【なぜ?】名物なのに……宮島でアナゴがとれない|地球派宣言

宮島名物の一つ、アナゴ。
観光客を中心に高い人気がありますが、そのアナゴ、宮島ではほとんど水揚げされていません。
一体何が起きているのでしょうか?
宮島漁協の丸本孝雄組合長のアナゴ漁にお邪魔しました。

エサには県内産のカキを使います。
海の中でアナゴをおびき寄せてくれるそうです。
ただ、エサ代は10kgで8000円と決して安くはありません。

宮島漁協でアナゴ漁をしているのは丸本さんを含め、3人。
10年前はほぼ毎日出ていたそうですが、最近は週に1回程度になりました。

アナゴは夜活動するため、仕掛けを海の中に入れ、日が暮れるのを待ちます。
丸本さんは「せめて100匹ぐらいいてくれると日当になる」といいますが、果たしてアナゴは捕れるのでしょうか。

宮島では古くからアナゴ漁が行われていました。
20年以上漁師をしている丸本さんもピーク時には1日20kgのアナゴを水揚げし、宮島のホテルなどに卸していました。

丸本さんによると、「一番多いときで月300万円くらい水揚げした人もいて、笑いが止まらなかった時期もあった」そうです。
ところが、15年ほど前からアナゴの水揚げ量が減少。
県内でも1964年の753トンをピークに18トンまで減りました。

丸本さんにとっても想定外の事態。
宮島のアナゴはブランドなのに、観光で来られるお客さんに全部を提供できないのは悔しいと話します。

なぜ、アナゴの水揚げが減っているのでしょうか。
丸本さんがある場所に案内してくれました。
そこにいたのは、大型の水鳥カワウ。
水に潜ってアナゴやメバルなどの稚魚を食べるそうです。
特に冬場は、大量のカワウが宮島に飛来し、フンで原生林が枯れる被害も起きています。

丸本さんはカワウがアナゴの稚魚をくわえているのを何度も目撃していて「成長過程の稚魚をどんどん補食され、みんな捕られるのでもどかしい」と話します。

一方、アナゴ漁はどうなったのでしょうか。
4時間後、再び船で漁場へ行って筒を引き揚げてみますが……。
引き揚げても、引き揚げても、ほとんどが空の筒。
何匹かは水揚げましたが、満足のいく量ではありません。

それだけではありません。
丸本さんは、成長していないアナゴが多いと口にします。
この日、水揚げされたアナゴは8本。
宮島のホテルに出荷されましたが、この水揚げではエサ代さえまかないといいます。

72歳の丸本さんは「これから先も鵜がいる以上はアナゴが増えることはないと思うし、海の環境も変わってきているので、私たちくらいの年齢がアナゴ漁をするのは最後かもしれない」といいます。

県と廿日市市はカワウが飛来した場所に特殊なテープを貼り、カワウの数を減らす対策をしています。
しかし、天敵の襲来や海の変化で宮島名産のアナゴは厳しい状況が続きそうです。
広島ホームテレビ『ピタニュー』
地球派宣言コーナー(2025年7月31日放送)
