デニムや木材が名刺に 廃材に新たな命を吹き込む手漉き紙|地球派宣言

府中市で「ある廃材」を使った取り組みが行われています。

人と人とのつながりを通して、身近なものに生まれ変わらせるそのプロジェクトとは?

 

デニム廃材で作った名刺

 

府中市で名刺やパンフレットなどのデザインや印刷を行う『コトブキ印刷』。

挨拶の際に手渡されたのは、手漉き紙で作られた名刺。実はこの名刺、デニムの廃材でできているのだそう。

 

コトブキ印刷

 

このプロジェクトを担当するのは、宗藤正典さんです。

印刷物だけに限らず、WEBや映像などのデザインや制作などトータルでプロデュースしています。

 

宗藤正典さん

 

なぜ印刷する会社が紙を作り始めたのでしょうか?

宗藤さんに聞くと「その土地の文化や伝統的な産業を紙にできたら素敵だなと思って」とそのきっかけを教えてくれました。

プロジェクトのはじまりとして考えたのが、デニム生地の廃材。

 

デニム生地

 

この地域には古くから備後絣があり、福山市にあるデニム工場『カイハラ』ではデニム生地を製造しています。

着目したのが、生地を作る中で生まれる廃材です。

 

デニム生地を製造する『カイハラ』

 

『カイハラ』の渡邊弘さんに聞いてみると、年間約50トンが廃材になっているのだそう。

デニムを加工するときに出る端切れや、品質を確認するための、製品にならない生地などを紙の材料として提供してもらうことにしました。

 

デニム工場から出る廃材

 

大きな生地もこれまでは廃棄されていましたが、名刺にすると数千枚になるそうです。

 

この生地1枚で数千枚の名刺になるのだそう

 

デニムの廃材を紙にするのは、福山市にある自立支援施設『トータルウィン きらり事業部』です。

 

トータルウィン きらり事業部

 

廃材と古紙、牛乳パックや酒パックを混ぜてミキサーで細かくして紙の材料を作り、それを1枚1枚手漉きで紙に仕上げていきます。

 

廃材を混ぜ合わせた材料

 

手作業にこだわったのは、大手の製紙工場で作ると多くの廃材が必要となりコストもかかってしまうため。

地域の廃材を同じ地域で、1枚1枚手漉きで紙を作ることにしたそうです。

 

手漉きをする作業場

 

デニム廃材を使った手漉き紙が完成したのは、2022年。名刺として利用することで、地域に広がり始めました。

 

デニム廃材を使った手漉き紙

 

この取り組みに興味を持ったのが、地元の家具工場『土井木工』です。

 

家具を製造する『土井木工』

 

『土井木工』では、これまで家具を製造する中で出る端材をリサイクルし、スマホスタンドや小物トレーなどにしていました。

 

端材をリサイクルして作ったスマホスタンドや小物トレーなど

 

しかし、再利用する上で困っていたのが“のこくず”です。

かなりの量が廃材として出ており、社員からどうにかできないかと声が上がっていた中、廃材を使った手漉き紙の材料として使われるようになりました。

 

のこくずを紙の材料として提供している

 

地域で出る廃材などを使った手漉き紙の名刺は増え続け、デニムや木材だけでなく平和公園に届くおりづるや味噌を作る工程から出た大豆などを使って、11種類を生まれ変わらせています。

宗藤さんは、「廃棄されていたものは、製品と同じくらいストーリーを持っている」と言います。

 

11種類の廃材を手漉き紙の名刺にしている

 

捨てられるはずだった地域の廃材。手漉きに思いを込めて、新たな命を吹き込んでいます。

これからも人と人とのつながりを通して、可能性は広がっていきます。

 

廃材で作った手漉き紙

 

■コトブキ印刷 有限会社 コトブキ印刷 | 広島県府中市にあるデザイン制作と印刷の会社 (co-tobuki.co.jp)

 

 

 

 

広島ホームテレビ『ピタニュー
地球派宣言コーナー(2024年3月20日放送)

SDGs

 

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