向上心やコミュニケーション能力、数値化できない非認知能力とは | 学力以外の“生きる力”をどう育むか
向上心、自制心、コミュニケーション能力など数値で表すことができない「非認知能力」。
この非認知能力が、子どもはもちろん、大人にも、ひいては人間にとって重要だと言われています。
非認知能力を育むにはどうしたら良いのか、専門家と共に考えました。
【非認知能力とは?】
認知能力と非認知能力の違い
認知能力が、読み・書き・計算などの学力、IQなど、数値化できる能力を指すことに対し、
非認知能力は、コミュニケーション力や共感性など、数値化できない能力のことを指します。
非認知能力は生きる力、人間力とも言われています。
認知能力の影響などを文部科学省が長期的に調査
そして、今年度から5歳児を対象に文部科学省は幼児教育の追跡調査を開始。
学力や大人になってからの稼ぐ力、非認知能力への影響などを長期的に調べるとしています。
【非認知能力を育むには?】
非認知能力をどう育むのか。
子どもの非認知能力の向上に尽力している、岡山大学の中山芳一准教授に話を聞きました。
岡山大学の中山芳一准教授
「9歳10歳が一つの節目。脳の前頭前野というのが、思考したり感情をコントロールするところ。ここが非認知能力をつかさどっていると言われています」
「五感の脳」は、3歳までに大人と同じくらいまで発達するのに対し、「思考の脳」は、3歳までと9歳~10歳以降に大きく発達します。
この9歳10歳を境に非認知能力を育むための、子どもとの関わり方が変わってくるそう。
子どもの脳の発達から分かること(東北大学加齢医学研究所 川島隆太教授提供)
「8歳までは気質が出まくるんですよ(笑)」
子どもごとに異なる気質を把握し理解することが、非認知能力を育む第一歩らしいのですが……。
「例えば、落ち着きがないという気質は“気質”なので『落ち着きなさい!』と言われても落ち着けないんです。それが周りの迷惑になる、傷つけてしまうことはその場で具体的に行動を注意する。行動の注意はいいが、気質そのものを変えようとしたらダメ」
子どもによってさまざまな気質を持っている
子どもの行動に対する注意
気質を変えることはできない、だからこそ、気質を肯定してあげることが重要なんだそう。
「落ち着きがない、というのは行動力がある、元気があるとか。肯定にひっくり返してほしい。そうすれば自分の強みが分かりますから」
8歳までは子どもの気質を肯定する
【非認知能力を育む9歳以降の関わり方】
非認知能力を育む時期、9歳以降の関わり方はどうすれば良いのでしょうか。
「9歳10歳で前頭前野がぐんぐん育ちます。そうすると、抽象的な言葉を理解できるようになる。科学的思考や論理的思考ができるようになって、現実と空想の区別や、矛盾の有無を認識できるようになる。矛盾のない対応をすることが大切です」
矛盾のない対応をすることが大切なんだそう
そして、この時期から重要になってくるのは「自己客観視」だと中山准教授は説明します。
「例えば、『落ち着きがないけど、今は落ち着かなきゃいけない』とか。自分と周囲の状況を見ながら、自分をコントロールできる能力」
自己客観視
非認知能力を育む自己客観視。鍛えるには?
「日記です。書かなくても話すだけでもOK」
過去の自分を振り返ることで、その時に必要だった非認知能力を意識し、行動できるようになるそう。中学生、高校生になるとそれを言語化すると、より効果的なんだとか。
振り返り
非認知能力を育む子どもとの関わり方
非認知能力を育む取り組み。
生活の中で、少し意識してみてはいかがでしょうか。
広島ホームテレビ『ピタニュー』(2024年7月17日放送)
ライター:神原知里