バスと電車と足で行くひろしま山日記 第85回みはらし連山(三原市)

筆者が年明けにアクシデントに遭ってしばらく山に行けなかったこともあり、前回からすっかり間があいてしまった。バス便の縮小もあって公共交通機関で行くことができる山も少なくなってきたのだが、無理のない範囲で続けていきたい。2025年もよろしくお願いします。
再開する今回の山をどこにするか。今冬は3月に入っても寒い日が多く、中国山地の山々はもう少し暖かくなってからの方がよさそうだ。そうなると、候補は瀬戸内海沿いになる。そういえば第83回の佐木島(https://hread.home-tv.co.jp/post-446180/)に行った際、対岸の山々が海に近く見晴らしがよさそうに思えた。調べてみると、4つの峰を縦走する「みはらし連山」と名付けられたルートがあるらしい。多島美を楽しめることを期待して行ってみることにした。
▼今回利用した交通機関 *時刻は休日ダイヤ
行き)JR山陽線(おとな片道1340円)/横川(7:37)→(9:06)糸崎
トモテツバス福地線(おとな片道290円)/糸崎駅前(9:13)→(9:17)赤石
帰り)JR山陽線(おとな片道1340円)/三原(14:58)→(16:20)横川

参道と重なる登山道
スタートはJR糸崎駅。広島県内のJR山陽本線では東西の結節点となる駅だ。広島方面からの電車はここが終点。福山・岡山方面に行くときは乗り換えることになる。以前はみどりの窓口も設置されていたが、2020年2月に廃止され、いまは自動券売機があるだけだ。

駅舎を出て目の前の国道2号を渡って糸崎駅前バス停へ。ほどなくやってきたトモテツバスに乗り換える。右側はすぐ海なので眺めは良好だ。向島と因島をつなぐしまなみ海道の因島大橋が優美な姿を見せている。最初に上る鉢ヶ峰(429.4メートル)の登山口がある赤石バス停で下車。JR山陽線の踏切から見上げると、傾斜が急な様子が見て取れる。急ということは海と山頂の距離が近いということ。山上からの眺望に期待が高まる。


しばらくは住宅地を歩くのだが、いきなりの急坂で息が上がる。道沿いに咲くスイセンになごまされる。


山名の由来となる伝説の堂宇へ
鉢ヶ峰の八合目には真言宗御室派・観音寺の奥の院があり、登山道は参道を兼ねている。4月13日には鉢ヶ峰大祭があり、参拝者でにぎわうようだが、整備されているとはいえなかなか険しい道だ。
平安時代に万慶上人が自ら彫刻した虚空蔵菩薩をお堂に安置して開山したという。伝説によると、上人は法力で鉄の鉢を飛ばして沖の船に喜捨(施し)を求め、米などを受け取ると山に帰ったという。鉢ヶ峰という山名はこの言い伝えに由来するそうだ。
15分ほどで中休大師堂に到着。名前の通り、中休みの位置にある。ひと息入れて振り返ると、眼下に岩子島や細島、因島など内海の風景が広がる。さらに12分ほど上ると奥の院に到着した。立派な堂宇だ。無人のためお堂の入り口には鍵がかかっている。お賽銭をして久しぶりの登山の安全を祈った。

寺の南側には立派な展望台が設えてある。180度を見渡せるので眺めは抜群だ。東側は尾道水道、正面に芸予諸島、西に第74回で紹介した葉田竜王山・筆影山(https://hread.home-tv.co.jp/post-361797/)が望めた。




ルート最高峰から鉄塔の山へ
ここから本格的な山道だ。傾斜は少し緩やかになる。上り始めてすぐに鉢ヶ峰、大平山(424.2メートル)、米田山(356.9メートル)、象山(270メートル)と続く「みはらし連山」の看板。10分ほどでルート最高峰の鉢ヶ峰の山頂に着いた。

ここからの眺望もすばらしい。奥の院前の展望台では見えなかった三原市の市街地が見渡せる(逆に尾道水道方面は見えない)。ここでお昼を食べると最高だろうが、時間はまだ10時40分。先に向かうことにする。

縦走路はそこそこアップダウンがあるが、それほどきつくはなく歩きやすい。林間の道だが、ところどころで展望もある。約30分で次のピークの大平山へ。山上には国土交通省とソフトバンクの無線中継所があり、2基の鉄塔が立っている。三角点は西側の鉄塔の近くにあった。ここは眺望もないので長居をする理由はない。次の米田山に向かう。

米田山でカップ麺ランチ
山道から管理用の舗装道路に出て少し歩いてまた山道へ。標高差にして120メートルほど下り、上り返す。木立の中を気分よく歩く。約30分で米田山の頂上に着いた。

時刻は12時過ぎ。昼食にはちょうどいい時間だ。視界はそれほど開けてはいないが、正面に高根島、葉田竜王山と筆影山があり、ロケーションとしては悪くない。コンロで湯を沸かし、久しぶりのカップヌードル(カレー)を作る。久しぶりの山ごはん、山で食べるカップ麺は相変わらずおいしい。スパムおにぎり、食後のコーヒーも併せて満足の昼食だった。

象山からの下山が…
久しぶりの山歩きで少し疲れてきた。最後の象山はいったん200メートル付近まで下ってから上り返す。上り返しの道はきつくないのが救いだ。途中、北側が崩れ落ちている個所があり、危険防止のため「はいるな」という看板が登山道横に盛大に掲げられていた。



象山の山頂には13時30分に到着した。これまで歩いてきた、みはらし連山の山々が望める。標高が高くないため、三原市の市街地が近い。三原駅を通過する新幹線もよくわかる。眼下には三原港や工場群が広がり、みはらし連山の最後のピークにふさわしい眺望だった。



さて、下山だが、山頂から登山口まではほぼ一直線の下り。トレッキングポールを突きながら足に負担をかけないように気を付けたが、あっという間に膝に来た。登山口までの15分は相当な苦行で、最後の階段にたどりついた時はほっとした。事前の計画では、時間に余裕があれば三原駅北側の桜山(175メートル)をピストンすることも考えていたのだが、足に余裕がないので断念。そのまま三原駅から帰途についた。総歩行距離は7.7キロだった。



《メモ》みはらし連山はJR三原駅に近い象山から上るのが一般的。今回は下山後のバス便が少ないことを考え、スタート時間を計算できる鉢ヶ峰側から上った。もっと歩きたければ、尾道市の鳴滝山(401.8メートル)・鳴滝城山(322メートル)を加えることもできるが、体力とバス便を考えたプランニングが必要。
2025.3.20(木・春分の日)取材 《掲載されている情報は取材当時の内容です。ご了承ください》
50代後半になってから本格的に山登りを始めて5年ほど、中四国の低山を中心に日帰りの山歩きを楽しんでいます。できるだけ公共交通機関を利用しますが、やむを得ない場合に時々レンタカーを使うことも。安全のためトレッキングポールは必ず携行。年齢のわりに歩くのは速い方です。
■連載コラム「バスと電車と足で行くひろしま山日記」