世界初!歌川国芳のミュージアム/『UKIYO-E KURASHIKI/国芳館』岡山県倉敷市
歌川国芳の作品約100点を常設展示
白壁の町並みに、美術館や工芸館などさまざまなアートスポットが点在する『倉敷美観地区』。このエリアに2021年、浮世絵師・歌川国芳(うたがわ くによし)の作品を常設展示する世界初のミュージアム『UKIYO-E KURASHIKI/国芳館』が登場しました。
『倉敷美観地区』から浮世絵の魅力を世界に向けて発信するプロジェクトの第1弾としてオープンした同館。近年、国内外で人気が高まっている国芳のデビュー作から代表作まで、約100点が展示されています。
『UKIYO-E KURASHIKI/国芳館』があるのは、鶴形山の山頂に鎮座する『阿智神社』のふもと。南鳥居のすぐ左手に建っています。かつて旅館が営まれていた木造の建物を改装したミュージアムは、「浮倉」の文字がデザインされた暖簾と国芳作品のポスターが目印です。
浮世絵師・歌川国芳とは?
『大江山酒呑童子』嘉永4年(1851)UKIYO-E KURASHIKI/国芳館所蔵歌川国芳は、江戸時代末期を代表する浮世絵師の一人。江戸日本橋の染物屋の家に生まれた国芳は、15歳の頃に初代歌川豊国の弟子となり、30歳を過ぎた頃に中国の伝奇時代小説『水滸伝』を題材に、同小説に登場する豪傑たちを描いた『通俗水滸伝豪傑百八人之一個(以下、通俗水滸伝)』シリーズを発表します。
不遇の時代が長く続いた国芳は本作で一躍脚光を浴び、「武者絵の国芳」と呼ばれるほどの人気絵師となりました。その後は武者絵にとどまらず、役者絵や美人画、風景画、ユーモアあふれる戯画など幅広いジャンルを手掛け、その独創的な作品は、現代のクリエイターにも影響を与え続けています。
和の空間と調和した浮世絵の数々
エントランスで靴を脱ぎ、受付を済ませたら、奥に続く展示室へ。障子窓や照明など、旅館時代の面影を残した畳の間からは、緑の木々が輝く日本庭園を眺めることができます。凛とした和の空間と調和するように、国芳の浮世絵が飾られています。
『通俗水滸伝豪傑百八人之壹人 浪裡白跳張順』弘化2年(1845)UKIYO-E KURASHIKI/国芳館所蔵最初の展示室にさっそく、国芳の出世作『通俗水滸伝』の一枚がありました。浪裡白跳張順(ろうりはくちょうちょうじゅん)という水練の達人を活写したこちらは、『通俗水滸伝』シリーズの中でも頂点と評されるほどの傑作。その勇ましい表情や躍動感あふれる動きが放つ迫力に圧倒されます。
2階の窓から『美観地区』を一望!
館内には全11室の展示室があり、階段を上がったり下りたりしながら各室を巡る造りになっています。
2階に設けられた横長の窓から見えるのは、庭に植わった立派な松の木。まるで一幅の絵画のような景色に目を奪われます。
窓に近づくと、歴史ある家屋がぎゅっと密集した『倉敷美観地区』が一望できます。壮観!
