バスと電車と足で行くひろしま山日記 第97回呉の九嶺・完結編/向尾山・鉢巻山・傘松山縦走(呉市)

迫力ある水流の二河峡

 

呉の地名の由来は諸説あるが、九つの嶺に囲まれていることから九嶺、転じて呉になったともいわれている。本連載では第34回灰ヶ峰(https://hread.home-tv.co.jp/post-174890/)で灰ヶ峰(5番)と大迫山(4番)の2嶺、第94回呉の九嶺/尾島山・休山・日佐護山・三津峰山(6~9番)縦走(https://hread.home-tv.co.jp/post-556661/)で4嶺を踏破した。残る3嶺を制覇し、九嶺コンプリートを目指すべく呉に向かった。

 

▼今回利用した交通機関 *時刻は休日ダイヤ
行き)JR山陽線・呉線(おとな片道510円)/横川(8:26)→広島→(9:29)呉
帰り)JR呉線・山陽線(おとな片道510円)/呉(14:16)→(快速安芸路ライナー)→(14:53)広島(15:00)→(15:04)横川

 

 


映画ロケ地の階段を上る


JR呉駅を出て北西に向かう。市街地を10分ほど歩くと「両城の200階段」の入り口だ。

軍港として発展した呉市は、平地の多くが軍用地に使われていたため、海軍工廠で働く職工や軍関係者の住宅は山裾の急傾斜地に作られた。両城地区は地形を利用して階段状に住宅が建てられ、「階段住宅」とも言われた。この住宅地の通路になっているのが「両城の200階段」だ。実際には260段ほどあるらしい。両側の「階段住宅」は空き家や更地になっているところもあるが、最盛期に呉市の人口が40万人を超えたという戦時中には、さぞかし活気があったことだろう。

この階段は、2004年に公開された潜水士を目指す若き海上保安官を描いた映画「海猿」で訓練シーンのロケに使われた。10数キロもあるボンベを背負って駆け上がる想定だった。遠目から見てもしんどそうな階段だったが、実際に上り始めるとあっという間に息が上がる。役者さんも大変だっただろうな、と思いながら歩を進めた。

10分ほどで階段を上りきると、眼下に市街地や呉港が広がる。正面には第94回で踏破した休山(497メートル)を中心とした連山が、左手には第34回で取り上げた九嶺の主峰・灰ヶ峰(736.7メートル)が鎮座している。階段はきつかったが、この眺望はご褒美だ。

 

両城の200階段と「階段住宅」

 

両城の200階段。きつい!

 

階段を上りきった高台からの眺め。正面は休山

 


九嶺の1番・向尾山へ


住宅街を抜け、両城中学校の脇を通って5分ほど舗装路を歩くと登山道の入り口だ。木製の標識は朽ちて文字が読めなくなっており、YAMAPの地図がなければ見逃してしまいそうだ。

少し荒れ気味の道を上る。15分ほどで両城山(131メートル)へ。九嶺には含まれていないが、今回の山行の最初のピークだ。尾根の道は緩やかで歩きやすい。道沿いにはミツバツツジがピンク色の花を咲かせ、名残のヤブツバキも赤い花をつけているが、それほど楽しめる道ではない。

約10分で九嶺の1番、向尾山に到着した。地図には標高が記されていないが、163メートルほどらしい。山頂は樹林に囲まれて見晴らしはない。写真だけ押さえて先へ向かう。

 

この頃はミツバツツジが満開だった

 

名残のヤブツバキ

 

九嶺の1番、向尾山の山頂。残念ながら眺望はなし

 


鉢巻山の戦争遺構


しばらく歩くと傾斜がきつくなる。急傾斜というほどではないのだが、しばらく山歩きをしていなかったので体が慣れておらず、ペースが落ちる。20分ほどで次のピーク、愛宕山(大根山)へ。ここも地図には標高が書かれていないが、手製の案内板には「277メートル」とあった。

それにしても単調な道だ。樹林に囲まれて展望もなく、正直、「九嶺コンプリート」という目標がなければあまり楽しいコースではない。

黙々と歩いて11時15分、九嶺の2番、鉢巻山(399.7メートル)に登頂。今回の最高地点だが、ここも樹木に遮られて眺望はない。少し早いがここで昼食にすることにした。

鉢巻山には戦時中、軍施設を守るための防空砲台が築かれていた。山頂広場の少し先にはコンクリート製の水槽のような構造物が立っている。砲座の跡も残っているらしいが、下調べをしていなかったので見逃してしまった。

 

九嶺の2番・鉢巻山

 

鉢巻山の山上に残る防空砲台施設の水槽跡と思われるコンクリート構造物

 


4年越しのコンプリート


九嶺のラスト、傘松山(3番)へ向かう。急斜面を下り、軍用道路跡と交わる地点に立つ「傘松山へ」という小さな標識を目印にピークを目指す。標高差は40メートルほど、約5分で山頂に着いた。残念ながらここも樹林帯の中だった。灰ヶ峰(5番)と大迫山(4番)に登ったのが2022年6月。当時、そのまま今回のコースを逆にたどることも考えたが、体力を消耗して断念したので、約4年かけての九嶺コンプリート達成だ。

 

鉢巻山からの下りは急坂

 

九嶺の3番・傘松山への登り口。小さな案内板を見落とさないように。左の道は旧軍用道路

 

九嶺の3番・傘松山。ここも眺望なし。コンプリート!

 


迫力の二河峡へ


さて下山だ。墓地を通って鍋土峠へ。時間は12時20分。ここから焼山団地方面まで歩いてバスでJR呉駅まで戻る予定だったが、地図を見ると南に向かえば二河峡へ行ける。山行自体は強度低めだったのでまだ体力は十分残っているし、時間もたっぷりある。せっかくなので二河峡に立ち寄ることにした。

県道31号を約20分歩くと二河峡公園の入り口に。このルートは中国自然歩道の一部になっている。峡谷のある二河川まで標高差約50メートルを下ると、巨岩が連なる二河峡だ。水量も多く、なかなかの迫力だ。川には滝見橋と名付けられた吊り橋がかかっていて、橋上から眺める二河滝などの景観は格別だ。山からの景色は楽しめなかったが、最後に報われたような気がした。

後は駅までひたすら舗装路を歩いた。総歩行距離は9.6キロだった。

 

墓地から傘松山を見上げる

 

二河峡公園への降り口

 

二河峡にかかる滝見橋

 

迫力ある水流の二河峡

 

中国自然歩道の案内板

 

呉市街地から見た鉢巻山

 

2026.4.12(日)取材 《掲載されている情報は取材当時の内容です。ご了承ください》

 

 

ライター えむ
50代後半になってから本格的に山登りを始めて5年ほど、中四国の低山を中心に日帰りの山歩きを楽しんでいます。できるだけ公共交通機関を利用しますが、やむを得ない場合に時々レンタカーを使うことも。安全のためトレッキングポールは必ず携行。年齢のわりに歩くのは速い方です。
■連載コラムバスと電車と足で行くひろしま山日記
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