かわいいけれど特定外来生物 街中で繁殖し続けるヌートリア|地球派宣言
かつては国策として輸入されたヌートリア。しかし必要がなくなると野外に放たれ、繁殖。
現在は、国の特定外来生物に指定されているヌートリアの暮らしを取材しました。

広島市安佐南区。
市民の憩いの場として親しまれる「せせらぎ公園」。

茂みの中から見え隠れするのは……ヌートリア。
大きくなると全長70センチ、体重9キロほどになるという、ネズミ目ヌートリア科の哺乳類です。

ヌートリアに詳しい畑瀬さんは、「この辺の草をかじったあとはヌートリアだと思います。いろんなものをかじっています。ヤナギの皮もかじっています。この辺りでこれができるのもヌートリアしかいない。」と話します。

「ぐるっと外周を食べてしまうと枯れると思うけれども、案外枯れないで残っているので一部は残しているんでしょうね」と、畑瀬さんは、ヌートリアがせせらぎ公園の中で生活していると推測します。

この日、せせらぎ公園で発見したのは、4頭の子どものヌートリアとその両親と思われる大人のヌートリア。
夜行性だそうですが、子どものヌートリアはお食事中でした。

外来種であるヌートリアが日本で生息している理由を畑瀬さんに聞きました。
「南米原産で、第二次世界大戦の頃に日本に連れて来られました。最初に入ったのは、動物園の展示用だと聞いていますが、ちょうど第二次世界大戦のころに飛行機に乗るときの寒さ対策で、毛皮を(軍服の)襟巻にするのに養殖されたと聞いています」

ヌートリアの輸入の目的は、上質な毛皮を主に軍服の材料に利用するための国策だったといわれています。
そして、その後のヌートリアについて畑瀬さんは、「肉として食べようとしたらしいのですが、その中の一部が逃げ出したと考えられます。各家庭でも飼って増やそうとしたという話もあるので、戦後助けてもらった生き物ではあると思います」と話します。

逃げたヌートリアは西日本を中心に繁殖。岡山・広島では、ほぼ全域で確認されています。
現在は、生態系や農作物に被害を及ぼすおそれがあるため、国の特定外来生物に指定され駆除の対象になっています。

人間の都合で異国へやってきて繁殖したヌートリア。
畑瀬さんは、「生態系を勉強して、動物園で『野生動物を守りましょう』と言っている立場からすると、ヌートリアはやはり日本にはいてはいけない存在。負の遺産であり、それを反面教師として、次の世代に『安易に新しい動物を入れたらダメだよ』と言えると思います」と警笛を鳴らします。
広島ホームテレビ『ピタニュー』
地球派宣言コーナー(2025年3月12日放送)
