今回の広島ホームテレビ『カープ道』は前回に続き、数々の名選手を獲得したカープ東海地区担当のスカウト・松本有史（ともふみ）さんが登場。「逸材を見極める！スカウト論」を繰り広げながら、選手の獲得秘話を披露。さらには今年のドラフト候補にも触れる。

カープ東海地区担当スカウト・松本有史（ともふみ）さん

今年でスカウト17年目の松本さんは、これまで35人もの選手の獲得に携わってきた。去年悲願の初タイトル・最多勝を獲得した九里亜蓮投手もその一人。「（九里）亜蓮は亜細亜大学の後輩なので、見る機会が多かった。東都大学リーグでMVP、最優秀投手賞、ベストナインの三冠でタイトル総なめ。毎日200球ぐらいピッチングしてすごい練習量。でもケガをしない。これはカープに向いてるなと思った」と振り返る松本さん。

大学時代の九里亜蓮投手

さらに「第一印象はデカくて、めっちゃ男前じゃんって思った。プロ野球は人気が出てなんぼ。プロ入りしたらグッズもよく売れる人気選手になると思った」とも。187cmの長身に端正な顔立ちで、大学時代にはモデル事務所から声がかかったこともあるとか。

「第一印象はデカくて、めっちゃ男前じゃんって思った。」

2013年にドラフト2位で入団。毎年契約更改後に欠かさず電話報告があるという。入団8年目にしてFA権取得した際には「松さん、どうしましょう？と電話で相談された。それは自分が取った権利だから家族ともしっかり話し合って。自分はカープ球団だから残ってほしいけど」と答えたという。すると2、3日後に残留を決めたと電話があった。今季もカープのマウンドには背番号11が健在。チームを勝利へと導いてくれるに違いない頼もしい存在だ。

残留の報告

 

続いては、2015年ドラフト5位で入団。その打撃センスから天才と称される西川龍馬選手。「王子という社会人野球チームに入ってから担当。最初は体の線が細かったが、バットコントロールが柔らかい。前田（智徳）さんのようなバッティングをしていた」という。

「前田（智徳）さんのようなバッティングをしていた」

視察の回数がそれほど多くはなかったのにも関わらず「行く度に打つ。社会人最後の試合でもHRを打った。これは僕と（西川）龍馬との相性が良いと感じたので、“今年5位で取らなかったら来年はもっと力がついて上位指名になる。獲ってください”と当時の川端順編成部長にお願いした」と、ご縁あっての入団となったようだ。「首位打者を狙ってほしい。それくらいの技術は持っている」とさらなる活躍を願う。

「首位打者を狙ってほしい。それくらいの技術は持っている」

 

松本さんのスカウト活動は着実に実を結び、今年の新人も大豊作。やってきた有望なルーキーのうち、5人が松本さんの担当だ。

今年のルーキーのうち、5人が松本さんの担当

社会人野球の名門・トヨタ自動車からドラフト3位で入団した中村健人選手は、HRが打てる待望の右打者。強肩で守備範囲も広く。即戦力で期待されている。「同じトヨタ自動車だった栗林（良吏）に“今、トヨタの中村を見に来てるよ“ってLINEしたら、“松さん。健人は元気があってチームを引っ張る能力が高いので、プロに入っても面白い。よろしくお願いします”と返信された」。栗林投手もお墨付きの中村選手には「1年目から一軍で2割8分で10HRを」と期待を寄せる。

「健人は元気があってチームを引っ張る能力が高いので、プロに入っても面白い。」と栗林投手も太鼓判

 

ドラフト4位の田村俊介選手は高校時代に投打の二刀流として活躍した。しかし松本さんもチームもバッターでやっていくことを切望。「バッティングセンスは、坂倉（将吾）と（西川）龍馬を足した感じ。高校No.1じゃないかと思っている。本人も“ヤクルト村上宗隆選手の記録は全部塗り替える”と言っているくらい」。突き抜けたバッティングセンスに期待大だ。

「バッティングセンスは、坂倉（将吾）と（西川）龍馬を足した感じ。」

 

高卒4年目の社会人・松本竜也投手はドラフト5位。「去年の都市対抗野球ではタイブレークをまっすぐだけで抑えた」というほど、最速150km/h越えのストレートで真っ向勝負ができる右腕。松本スカウトは「物怖じせず、気持ちを前に出していくピッチャー。即戦力で考えている」と評価している。

松本スカウトは「物怖じせず、気持ちを前に出していくピッチャー。即戦力で考えている」と評価

 

そして松本さんの秘蔵っ子と言われるのが、ドラフト育成4位の坂田怜投手。プロ野球界でも珍しいナックルボールの使い手。ボールが回転せず、予測不能な変化をすることから魔球とも呼ばれるボール。大学時代、心臓の手術によって球速が大きく落ちた坂田投手は、ナックルを習得しプロへの道を切り開いた苦労人だ。

ドラフト育成4位の坂田怜投手は、プロ野球界でも珍しいナックルボールの使い手

カープの未来を担うルーキーたちはどんな活躍を見せるのか、もはや期待しかない。さらに、今年のドラフトで注目する選手を松本さんに聞いた。「亜細亜大学に田中幹也という良い選手がいる。菊池（涼介）のように忍者みたいなプレーができる。他球団ももう目を付けているので十分プロに行ける」。さらに「トヨタ自動車の長谷部銀次選手にも注目。入社試験も好成績で頭が良い上に、杉田玄白の末裔」だという。

トヨタ自動車の長谷部銀次選手にも注目

歴史的偉人の血を引く鯉戦士の誕生も楽しみに待ちたい。

 

 

 

広島ホームテレビ『カープ道』（水曜深夜） 2月2日放送
ライター　湯谷葉子