【密着8カ月】コウノトリが運んできた幸せのメッセージ|地球派宣言

今年、世羅町で広島県初となるコウノトリのヒナが誕生しました。

今回は、世羅町で繁殖を確認し、ヒナの誕生、巣立ち、さらにその後のヒナの様子まで貴重映像と共に振り返ります。

人との暮らしを求めて里山に帰ってきたコウノトリが、私たちに語りかけるメッセージとは…。

 

コウノトリのヒナ(撮影:稲住 正明)

 

国の特別天然記念物に指定されている「コウノトリ」は、翼を広げると2mにもなる大型で希少な水鳥です。

野生のコウノトリは、1971年に絶滅してしまいました。

 

里山に帰って来たコウノトリ(撮影:稲住 正明)

 

世羅町に住む稲住さんは、今年3月、これまで見たことのない光景に出会います。

それは、「クラッタリング」と呼ばれる求愛行動。そして、交尾をする様子です。

 

クラッタリング(撮影:稲住 正明)

 

3歳になるペアにとって初めて命を授かった瞬間でした。

 

命を授かった瞬間(撮影:稲住 正明)

 

3月末、ペアが巣作りの場所に選んだのは、周囲に山が迫る世羅町寺町。家のそばに立つ電柱の上が新居です。

一度つがいになるとよほどのことがない限り離れることがないと言われるコウノトリ。

材料の大きな枝を集め、ペアで巣作りをしました。

 

枝を集めるコウノトリ(撮影:稲住 正明)

 

卵やヒナを守るため、大きな枝を集めて周囲を固め、中には柔らかい草を敷き詰めます。

1週間経つと、あっというまに巣の形に。

初めての巣作りに、お互いこだわりがあるような光景も見られました。

 

巣作りするペア(撮影:稲住 正明)

 

5月上旬、広島県初となるヒナが3羽誕生しました。

誕生から1カ月するとその姿を見ることができるように。

 

コウノトリのヒナ(撮影:稲住 正明)

 

コウノトリを撮影し続けた稲住さんは、

「週に1回くらいで撮影に出かけると、その度に大きくなっていった。まさか世羅町で繁殖するとは夢にも思わなかった」とその瞬間を振り返りました。

 

稲住 正明さん

 

世羅町では、コウノトリが警戒しないように立て看板を設置し保護を始めました。

巣の近くに住む徳光隆昭さんは、初めて見る巣作りとヒナの成長を観察小屋を作り遠くから毎日観察していました。

 

観察小屋を作った徳光さん

 

巣のそばに住む徳光紗代さんは、娘が起きる時間に窓を開けて、毎日ヒナの成長を見守っていたそうです。

 

娘の部屋からコウノトリを見守る徳光さん

 

6月には、ヒナを近くで見られる機会が訪れました。

巣から降ろし健康状態の確認と個体識別をするための足環が取り付けられました。

番号で、いつ・どこで生まれたかが一目で分かります。

この時、ヒナは順調に育っていて、世羅町のエサ環境も良いことが分かりました。

 

健康状態の確認(提供:世羅町・せらケーブルネット)

 

世羅町は、ヒナの愛称を募集。

町の子どもたちによって名前が付けられ、家系図も作られました。

 

3羽のヒナの名前

 

6月、3羽の巣立ちが確認され、世羅町を訪れるとヒナたちは水田でエサ取りの練習中。

時折、親鳥がやって来てエサ取りの手伝いをする姿も見られました。

 

水田でエサ取り

 

この様子を観察していたのは愛媛大学の伊東さん。コウノトリのエサについて観察を行っていました。

すると7月は主にカエルを食べていましたが、稲の背丈が高くなるとカエルではなく、イナゴを主に食べていたそうです。

 

愛媛大学の伊東 大地さん

 

世羅町では、数の少ないコウノトリを守っていくために新たな取り組みが始まりました。

取り組みのひとつが、作った巣を利用して人工巣塔を建てる計画です。

電柱に巣を作ると感電する危険があるため、電柱の上に巣を置く台座を付けた巣塔を作り、今年作った巣を置いて再び戻って来ることを期待しています。

 

人工巣塔(兵庫・豊岡市)

 

この人工巣塔を作るために今年作った巣は取り外し、せら夢公園に保管・展示しています。

大きさは約1m80cm、重さは約50kg。

大きな枝を組み合わせ、卵やヒナを守るために草が敷き詰められていました。

 

今年作った巣

 

今年、世羅町では11羽のコウノトリが確認されました。

8月には豊岡市から6羽が飛来し、ヒナたちがともに街の中で過ごしています。

 

町の中にいるコウノトリ

 

保護活動に関わる世羅町文化財保護委員会委員の中島さんは、

「コウノトリは見るだけで感動がある。私たちとしてはコウノトリを守るのではなく、生物多様性の自然を守ることが大切。改めて見つめ直してほしいとコウノトリが言っているのでは」と語りました。

 

中島 秀也さん

 

コウノトリは、全ての生き物が暮らすために必要なことを私たちに問いかけ、そこには幸せへの道があるのではないでしょうか。

 

田にいるコウノトリ

 

世羅町にある大田庄歴史館では、コウノトリの家系図を展示しています。

今年、豊岡から飛来してきたヒナは、世羅町のヒナたちの親戚関係にあると言います。

さらに、11月23日(木・祝)には世羅町コウノトリシンポジウムも開かれます。

コウノトリや生物多様性を学ぶディスカッションのほか、町の子ども達によるコウノトリの歌の披露などもあるそうです。

 

大田庄歴史館 家系図展示

 

 

広島ホームテレビ『ピタニュー
地球派宣言コーナー(2023年10月4日放送)

SDGs

 

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