手取りが減るけど超えるべき? “パートの壁”問題について考えた
一定の年収を超えると社会保険料を支払うことになる、いわゆる“パートの壁”。
このパートの壁を超えるべきか超えないべきか。
家計相談歴30年のファイナンシャルプランナー、波多間 純子さんと考えました。
【パートの壁とは?】
パートの壁
今回、波多間さんに話を聞いた”パートの壁”とは、社会保険の壁のことを指します。
一定の年収以上であれば、社会保険に加入し保険料を払うことになります。
従来は、この壁となる年収は130万円と言われていましたが、今は変わりつつあります。
社会保険加入対象者
注目は「所定内賃金が月額8.8万円以上」。年収にすると106万円。もう130万円の壁ではなくなっているのです。
すべての企業がこのルールの対象ではなく、企業の従業員数に応じて段階的に適用されています。
対象となる企業
この背景には、労働力を確保したいという国の考えがあるのではと波多間さんは話します。
【パートの壁を超えた場合のデメリット】
パートの壁を超えるか超えないか、それぞれのメリット・デメリットを波多間さんと考えました。
まずはデメリット。
パートの壁を超えると、厚生年金保険料と健康保険料、合わせて年収15%程の支払いが発生します。
パートの壁を超えた場合のモデルケース
例えば、パートの壁が106万円の人の場合、この壁を超えると手取り年収が15万円程減ることになります。
そして、保険料を負担しても手取り収入が増える目途となる金額は年収125万円となります。
パートの壁が130万円の人であれば、手取り収入が増える目途となる金額は年収153万円です。※モデルケースの場合
「みんな、とにかく働いてくれ」と言わんばかりの政策に疑問を抱きます。
【パートの壁を超えた場合のメリット】
パートの壁を超えた場合のメリットは、年金が増えること。
基礎年金だけではなく、厚生年金が上乗せされ、より厚く年金を受け取ることができます。
パートの壁を超えた場合のモデルケース
85歳まで生きて年金を受け取った場合(モデルケースの場合)
また、困ったときに収入保障を受けることができるのもメリットの1つ。
病気やけがで休んで働けなかった期間、給与の2/3相当が支給される傷病手当金や、産休期間中、給与の2/3相当が支給される出産手当金といった制度を利用することができます。
傷病手当金、出産手当金について
【国が支援しているキャリアアップ制度】
「せっかく働くなら時給をアップさせたい」と思う人は、国がキャリアアップのお金を支援する「教育訓練給付制度」を設けているので、それを利用してみてはいかがでしょうか。
教育訓練給付制度
教育訓練給付制度の講座・資格の一例
また、「今は働いていないけど、スキルアップを目指したい」という方には「求職者支援訓練」という制度があります。
無料の職業訓練を受けることができ、就職サポートや、一定の所得以下の方であれば月10万円の給付金を受けることができます。
求職者支援訓練
パートの壁を超えるか超えないかは、各家庭の事情によって考え方が変わると思います。
キャリアアップを目指すにも、育児や介護でなかなか時間が取れないなどの問題を抱える人も多いのではないでしょうか。
そういった“家庭の現実”を理解した上で、どのように支援するのかを社会全体で考えていく必要があるのかもしれません。
広島ホームテレビ『ピタニュー』(2023年9月12日放送)
ライター:神原知里