徳島と愛媛、巨樹と歴史あるスポットを巡るドライブ旅!/加茂の大クス・美濃田の淵・川之江城・大山祇神社・清光堂
4つの県が1つの大きな島の中にある四国は、それぞれ個性的な観光スポットの宝庫。「えっ、こんなところに?」と思うようなところにも、素敵な場所がいっぱいあります。そんな四国をじっくり楽しむには、自由で小回りの効く車による周遊がぴったり!今回は徳島から愛媛へと向かう旅行プランをご紹介します。
【スポット 1】平地で見られる西日本最大級の巨樹へ!
加茂の大クス(徳島県三好郡東みよし町)
環境省の定義では、原則として地上130センチの幹周りが3メートル以上の大木を“巨樹”と呼びます。
あまり知られてはいませんが、徳島県は“巨樹王国”でもあり、推定樹齢300年以上という見上げるような古木が県内各地に点在。しかし、大半は険しい山間部で成長しており、観光旅行で向かうには、なかなか厳しい現実があります。
そのなかでもアクセスしやすいのが、最初に向かう東みよし町の加茂・古川地区、旧若宮神社の社地跡に枝を広げる『加茂の大クス』です。のどかな田園地帯に、ただ1本だけそびえ立っているにもかかわらず、まるで森のような存在感。都会ではまず見られない光景でしょう。
『加茂の大クス』の推定樹齢は約1,000年。源平合戦の頃からこの地で人々を見守ってきたといいます。
しかし、昭和に入ってからは周囲の宅地造成や農地開発の影響によって樹勢が低下。落雷や暴風雨に見舞われ、太く大きい枝が折れるなど、保護・対策が必要になりました。
周辺の一部農地を公園にし、傷んだ箇所を治療した結果、懸念されていた樹勢は見事に回復。2007年11月の計測値では、地上130センチの幹周りが約17メートルに。また、樹高は約26メートルまで成長し、全盛期には南北で約70メートルとされる枝張りも約42メートルまで復活し、訪れる者に見事な姿を見せてくれています。
春になれば周囲のレンゲが咲き誇り、まるで一幅の絵画を思わせる光景となるほか、田植えが始まって水が張られる時期になると、鏡のような水面に映り込む“逆さ大クス”を狙って、県内外からアマチュアカメラマンも足を運ぶとか。
夏には地域の祭りが行われたり、冬には注連縄飾りの掛け替えも見ることができるそう。この立派な注連縄は地域の人々が準備し、20人がかりで取り付けていきます。
東西南北の枝張りのバランスが良く、吉野川中流の平地にそびえ立つ西日本最大級の巨樹『加茂の大クス』。雄大さや美しさに関しては日本一の呼び声も高く、国の天然記念物にも指定されています。
ぜひ、その威厳に満ちた静かな迫力を体感してみてください。
加茂の大クス
住所/徳島県三好郡東みよし町加茂1482
電話/0883-79-5339(東みよし町役場産業課)
https://www.town.higashimiyoshi.lg.jp/docs/559.html
【スポット 2】大自然の芸術!吉野川屈指の景勝地
美濃田の淵(徳島県三好郡東みよし町)
『加茂の大クス』から吉野川沿いに西へ車で移動すること約10分。次の目的地は『美濃田の淵』と名付けられた吉野川を代表する景勝地です。四国最大の大河であり“四国三郎”の異名を持つ吉野川の中流域に位置し、徳島県の名勝・天然記念物をはじめ、「四国のみずべ八十八カ所」「とくしま88景」「とくしま水紀行50選」などに選定されています。
全長約2キロ、幅が約100メートルという『美濃田の淵』は、昔から徳島の人々に親しまれてきました。
長い年月の間に、吉野川の流れがつくった不思議な姿・形をした奇岩・怪石の数々は、一見の価値あり! 1916年に刊行された『阿波名勝案内』によれば、「吉野川ここに至りてもっとも狭く墨絵の妙をきわむ」と書かれており、文人・墨客から墨絵のモチーフとして愛されたことがよくわかります。
