“争族”にならないための相続・FPと考える相続の「基本のキ」
相続の「基本のキ」を家計相談歴30年のファイナンシャルプランナー(FP)、波多間 純子さんが解説。
「うちにはそんなに財産がないから関係ない」は大間違い!
“争族”にならないための知恵を伝授します。
認容・調停成立した遺産分割事件(令和4年度)※司法統計年報より
【相続 基本のキ①遺産をどう分ける?】
相続基本のキ① 遺産をどう分ける?
亡くなった本人の財産なので、本人の意志が優先されます。
遺言書があれば、遺言の内容通りに遺産を分けるのが原則です。
【相続 基本のキ②相続人は誰?】
続いて、法律上では誰が相続人となるのかを解説します。
ある家庭の家系図①
こちらはある家庭の家系図です。この家系図の真ん中の男性が亡くなった場合、法律上の相続人は配偶者、子、父母、兄弟姉妹です。
配偶者は必ず相続人となり、それ以降は順番があります。
第1順位は子ども、第2順位は父母、第3順位は兄弟姉妹です。
上位の人がいる場合は相続を受け取れないため、例えば、この家系図のように亡くなった方に子どもがいた場合は、父母と兄弟姉妹は相続人にはならないということになります。
ある家庭の家系図① 相続順位
亡くなった人の子どもの配偶者は、法律上の相続人にはなれません。
そのため、
「夫の親の介護を長年体を壊すくらいしたのに、当然のこととして遺産を1円ももらえなかった」という例もあるんだとか…。
しかし、亡くなった人の財産の維持などに寄与した親族は、特別寄与料の請求をすることが可能です。相続人から寄与に応じた金額を受け取ることができる仕組みです。
特別寄与料の請求
波多間さん曰く、この特別寄与料の請求は最近できた制度だそう。それだけ介護の問題に関するもめごとが多いということなのかもしれません。
【相続 基本のキ③遺産の配分は?】
遺産の配分には目安があります。
ある家庭の家系図②
この家系図の右上の男性がなくなった場合、相続人は配偶者と子どもです。
この場合、遺産の配分の目安は配偶者が1/2、子ども全体で1/2となります。
ある家庭の家系図③
続いてこの家系図のように、子どもがおらず、配偶者と父母が相続人となる場合は
配偶者が遺産の2/3、父母で1/3を分けるのが目安です。
【相続 基本のキ④相続税】
相続税の基礎控除
相続財産が一定額以内なら、相続税はかかりません。
生命保険金など更に非課税枠があるため、全体の相続の中で相続税が発生するのはおおよそ1割程度なんだそう。
【もめごとを防ぐには?】
相続財産の大小だけがもめごとの原因ではないと話す波多間さん。
相続でもめる主な原因は「3つの偏り」にあります。
3つの偏りとは
例えば、
「自宅の評価額が2,000万円、預貯金は500万円。これらを兄妹で分ける場合」
「お兄さんだけ大学進学のため教育費を出してもらった」
といった偏りがもめる原因になってくるんだとか。
親は子どもに対して、日頃から愛情を伝え平等に接していくことが大切です。
【トラブルを防ぐための遺言書】
遺言書を作成しておくことはトラブル回避につながります。
司法書士・行政書士の荒俣 政吉さんに有効な遺言書の作り方を聞きました。
遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言がある
自筆証書遺言は、下記4つの項目が整っていれば形式的には有効なものとして成立します。
費用がかからず手軽に作れるのですが、書き方のミスで無効になってしまったり、紛失や偽造といったトラブルが起きやすい面も。
自筆証書遺言 整えるべき4つの項目
公証人とは?
一方、公証役場で公証人が作成する公正証書遺言は、公証人が作成し内容も確認してくれるため、有効性においては確実。しかし、相続財産額に応じて費用がかかったり、利害関係のない証人が2人必要など、手間がかかることも。
荒俣さんの経験上、遺言書を作っておいた方が良いケースとは?===
・子どもなしで兄弟姉妹が相続人
遺言書がないと兄弟姉妹で遺産の取り合いになることがあるそう
・夫が再婚で前妻との子どもあり
当事者で話し合いを行うことが難しいそう
===
【おこる前に対策!】
「相続はおこる前の対策が10割」
と話す波多間さん。
“争族”にならないために、家族で相続について話し合ってみてはいかがでしょうか。
広島ホームテレビ『ピタニュー』(2024年2月13日放送)
ライター:神原知里