水質改善で貧栄養化 瀬戸内海の問題解決の鍵は「鶏のフン」【地球派宣言】
2021.07.24
全国で1番の水揚げ量を誇る広島の牡蠣。
広島産牡蠣
しかし、養殖を営む森尾水産の代表 森尾龍也さんは、「冬場のシーズン初めの身入りの悪さが目立ってきた。餌となるプランクトンがだんだん少なくなっている。」と漁業の現状を嘆きます。
その理由は“海がきれいになりすぎた”こと。
水質がきれいになった瀬戸内海
高度経済成長期に増えた、工場や生活排水による赤潮の発生を抑えるため、1970年代から国は、その原因となる栄養塩などの排出量に上限を設け、規制してきました。
しかし、水質が大きく改善された一方で、海の生物が生きるのに必要なリンや窒素の濃度が下がり、牡蠣などの魚介類に影響を及ぼしてしまったのです。
海中の栄養素が不足する海の貧栄養化。
海の貧栄養化が牡蠣にも影響
この問題を解決するために、広島大学と福岡県のトリゼンオーシャンズが新たな肥料を開発しました。
廃棄物として処理されてきた鶏のフンを原料にした水産用の有機肥料で、独自のバイオ技術により発酵させることで、においや菌を取り除くことに成功。
海を汚さず栄養分を与える環境商品として期待を集めています。
鶏のフンが原料の有機肥料
広島大学の山本民次名誉教授が行った実験によると、肥料を与えた牡蠣は通常より20%から40%ほど重量が増えていて、その効果が認められたそうです。
牡蠣いかだの近くに設置された肥料
森尾水産の森尾さんは、「こういった商品があれば試してみたいなという気持ちがある。良い結果がでれば養殖に使いたい。」と話します。
鶏のフンを有効利用し、海で使える肥料に。まさにSDGsの精神にかなったものと、山本教授。
海の豊かさを目指して
「“海の豊かさを守ろう”というゴール達成には、いわゆるThink Globally、Act Localyが大事。世界全体のことを考えながら、ローカルで活動する。自分の身の回りから良くしていくことが、必要じゃないかなと思います。」