2001年からは観光用遊覧船が就航。昔ながらの屋形船を模したデザインですが、実は軽くて強いガラス繊維強化プラスチック製の現代的なつくり。冬季以外の3シーズン、ゆったりと30分ほどかけて『美濃田の淵』を川面で体感できるとあって老若男女から人気を博しました。
しかし、残念ながら2016年に廃止となり、現在は岸辺を散策しながら、奇岩・怪石を眺めて楽しむスポットとなっています。
『美濃田の淵』の奇岩・怪石による景観は、南岸から連なっている結晶片岩の地層によるもので、大歩危・小歩危と同じく、吉野川の激流が浸食して創り上げた大自然による芸術です。川底から立ち上がり、各所に点在する奇岩・怪石は、ここでしか見ることができないもの。一つとして同じものはありません。
「獅子舞岩」「鯉釣り岩」「妹背岩」「うなぎ巻岩」「作造岩」などの名前が付けられ、地元ではそれぞれにまつわるエピソードが語り伝えられているといいます。
また『美濃田の淵』には、吉野川の度重なる洪水で石や砂が穿った「雄釜」と「雌釜」と呼ばれる一対の甌穴(おうけつ)があり、これらはつながっていると考えられているそうです。「雄釜」へ石を投げ入れると「雌釜」へ運ばれ、逆に「雌釜」へ石を投げ入れると「雄釜」から泡が湧き上がるといわれ、古くは雨乞いの儀式で竜王の御神体を投げ入れたという伝承も残っているとか。
春は桜の名所として知られるなど、四季折々に美しい表情を見せる『美濃田の淵』。川沿いには無料のキャンプ場があるほか、日帰り温泉「美濃田の湯」がある『吉野川ハイウェイオアシス』もすぐそばにあります。時間の余裕があれば、こちらでテントやタープを張ってデイキャンプと洒落込んだり、ひとっ風呂浴びてから次の目的地へ…というプランもおすすめしたいところです。
美濃田の淵
住所/徳島県三好郡東みよし町足代
電話/0883-76-5700(吉野川オアシス観光情報センター)
https://www.town.higashimiyoshi.lg.jp/docs/564.html
【スポット 3】天守閣に登ることができる城から瀬戸内海を一望
川之江城(愛媛県四国中央市)
『美濃田の淵』を出発して、さらに吉野川沿いを西へ向かっていくと、やがて愛媛県へと入ります。目指しているのは四国中央市川之江町の海のそばにある鷲尾山。その山頂にある『川之江城(かわのえじょう)』です。
もともとは南北朝時代に築かれた城塞でしたが、伊予・讃岐・土佐・阿波を結ぶ交通の要衝であったことから、時代を経ても重点的な攻略の対象とされ、目まぐるしく領主が変わった城でした。また、築城時に恵心僧都の開基による仏殿と仏像を城内に運び、武運長久を祈願したことから、『仏殿城』という別名でも知られています。
1600年に起きた関ヶ原の戦いの後、伊予国に転封された加藤嘉明が伊予松山城へ居城を移し、川之江城は廃城になりました。現在の『川之江城』は、1984年の川之江市制施行30周年記念事業の一環として行われた城山公園整備事業によって再建されたもの。本丸跡に犬山城の天守を模した天守をはじめ、涼櫓や櫓門、隅櫓、控塀などがつくられました。
鷲尾山の山頂にある城山公園は、地元の人々はもちろん、県外からの歴史ファンなども足を運ぶ憩いのスポット。こちらの櫓門が入口となっています。
『川之江城』の天守閣に登ってみましょう。
内部には戦国時代を中心とした史料が展示されているほか、最上階である4階の展望台からは、東は川之江町の町並みと法皇山脈、西北には燧灘の海と瀬戸内の島々という絶景を堪能することができます。
