「HRと言いたいところだが、とにかく鋭い打球というか、すごいなって思ってもらえるような速い打球を左中間・右中間に放ったら最高だと思っている」と目を輝かせるのは、ドラフト3位のルーキー中村健人選手。マツダスタジアムでの初打席のイメージを聞かれ、そう答えた。

広島ホームテレビ『ひろしま深掘りライブ フロントドア』では、ルーキーながら一軍の春季キャンプに名を連ねる中村選手をフカボリ。右の長距離砲として期待される中村選手のパワーの秘訣やプロ入りを支えた家族への想いに迫る。

カープ・ドラフト3位　中村健人選手

 

野手では最上位となるドラフト3位の外野手・中村選手。愛知県出身で、中京大中京高校から慶應大学、トヨタ自動車と野球エリートの道を歩んできた24歳。担当スカウトの松本有史氏も「元気があって、チームを引っ張る能力が高い。もちろん技術も高いので即戦力として考えている。（鈴木）誠也がいなくなるかもしれないので、それを考えて取った選手。1年目から2割8分10本塁打くらいは打ってほしいと思っている」と評価は高い。大学時代に対戦経験があり、先にカープに入団した森下暢仁投手も「自分もHRを打たれているし、結構打たれている印象があるので、対戦はしたくないと思っていた」と、注目するルーキーとして中村選手の名前をあげる。

「僕の飛距離だったり、パワーだったりの部分はバッティングフォームにかかってくるので。“体の割れ”は継続してやっている」と明かす。バッティングフォームを見てみると、左足を上げた時に上半身と下半身がぞれぞれ逆方向へ意識。インパクトの瞬間、その力を一気にボールに伝えるというもの。

打撃練習中の中村選手

1月8日から始まった新人合同自主トレでは「体を仕上げるのが一番だが、良い打球を打ちたくなったり良いボールを投げたくなったりすると思うので、そこは小手先にならず地面の力をもらって体全体を使って、徐々に良い打球が打てるように良いボールが投げられるようにしていこうと気をつけている」と自身のペースを守っている。また、打撃練習の取り組みは、「ストレートへの対応は、ヘッドを立てるイメージでミートできるように試行錯誤中。変化球への対応は来るボールを疑うイメージで打ちやすいボールありきにならないこと」という。

「地面の力をもらって体全体を使って、徐々に良い打球が打てるように良いボールが投げられるように」

春季キャンプは一軍スタートが決定。「結果を出しにいこうという思考ではなく、中村健人はこういう選手なんだというところを見てもらえるようにプレーしたい。アグレッシブなプレーというか、活気があって元気があって、中村健人のプレーって気持ちがいいねと言ってもらえるような。そういうところが自分らしさなのかなと思うので、そういった面を存分に出していけるようにがんばりたい」と意気込む。

 

プロ野球選手という夢をつかみ、広島でそのスタートを切った中村選手の力になっているのは家族の存在。昨年10月のドラフト会議当日、父・起章さんは、亡き妻・由樹さんの遺影とともにテレビの前でその時を待った。カープの3位指名が決まった後、電話で「ちょっとずつ恩返しをしていく」という息子に、「たくさん恩返ししてね」と答えた起章さん。

しかし広島に向かう日には「背負いすぎずに楽しんでおいで」と息子を見送った。そんな父の言葉に「ハッとした。苦しむこともあると思うが、楽しめるように思考を転換していけたら、自分に返ってくるものが良い方に積み上がっていくなと感じたので、すごくありがたい言葉だった」と振り返る。

「楽しめるように思考を転換していけたら」

「亡き母には行ってきますという事と、自分なりにケガをしないようにがんばるので見守ってくださいと手を合わせて出てきた」という中村選手。「一日でも長く野球をやって、一つでも多く良い報告ができるようにがんばって行きたい」と締めくくった。

 

広島ホームテレビ『ひろしま深掘りライブ フロントドア』（土曜13：00） 1月22日放送
ライター　湯谷葉子