深刻な教員不足問題と、教員の労働環境改善について考えた

文部科学省の調査によると、全国で2,000人以上教員が不足しています。

今回は、深刻な教員不足問題と、教員の労働環境改善について考えました。

 

“教員不足”に関する実態調査(出典:文部科学省 令和4年1月報告)

 

【教員の過酷な労働環境】

広島市の公立中学校教員として40年以上勤務していたAさんに、教員不足の現状について赤裸々に教えていただきました。

「あまりの忙しさに体調を崩して休む先生が増えている。しかし、代員がいない。ある小学校で教員が病休に入って、市の教育委員会に連絡したら『代員は10人待ち』と聞いた」

他の小学校では、主幹や教頭が授業を行うこともあったそう。

 

こうした問題を解決するには、労働環境の見直しが必要とAさんは訴えます。

「月135時間働いていました、勤務時間外で。土日も含めて休みが月に1日だけ。こうした状況を解消するには、先生の数を増やすことと、1クラスの生徒数を減らすこと。先生が増えてゆとりができれば変わる」

現代の価値観に合わせた労働環境に変えていくことが、教員不足の解消につながっていくと考えます。

 

【来年から教員になる学生の思い】

教員の受験者数・採用数・競争率の推移(出典:文部科学省「公立学校教員採用選考」などを基に作成)

 

こうした現状を、来年から教員になる学生はどう考えているのでしょうか。

「教員の働き方は改善していくべき。疲労がたまったまま授業をすると、児童にそれが伝わってしまう」

厳しい労働環境だと知った上で教員を目指したのは、教員ならではのやりがいにあると言います。

「教育実習のとき、鉄棒の授業で逆上がりができない子が、一緒に頑張っていくなかでできるようになって。『鉄棒が好きになった』と言ってくれたときは報われた気持ちが大きかった」

教員は子ども達の成長を身近に感じることができる魅力的な仕事だ、と目を輝かせる学生たち。こうした志を持つ若者が長く働くことができる環境を整えていかなければなりません。

 

教員の労働環境改善 広島県教育委員会の対策

 

【教員の労働環境改善】

教員の負担軽減改革をいち早く実践し、結果を出している人がいます。

教育改革実践家の藤原和博さんです。

 

『学校がウソくさい』の著者でもある藤原和博さん

 

藤原さんに教員不足について話を聞きました。

「文部科学省のデータを見ると分かると思うのですが、教員不足はウソなんです。定数には足りている。本質は、教員がいろんなことをやり過ぎている。なんでも押し付けられて。投資教育なんて指導要領に無理やり入れられて、高校の家庭科の先生が教えろってなっている。複雑なことをやり過ぎて、教員不足を招いている」

 

“あれもこれも教員がやれ”という現状…。

 

あれもこれもと追加になっていく指導内容に対して、「No」と言うことはできないのでしょうか。

「知事、教育長は『やらなくていい』と言う権限がある。校長にも教育課程の編成権がある。知事、教育長、校長の3人が『半分やめよう』と言えば罰する法律はない」

 

各自治体や教育委員会が、複雑な指導内容を独自に見直すことで負担軽減につながる

 

さらに、不必要な文書や事務処理の削減も、教員の負担軽減につながるそうです。

「山梨県では『文書半減プロジェクト』を独自に行っており、教育現場の文書を徹底的に減らしてみています。文書が減って先生に余裕が生まれる。そうすると授業がクリエイティブになる」

 

また、動画を有効活用することも必要だと藤原さんは話します。

「その教科のその単元を上手に教える先生を見つけて、その動画を生徒と一緒に見る。動画を見て理解した子が、まだ理解していない子に教えていく。アナログとデジタルを掛け合わせる」

 

動画を活用した授業全体のイメージ

 

「教員が放つ学ぶことの喜びは、教員にしか出せない。子ども達が一番学ぶことは、自主的に学ぶことの素晴らしさ」

と語る藤原さん。

教員が生徒と向き合うことに集中できるような労働環境に変革していくことが求められています。

 

広島ホームテレビ『ピタニュー』(2023年9月27日放送)

ライター:神原知里

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