東西南北すべてが開放されているため、戦国武将の気分が味わえること間違いなし。よく晴れて空気が澄んだ日ならば『しまなみ海道』まで見えるそうですよ。
城山公園には約900本もの桜が植えられており、地元の人々からは桜の名所としても愛されています。残念ながらしばらくコロナ禍で中止が続いていますが、毎年4月の第1日曜日には『城山公園桜まつり』が開催。餅投げをはじめ、お茶席や写生大会など、多くの楽しいイベントが恒例行事となっています。『川之江城』がある城山公園は、遊歩道が整備されているほか、各所にベンチが置かれており、ゆったり過ごすにはぴったり。歴史に思いを馳せながら、散策してみてはいかがでしょうか。
川之江城(かわのえじょう)
住所/愛媛県四国中央市川之江町1087-4 川之江城山公園
電話/0896-28-6267(川之江城天守閣)
営業時間/9:00~16:00
入場料/大人100円、小・中学生50円
定休日/月曜日(祝日の場合、翌平日)、年末年始
http://www.shikochu-kankou.jp/?page_id=93
【スポット 4】芸予諸島最大の島に鎮座するパワースポットへ!
大山祇神社(愛媛県今治市)
次は少し長めの移動となります。
四国中央市からさらに西へ進み、新居浜市、西条市を抜けて北上。今治市から『しまなみ海道』へ入り、瀬戸内海のほぼ中央、大小の島々に囲まれた瀬戸内海国立公園の中心に位置する大三島へ向かいます。
ここは芸予諸島最大の島であり、瀬戸内海では4番目に大きな島。古くから“神の島”や“国宝の島”と呼ばれていますが、今回の目的地は、その理由ともなっている鷲ヶ頭山の西麓に鎮座するパワースポット『大山祇神社(おおやまづみじんじゃ)』です。
『大山祇神社』に祀られている御祭神は大山積大神一座。天照大神の兄に当たり、三島大明神とも称されています。『古事記』や『日本書紀』には山の神として登場するほか、大海原や渡航、戦いを司る神様としても知られ、歴代の朝廷や武将から尊崇を集めました。
全国に一万社余り存在する山祇神社と三島神社の総本社にして日本総鎮守でもあり、現在でも多くの人々が参拝に訪れる神聖な場所です。
本殿の正面にそびえる巨樹は『小千命(乎知命・おちのみこと)御手植の楠』と呼ばれる御神木。神武天皇の御東征より前に大山積大神の子孫である小千命(乎知命)によって植えられたと伝わるクスノキで、推定樹齢は何と約2,600年。度重なる兵火や洪水、落雷などにも負けず、『大山祇神社』とともに歴史を刻んできました。
「息を止めて正面から右回りに3周すると願いが叶う」「一緒に写真を撮影すると長生きできる」など、さまざまなおまじないでも知られています。
『大山祇神社』の拝殿と本殿は鎌倉時代後期の1322年に兵火で消失し、室町時代に当たる1427年に再建。江戸時代に入ってすぐの1602年に大修理が施されたと伝わっています。どちらも国の重要文化財に指定されており、参拝すると自然に背筋が伸びるような気持ちに。
また、境内にある『大山祇神社宝物館』には、鎌倉時代から戦国時代までの貴重な武具類が保存・展示されています。
これは多くの武将が武具を奉納して武運長久を祈願したためで、実に国宝・国の重要文化財の指定を受けた武具類の約8割がここに収蔵されているとか。特に甲冑は全国一の名品が揃い、歴史ファンならずとも必見の施設です。
『小千命(乎知命)御手植の楠』をはじめ、境内には多くのクスノキの古木が残り、38本が『大山祇神社のクスノキ群』として国の天然記念物に指定されるなど、さまざまな見どころがある『大山祇神社』ですが、奥の院への参道にある『生樹の御門(いききのごもん)』にも行ってみましょう。
『大山祇神社』の周囲を流れる祓川の横を通り、案内表示を見ながら歩いて向かうこと約10分。やがて小さな森が見えてくると思います。