この窓がある展示室には、怪物と闘う強く美しい女性たちを描いた美人画が並んでいます。
国芳作品を至近距離で鑑賞できる贅沢さ
傑作の数々を至近距離で鑑賞できるのが『UKIYO-E KURASHIKI/国芳館』の魅力。
気が遠くなるほど細やかに表現された着物の柄や髪の毛、生き物たちのバリエーション豊かな表情など、作品のディテールを間近でじっくり鑑賞できるのです。浮世絵の原画を描いた国芳の力量はもちろん、繊細な線を彫り上げる「彫師(ほりし)」と、鮮やかな色に刷り上げる「摺師(すりし)」の技術力にも感嘆するはず。
『通俗水滸伝豪傑百八人之一個 九紋龍史進 跳澗虎陳達』文政10年(1827)UKIYO-E KURASHIKI/国芳館所蔵こちらも、序盤で紹介した『通俗水滸伝』シリーズの一枚。同シリーズは、豪傑たちの全身に施された刺青が印象的です。作品が発表された当時、この鮮烈な全身刺青に火消しや鳶など血気盛んな男たちが熱狂し、国芳の図をもとにした刺青ブームが巻き起こったそうです。
『見立東海道五十三次 岡部 猫石の由来』弘化4年(1847)UKIYO-E KURASHIKI/国芳館所蔵『龍宮玉取姫之図』嘉永6年(1853) UKIYO-E KURASHIKI/国芳館所蔵
多彩な表情と動きを見せる動物や妖怪も、国芳作品の見どころ。同館ではユーモラスなものから異様な迫力に満ちたものまで、「生き物」と「化け物」が描かれた作品が数多く展示されています。
ダイナミックな構図の大作も多数展示
『UKIYO-E KURASHIKI/国芳館』は、大判三枚続(3枚の紙を繋ぎ合わせた横長サイズ)の大作も充実。画面いっぱいに大胆な構図で描く斬新なスタイルは、当時の浮世絵界に革命を起こしました。
『相馬の古内裏』弘化2年-弘化3年(1845-1846)UKIYO-E KURASHIKI/国芳館所蔵所蔵の大判作品の中で最も注目すべきは、『相馬の古内裏』。滝夜叉姫(左)が妖術で召喚した巨大な骸骨が真っ黒闇からヌッと現れる様子を描いた作品は、背筋がゾクゾクする気味悪さと、約180年前に描かれたとは思えないような現代的なデザイン性を感じます。
『主馬佐酒田金時 靭屓尉碓井貞光 滝口内舎人 源次綱と妖怪』(1861)UKIYO-E KURASHIKI/国芳館所蔵妖怪が出てきても動じることなく、手で押さえつけながら将棋を打つ武者たち。インパクト抜群な構図と強烈な顔つきに釘付けになってしまいました。
『鎮西八郎為朝』 江戸時代末期 絹本肉筆 UKIYO-E KURASHIKI/国芳館所蔵国芳の貴重な肉筆画も展示されています。色鮮やかな浮世絵に比べてやわらかな雰囲気ですが、精緻な描写は共通していますね。
国芳一門の作品も楽しんで
最後の展示室を飾るのは、国芳一門の作品群です。多くの優れた浮世絵師を輩出した国芳一門。月岡芳年(つきおか よしとし)や歌川芳艶(うたがわ よしつや)、歌川芳員(うたがわ よしかず)、河鍋暁斎(かわなべ きょうさい)など、国芳の門弟たちの浮世絵が展示されています。奇抜な構図や激しい形相、どこか気の抜けたタッチなど、それぞれの画風を楽しんでください。
ハイセンスなオリジナルグッズがずらり
作品を鑑賞した後は、館内に併設されたおしゃれなグッズショップへ!国芳の浮世絵の一部を切り抜いて大胆に配置したTシャツやトートバッグ、国芳の浮世絵を大胆に配置したTシャツやトートバッグ、千社札ステッカー、オリジナルドリップバッグコーヒーなどが販売されています。
倉敷で奇想天外な国芳ワールドに浸ろう!
武者絵に美人画、妖怪絵など、量・質ともに充実した国芳作品のコレクションを収蔵する『UKIYO-E KURASHIKI/国芳館』。彼の浮世絵を見ていると、もっと自由に、突き抜けて生きてもいいのかも…と勇気をもらえます。情緒あふれる美観地区の一角で、奇想天外な国芳ワールドを堪能してください!
UKIYO-E KURASHIKI/国芳館(ウキヨエ クラシキ/クニヨシカン)
住所/岡山県倉敷市本町1-24
電話/090-8242-1443
開館時間/10:00~18:00(最終入館17:30)
入場料/一般1,300 大高生1,000円 小中学生500円 未就学児無料
休館日/火曜日(祝日の場合は開館)、年末年始 ※臨時休館あり
https://ukiyo-e-kurashiki.jp
瀬戸内Finderフォトライター ヒロエ カナコ
▼記事提供元
「瀬戸内Finder(ファインダー)」は、瀬戸内を共有する7県(兵庫県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県)の魅力を世界に発信しています。