アップサイクルのエネルギーがあふれるものづくりの場所|合同会社とこらぼ・金澤萌さん

ガラスの食器やレコード、手書きのポップが添えられた手作りのアクセサリー。

廿日市市の津田商店街に立つ「ナガスタ」には、さまざまなジャンルのアイテムが所狭しと並んでいます。

 

 

手作りのカプセルトイがあったり、小部屋をのぞくと本棚があったり。

 

ナガスタ カプセルトイ

 

陶器のかけらが飾られた壁「ブレイクウォール」には、あちこちにマージャンパイが隠れています。

 

 

レトロなものやかわいいもの、ユニークなもの……。

店内を見て回っていると、まるで宝探しをしているようで心が弾みます。

 

空き店舗のスーパーを地域の人が集まる場所に

2021年に「ナガスタ」をオープンしたのは、「合同会社とこらぼ」代表の金澤萌さんと黒木真由さん。

空き店舗だったスーパーマーケット「ナガタストアー」をリノベーションし、ショップや工房、シェアキッチンなどを備えた場所へと生まれ変わらせました。

 

黒木さん(左)と金澤さん(右)。臨床検査技師の資格を持つ黒木さんは「ナガスタ」で健康相談などにも取り組む

 

キーワードは「アップサイクル」。

店内に並ぶ商品は、地域の人が持ち込んだ不用品や、空き家から引き取ってきたものが中心です。

 

 

「うちは買い取りをしていないのですが、持ち込みをしてくださる方に、『思い出の品を捨てるのではなく、次の人に使ってもらえるのがうれしい』と言われることもあります。『次に使ってくれるのはどんな人かね?』『今日はどんなものが入った?』と楽しみにして、毎日のようにお店に来てくださる方もいます」と金澤さん。

店の奥にはカフェスペースもあり、地域の人たちの憩いの場になっています。

入口横の「アップサイクル工房」では、購入した商品などを材料にしてものづくりをすることもできます。

 

 

 

「自分も手を動かすのが好きなので、お客さまと一緒にあれこれ作ってみたり、アイデアを出し合ったり。地域の方同士で『これどうする?』と話し合っている姿も見かけます」

左官職人でもある金澤さんは、経験や技術を生かして、ワークショップなども開催しています。

 

この場所に息づくアップサイクルの力

高校生の頃、建築の仕事や職人の世界に憧れたという金澤さん。

埼玉県にあるものつくり大学を卒業後、見習い期間を経て左官職人として独立。

埼玉県内の商店街にアトリエを構えました。

その頃行っていたのが、タイルや端材を再利用したワークショップ。

左官工事の現場でたくさんごみが出ることが気になり、使えるものを持ち帰って、希望者を募り作品制作などを行っていたそうです。

「でも、当時はこれがアップサイクルだとは思っていませんでした。アトリエは自分の作業場として開いたのですが、一人で現場に行って黙々と仕事をして誰とも会話せずに一日が終わることも多かったので、シャッターを開けたらいろんな人が立ち寄ってくれるのが面白くて。人と会話することや地域と仲良くなることの楽しさは、ここで教わった気がします」

 

 

2019年、廿日市市に移住。

アトリエを探していたとき、埼玉県のときと同じように商店街の中に立つ「ナガタストアー」と出合い、「ここなら何かできそう」と感じたそうです。

「移住していろいろな人と知り合い、地域の方たちの暮らしこそ、アップサイクルなのではと気づきました。おばあちゃんから受け継いだ着物をかばんにする。余った野菜を無駄にしないよう、乾燥させて保存しておく。工房は構えていないけれど、家でものづくりをしている方もたくさんいらっしゃいます。それをお披露目する場を作ったら、地域はもっと元気になると考えました。そして、その行為そのものがアップサイクルだと」

 

 

店内には木工などの「作家さんコーナー」もあり、お気に入りの作り手の新作を待っている人もいるそう。

作る側にも買う側にも、温かな楽しみが生まれています。

 

ものづくりを通して「捨てない」可能性に気づく

「ナガスタ」のワークショップで作れるものを見せてもらうと、革や古布を使ったキーホルダーやカラフルなタイルを敷き詰めたフレームが。

年齢を問わず参加できるよう、できるだけシンプルなプログラムにすることを心がけているそうです。

 

 

「タイルは現場で残ったものをストックしているので、現場で作っているものによって、キラキラだったり、シンプルだったり、ラインアップが違うのも楽しいところです」と金澤さん。

不用品として持ち込まれたおはじきやガラスのかけらを入れても、かわいらしく仕上がります。

欠けたお皿やガラスも立派な材料。削ったり、溶かしたりして一手間加えることでワークショップに使えるパーツに生まれ変わらせているそう。

木の風合いが印象的なフレームも、廃材を使って手作りしています。

 

 

割れてしまったお気に入りのお皿や、使わなくなった箸置きやおもちゃなどがある場合は、絵画のようにフレームに敷き詰めても素敵な作品になります。

店内の「ブレイクウォール」の一部にできるほか、小さめのフレームで作って持ち帰ることもでき、海外からの観光客にも人気だそう。

もう使わないけれど、いつまでも大切にしておきたいものをぎゅっと凝縮して、暮らしのそばに置いておくことができます。

 

 

最近は、オリジナルキャラクター「ツタッキー」のキーホルダーも人気です。

飲食店のコルクはボディに、時計店の歯車は目に、グローブ店のフェルトは髪の毛に。

ユーモラスな表情を作るのは、津田商店街の店から出た不用品です。

「アップサイクルを体験するプログラムとして高校の修学旅行に採用されて、宮島と平和記念公園に行く間に立ち寄ってもらうことも増えてきています。材料はごみや不用品だけど、それが人が来てくれる理由になるのはすごいこと。それに、みんな自由に作るので楽しいですよ」

 

 

「ワークショップをすると、『今まではどんどんものを捨てていたけど、できるだけ捨てないようにしよう』という声を聞くことがあります。これまで『捨てずに何かできるんじゃないか』と考えて活動してきたので、小さなきっかけでこの気持ちが届くとうれしい」

楽しいものづくりの思い出が、より豊かな暮らしにつながっていきます。

 

ナガスタ(合同会社とこらぼ)の基本情報

 

<所在地>
広島県廿日市市津田4191-6

<TEL>
080-7998-9455

<営業時間>
4~10月 10:30~17:00
11~3月 10:30~16:30

<定休日>
火曜日

<公式サイト>
https://tocolabo.com/

<SNS>
Instagram:@nagasuta.saiki

 

ライター/時盛郁子
※紹介している内容は2026年1月取材時点のものです。公開後内容が変更している可能性があります。

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