こちらが『生樹の御門』と呼ばれる巨大な1本のクスノキ。その名のとおり、奥の院へ入るための「生きている樹木の門」なんです。
愛媛県の天然記念物に指定されている『生樹の御門』は、もともと一つの幹だったそうですが、いつしか双幹に分かれ、根本にある洞が自然の通路になったそうです。
『大三島を中心とする藝豫叢島史』によれば、推定樹齢は約2,000年、案内板には約3,000年。どちらにしても想像を超えた長寿ですね。
これだけの年月を生きているため、長寿の薬として樹皮が珍重され、削って持ち帰る人が後を絶たず、明治時代には樹勢が衰えましたが、現在は元気な姿を見せています。
根本にある洞は幅が約2メートル、高さが約3メートルと、大人でも楽に通れるサイズ。内部は石段が設置されており、ここをくぐるだけで長生きが約束されるともいわれています。
まるで物語に出てくるような『生樹の御門』。大三島の『大山祇神社』を訪れた際は、ちょっとだけ足を伸ばしてみてください。
大山祇神社
住所/愛媛県今治市大三島町宮浦3327
電話/0897-82-0032(大山祇神社社務所)
開門時間/日の出頃~17:00 (宝物館・海事博物館 9:00~16:00 ※入館は15:30まで)
駐車場/有 50台
https://oomishimagu.jp
【スポット 5】愛媛のフルーツを贅沢に使った大福をお土産に
清光堂(愛媛県今治市)
今回の旅の終わりを締めくくるのは、今治市の誇る老舗和菓子店。大三島から車で本土まで戻り、海岸沿いを南下すると、やがて見えてくるのが『清光堂』です。
愛媛県の名産である甘くてジューシーなみかんを丸ごと包んだフルーツ大福「まるごとみかん大福」で知られています。
1952年創業以来、約70年にわたり、地元・愛媛県の素材を生かす和菓子づくりを続けてきた『清光堂』。
代表作であるフルーツ大福「まるごとみかん大福」のほか、季節感を大切にした和菓子の数々をはじめ、どら焼きやカステラ、マドレーヌなど、お土産にぴったりなお菓子が揃っています。
いちご大福をヒントに、小ぶりのみかんを丸ごと使うのは、グアム生まれの二代目和菓子職人ビルさんのアイデア。しかし、ちょうどいいサイズのみかんが安定して入手できなかったり、それこそ完成までは試行錯誤の連続だったといいます。現在のように全国に知られるまでには時間が必要でした。
今や新たなスタンダードになった『清光堂』のフルーツ大福。この商品には「季節の新鮮な果実で食べた人を幸せにしたい」という思いが込められています。
“一福百菓”という名前のとおり、甘夏や八朔をはじめ、桃やいちじく、ぶどうにメロン、シャインマスカットやラ・フランスなど、季節に応じてさまざまな愛媛県産のフルーツを用いた大福が並ぶそう。いろいろ食べ比べて、お気に入りを探してみるのも楽しいですね。
そのほかにも、江戸時代に今治市桜井で生産されていた漆器を運ぶ帆船をモチーフにした「腕船最中」や、和菓子作家の坂本紫穂さんと三代目の益田寛規さんがタッグを組んだ新ブランド「ひる凪」の和菓子など、『清光堂』には、素晴らしいスイーツが盛りだくさん。
徳島と愛媛を巡った思い出として、自分にぴったりの一品を探してみてください。
清光堂
住所/愛媛県今治市郷桜井3-4-5
電話/0898-45-0426
営業時間/10:00〜18:00
定休日/日曜日・月曜日
駐車場/4台
最寄り駅/JR伊予桜井駅
https://www.ichifuku-hyakka.com
文:瀬戸内Finderフォトライター 重藤貴志
▼記事提供元
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