北前船の寄港地として栄えた港町・室積の町並みと海辺散策!/光ふるさと郷土館・室積みたらい公園・普賢寺(山口県光市)

北前船の寄港地として繁栄した港町『室積』

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山口県南東部の瀬戸内海に向けてせり出した室積半島。その半島の付け根には古くから栄えた港町・室積の町並みが広がります。

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室積半島の東側には『象鼻ヶ岬(ぞうびがさき)』があり、その名の通り象の鼻のような形をした砂洲が伸びていて、御手洗湾(みたらいわん)が形成されています。この象鼻ヶ岬が天然の防波堤となるため、御手洗湾の波はとても穏やか。

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そのため室積は、かつて北前船が寄港する潮待ち・風待ちの港町として繁栄し、『海商通り』には当時を偲ぶ古い町並みが残っています。

北前船とは、江戸~明治時代にかけて商品を売り買いしながら大阪と北海道の間を結んでいた商船群のこと。大阪から瀬戸内海を経由して日本海側を北上する「西廻り航路」が主流でした。室積はその西廻り航路の寄港地だったのです。反対に、太平洋側を北上する「東廻り航路」は黒潮の影響で難易度が高く、コストも割高だったそうです。

 

『光ふるさと郷土館』で往時の商家を体感!

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海商通りにある『光ふるさと郷土館』は江戸時代後期から昭和30年代にかけて醤油屋を営んでいた磯部家の商家を修復したもの。木造二階建ての豪壮な造りで、建物の内部には室積に寄港していた北前船に関する資料や醤油の醸造用具などを展示し、当時の人々の生活や文化を学べる施設となっています。

北前船で栄えた港町『室積』の面影を探しに、入ってみましょう!

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『光ふるさと郷土館』に入館すると、いきなり江戸時代にタイムスリップ!商家の帳場(主人や番頭だけが入ることを許された、帳簿を付けたり会計をする場所)が再現されていて、大福帳や銭箱・帳場格子などの古民具が並んでいます。

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帳場の裏側には茶室を備えた奥座敷があり、明治時代の落ち着いた商家の雰囲気を体感できる和室となっています。この部屋は1時間420円で借りられ、お茶会などのイベントにも利用できます。

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館内に入って驚くのは、敷地の奥行きの長さ!俗に“うなぎの寝床”といわれる、間口が狭く奥行きが長い商家独特の造りとなっていて、母屋の奥には広大な中庭もあります。

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中庭の一角には昔ながらの醤油づくりのための麹室も残っています。レンガ造りのレトロな雰囲気が良いですね!

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中庭を取り囲むように配置された展示室では、江戸時代の伝統的な醤油づくりの様子や古道具などを展示・解説しています。

室積は漁業も盛んで、当時の打瀬船(うたせぶね)による漁や鰯網(いわしあみ)漁などを模型等を使って解説するコーナーも面白いですよ。

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最奥にあるメイン展示室では、海上交易によって繁栄した室積の歴史や風土を紹介。中央にドーンと置かれた弁才船(べざいせん)の大型模型がひと際目を引きますね!この船は北前船交易における主力船で、塩や砂糖、ニシンや昆布など、北前船が運んだ積荷のサンプルも展示されています。

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他に船箪笥(ふなだんす)や懸硯(かけすずり)といった商船関連の骨董品も並びます。懸硯は、江戸時代から明治時代にかけて船頭が和船に乗船する際に持ち込んだ金庫のようなもので、金銭や往来手形など重要書類を中に入れ、入港すると町家や船宿へ持参していました。

手前の船箪笥はユニークな造りで、決まった手順で木材を動かさないと中身を取り出せない仕組みになっています。これぞ“知恵”。防犯対策もバッチリですね!

 

『室積みたらい公園』で海辺の景色を満喫!

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『光ふるさと郷土館』がある『海商通り』から少し東へ歩くと海が見えてきます。一帯は『室積みたらい公園』として整備されていて、郷土が生んだ詩人の詩碑や句碑が設置されています。

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御手洗湾越しに見る『象鼻ヶ岬』の眺めも最高!!かつて、この湾内には北前船の大船団が停泊していました。(『光ふるさと郷土館』にはその頃の古写真も展示されています)

先端に立つ白い灯台にご注目ください!

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室積の海岸線には『みたらい燈籠堂』も立ちます。これは元禄15年(1702年)に建造された山口県最古の灯台を復元したもの。(復元は平成3年)元は右奥に見える『象鼻ヶ岬』の先端に立っていた和式灯台で、現在は白亜の『室積港灯台』が後を引き継いでいるのです。

 

室積のパワースポット『普賢寺』へ!

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室積の海岸線に延びる『みたらい通り』を南へ歩いていくと、途中で名称が『普賢通り』に変わります。そのまま進むと道がカーブして、眼前に『普賢寺』の『山門(仁王門))』がそびえ立ちます。

『普賢寺』は平安時代中期の寛弘3年(1006年)の創建で、昔から“海の菩薩”として全国各地から広く信仰されてきた室積を代表するパワースポットです。

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本尊である普賢菩薩が安置されている『普賢堂』。境内の奥には、雪舟作と伝えられる枯山水の庭園(県指定名勝)もあります。

普賢寺は幕末の歴史にも深い関わりがあるお寺で、慶応元年(1865年)に『南奇兵隊』の本陣が置かれ、約400名の隊士がここに集結しました。その後、普賢寺から『石城山』へ転陣し『第二奇兵隊』と改称、長州藩公認の軍隊として四境戦争(第二次長州征討)や戊辰戦争を戦い抜き、やがて明治維新につながりました。

普賢寺の裏手には『峨嵋山(がびざん)』の登山口があり、さらに東へ歩けば『象鼻ヶ岬』へも行けます。

かつて北前船の寄港地として栄えた港町・室積。現在も古い町並みが残り、御手洗湾の絶景や名刹・普賢寺の景観を満喫したり、峨嵋山トレッキングや象鼻ヶ岬の散策を楽しんだりと、見所たくさんの観光エリアです!

 

光ふるさと郷土館
住所/山口県光市室積5丁目6-5
電話/0833-78-2323
営業時間/9:00~17:00(入館は16:30まで)
定休日/月曜日、第1火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12/28~1/4)
入館料/大学生以上260円 ※高校生以下は無料
駐車場/あり(無料)
http://www.hikari-bunka.or.jp/furusato

 

瀬戸内Finderフォトライター 松岡広宣

 

▼記事提供元

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