10月26日放送)

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