伝統の技術と心地よい余白で、木と工作を愛する心を育てたい|Sunny. Labo・岩田勇真さん
古くから「木工のまち」として知られてきた廿日市市。
2025年、この町に木工に関わる新たな会社「Sunny. Labo」が設立されました。
代表を務めるのは岩田勇真さん。
木工職人として長年培ってきた技術を生かして、天然木を使用したオリジナル生活雑貨を製造、販売しています。
岩田さん
伝統の木工技術を守っていくために
岩田さんの父は、「イワタ木工」を創業した清志さん。
岩田さんも小学生の頃から、書道筆の軸やけん玉を製造する手伝いをしてきました。
木工歴は30年以上。しかし「本気になったのは大学を卒業してから」なのだそうです。
「大学では建築の勉強をしていて、その道に進もうと考えたこともありました。でも、今の建築には組み立て式のものが多くて、僕は自分で考えたものを自分の手で作るほうが楽しいと思うようになったんです。それで戻ってきたのですが……やっぱり木工が好きなんでしょうね」
「イワタ木工」が得意とするのはろくろ加工。
機械に木材を固定して回転させ、刃物を当てることで、なめらかな手触りの球や軸を削り出します。
無駄なく、美しく木材を加工するため、鉄を削る機械の刃物や回転数などをカスタマイズして使うことも多いそうです。
「技術が進歩していく中、デジタルを駆使して新しいことをやっていくのも大切。その一方、僕は伝統的なろくろの技術や知恵も守っていきたかったんです。父はまだ製造を続けているので工場もあるし、現役の職人さんも頑張っている。でも、これを残すにはあと10年先では遅いかもしれない。今から行動するべきだと思いました」
暮らしを豊かにする、温もりのある商品を
「Sunny. Labo」で販売するのは、木材の質感を生かした、思わず暮らしに取り入れたくなるような商品。
清志さんの仕事を手伝いながら、岩田さんが一つ一つ丁寧にろくろを使って製造を行っています。
ショールームには、手になじむ国産ヒノキのカップスリーブや、木材そのものの色を生かしたインテリアなどが並んでいます。
ろくろ加工によって木目の美しさが引き出された作品は、全て一点もの。
優しく漂う木の香りにも癒やされます。
「家族がつながる、木製こいのぼり」
優しい色合いが目を引く「家族がつながる、木製こいのぼり」は、玄関やリビングにも飾りやすいサイズ。
着色は一切しておらず、ウォルナットやモアビ、朴木(ほうのき)などの色が異なる木材を組み合わせているそうです。
「心がやすらぐ、木の鏡餅」
手のひらサイズの「心がやすらぐ、木の鏡餅」は、栗で飾り台、ヒノキでお餅、モアビで橙を表現。
ころんとした形となめらかな曲線に、お餅の質感まで感じられるよう。
木の温もりが、お正月の団らんをより和やかなものにしてくれそうです。
「木目の個性や手作業の味を残した、柔らかさのある商品を作りたいと思っています。これまでは正確さや緻密さを重視してきたのですが、みんなに喜んでもらえるものはいつもそうとは限らないと最近は考えていて。あの木目いいね、この感じもありだよね、と選んでいただける、余白のあるものづくりを心がけています」
ずらりと並ぶ作品のなかには、企業とのコラボレーション商品もあります。
「『Sunny. Labo』を設立してから、いろいろな人が工場に来てくれるようになった」と岩田さん。
透かしのデザインが美しいドリップスタンドは「ハリオ」のコーヒーウェアシリーズ「AYA」の商品として展開されています。
「AYA」のドリップスタンド
側面には、円が連なる幾何学模様や、障子のようなデザインが。
コーヒーを入れるときはもちろん、キッチンに置いているだけでもインテリアとして生活空間を彩ってくれます。
「『イワタ木工』では、ろくろ加工に特化してきたのですが、『Sunny. Labo』では板物などこれまでに取り組んでこなかったジャンルのものも作っています。レーザー加工なども駆使して、思い描いたものを形にする喜びを改めて感じています」
広島県内の事業者とのつながりも増え、お互いの工場や工房を見学することもあるそう。
「これまではなかなか機会がなかったので、他の工場や工房はどんな風になっているのか全然知らなかったんです。でも、いろいろな場所を見せてもらうと気づきもあるし、より良い方法は取り入れていきたい。木工所は昔に比べて減ってきているけれど、木工が好きで、すばらしい技術を持っている事業者さんや工場がまだまだ廿日市市に残っていることも実感しました」
「マルニ木工」の革の端材をアクセントにした名刺入れなど、交流をきっかけに生まれた商品もあります。
(提供:岩田勇真)
ワークショップを通して木をもっと身近に
岩田さんがもう一つ力を入れているのが、子ども向けのワークショップ。
近隣の公民館や平和記念公園のレストハウスなどを会場に、木のおもちゃづくり体験を行っています。
「学校のカリキュラムが変わって、木や工作に触れる機会は減ってきています。おもちゃの組み立てはできるけれど、その材料が木になるとどうやって作ったらいいか分からない、という子どもが増えてきたように感じていて……。その中で、僕は子どもが木に触れる機会を増やしていきたい。触れれば自然と興味を持って、好きになっていくと思うので」
端材を活用した恐竜や魚がモチーフのキットに色を塗って、積み木にしたり、マグネットにしたり。
実際にリールを巻くことができ魚のマグネットと一緒に遊べる釣り竿や、糸の巻き方をアレンジできるヨーヨーなどもあります。
ワークショップを約1年続けているうちに、何度も足を運んでくれる子どもたちも増えてきたそう。
「木工を好きになってくれたら、次はその子どもたちに“子ども先生”としてワークショップをやってもらいたい。教える立場になると、作り方もそれに対する意識も一段深くなると思うんです」と岩田さん。
「木工は工房によって作り方も考え方も違います。それはどれも正解で、自分が追求したものが実現できるかということが大切。商品が売れるのもうれしいですが、これからは木工に興味を持つ子どもを増やす活動に力を入れたいというのが僕の今の考えです」
Sunny. Laboの基本情報
<所在地>
広島県廿日市市栗栖611
<TEL>
090-3635-1282
<営業時間>
8:00~17:00
<定休日>
土・日・祝日
<オンラインショップ>
https://sunnylabo.base.shop/
<SNS>
Instagram:@sunny_labo_mister
ライター/時盛郁子
※紹介している内容は2026年1月取材時点のものです。公開後内容が変更している可能性があります。