鉄と木の表情を掛け合わせて、誠実に理想を形にする|snug IRONWORKS & WOODWORKS・上村敦芳さん

JR宮島口駅から車で約10分の場所に立つ、「snug IRONWORKS & WOODWORKS」。

ダイニングテーブルやベッドフレームなど、鉄や木を使ったオーダー家具を制作しています。

 

 

天井まで届く大きな扉を開けると、デニムのワークウェア姿で迎えてくれた上村敦芳さん。

肩の部分には、シルバーの刺しゅうで「snug」の文字と、円の中に羽が2枚並んだマークがあしらわれています。

 

snug 上村さん 上村さん

 

「うちの家紋なんですよ。先祖も喜ぶかなと思って。最初の頃に作ったんです」とにっこり。

ラフな質感と、繊細な色や模様が調和しています。

 

鉄と木だから生み出せる魅力を追いかけて

「昔からものづくりに興味があった」という上村さん。

高校を卒業した後、知人の紹介で看板制作を行う会社に就職。

鉄などを加工して看板の装飾を作る仕事を担当し、工場長を務めていました。

 

snug 鉄を加工する様子

 

転機が訪れたのは25歳の頃。

大阪府内の「ものすごく格好いい」家具店を訪れたとき、鉄と木を掛け合わせた家具に初めて出合ったそうです。

「自分の中で、木の家具はきちんとしたもの、という印象がありました。でも、そこで見た家具は、工場で使われてさびたりへこんだりしたような鉄の質感が木のナチュラルな風合いとすごくマッチしていて。その斬新さに衝撃を受けたんです。木を加工する技術も身に付けて、自分でもこういうものを作ってみたいという気持ちがすごく強くなりました」

その後約5年鉄の仕事を続け、溶接資格免許を取得。

無垢材を扱うオーダー家具店に転職しました。

鉄の加工に関わっていた期間は10年以上。

がらりと変わった働き方や素材に、最初は戸惑うことも多かったそうです。

「自分で決めたこととはいえ、人から何かを教えてもらうのが久しぶりだったので、それを聞き入れる難しさもありました。木は鉄より柔らかいので、傷がつきやすい。扱う機械も制作の過程も、全てが違いました。最初の3年くらいはついていくのに必死だったことを覚えています」

 

熱意に技術で応え、居心地の良い家具を

10年以上に及ぶオーダー家具店での修業を終え、廿日市市大野に工房を構えたのは2017年。

店名に冠した「snug」は、英語で「居心地の良い、気持ちの良い」という意味。

鉄の仕事をしていた頃に偶然テレビでこの単語を知り、店名に使おうと決めていたそうです。

 

 

ロゴのモチーフは寄木細工。

「いろいろな家具を作り、たくさんの人が集まる場所にしていきたい、という思いを込めています」

 

snug かんな

 

ずらりと並ぶかんなや、工房を開いたときから愛用する焼き印にもロゴがあしらわれています。

 

snug 焼き印

 

自宅のダイニングテーブルや、ホテルのベッドフレーム、店舗のエントランスに置くスツール。

工房には、個人はもちろん、デザイン会社や美容院など、さまざまな人や会社からのオーダーが入ってきます。

鉄と木を使った家具には、デザインの面ではもちろん、柔らかく形が変わりやすい木材を鉄で支えることができるなど、機能面でのメリットもあります。

 

snug アイアンと木のダイニングテーブル ダイニングテーブル(画像提供:上村敦芳)

 

上村さんが大切にしているのは、価格のニーズに寄り添いながらも、理想を確実に形にした家具であること。

「いい家具だなと思っても、あまりにも高いと自分も手が出ない。だから、理想の家具をできるだけリーズナブルに提供するというのをコンセプトにしています。お客さまの熱い思いを感じたら、自分の技術を生かして応えたいと思うので」

ヒアリングした家具のイメージを実現するため、ジャンルの異なる家具店に足を運んで発想の幅を広げたり、他の木材で試作してみたり。

時には、新しい機械を購入して対応することもあるそうです。

 

snug 工房内の様子 2つに分かれた盤をスライドさせながら、木材を水平方向に切ることができる「横切り盤」

 

「修業をしていたときに、『頭でも3Dで描け』と言われていました。頭の中で家具を回転させて、上下左右から観察できるほど具体的にイメージするんです。長年この仕事をしてきたので、そこまではできるのですが、正解かは最後まで分からない。途中まで制作していても、お客さまや自分のイメージと違うと感じたら始めからやり直すこともあります。答え合わせができるのは、家具をお届けしたとき。『ずっと大事に使うね』という言葉や笑顔が本当に励みになります。一度、家具を見て『家族みたい』と言ってもらったことがあって、それは本当に嬉しかったですね。お客さまの思いと提案がマッチした瞬間だったんだと思います」

 

 

虹のように光るものや、青みが強いもの。

木目に違いがあるように、鉄の表情も一つ一つ違います。

「同じ素材を使っていても、その表情や組み合わせ方で仕上がりは大きく変わります。柔らかい雰囲気がいいのか、ワイルドな印象にしたいのか。お客さまの好みや使い道によって、いろいろな提案ができるのも面白いところです」

鉄と木を組み合わせたものはもちろん、鉄または木だけの家具にも柔軟に対応しています。

 

“木工のまち”ならではのつながりを生かして

2025年の秋には、広島県立宮島工業高等学校の文化祭に招かれ、初めて開催されたものづくり体験企画「キッズチャレンジ」に協力。

地域の小学生や中学生を対象に、スツール制作のワークショップを行いました。

 

材料は、白い木肌が美しいメープルを採用。

「ずっと使ってもらいたいから」と無垢材であることにもこだわったそうです。

のりでくっつけたり、トンカチで叩いたり、ビスを打ったり……。

いろいろな作業が少しずつ体験できるように工夫されたキットや体験は大好評。

「こちらでは塗装はせず、自宅でペンキやオイルを塗るDIYも楽しんでもらえるようにしました。キットを組むのは大変でしたが、楽しかったですね」

 

スツールのキットについて話す上村さん

 

工房を訪れる人の中には、職人や独立を目指す若者も。

「廿日市市は“木工のまち”で、木に関する情報がすごく多いと感じています。ものづくりに関する相談や工房の見学など、作り手同士の交流もあるのはこの場所ならでは。若い人に工房に来てもらえるのもうれしくて、頑張ってほしいなという気持ちになります。僕もまだまだ技術を磨いて、もっと人の役に立てるようになりたい。ものづくりに対する志が同じ人たちと切磋琢磨しながら高め合っていきたいと思います」

 

snug IRONWORKS & WOODWORKSの基本情報

 

<所在地>
広島県廿日市市大野下更地1894-3

<TEL>
0829-56-5150

<営業時間>
10:00~19:00 ※完全予約制

<定休日>
日曜日、祝日

<公式サイト>
https://snugfurniture.net/

<SNS>
Instagram:@snug.furniture

 

ライター/時盛郁子
※紹介している内容は2026年1月取材時点のものです。公開後内容が変更している可能性があります。

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