バスと電車と足で行くひろしま山日記 第52回せんこう頭部(ずぶう)・天狗岩(安芸郡坂町)
広島湾東部に面する安芸郡坂町は広島市と呉市の間にあり、町域の南部は山地が占める。かつては中国電力の火力発電所があり、小学校の社会科の副読本にも載っていた記憶がある。海岸線から立ち上がる山塊には遊歩道が整備されており、気軽に瀬戸内の海と島の景観を楽しむことができる。まだ寒さも残るこの季節、陽だまりの中を歩く低山ハイキングに出かけてみた。
▼今回利用した交通機関 JR山陽線・呉線(おとな片道240円)
行き)横川(8:48)→(8:54)広島(9:10)→(9:26)坂
帰り)坂(13:37)→(13:53)広島(14:00)→(14:04)横川
梅の花咲く展望地
JR坂駅南口を出て左に折れ、すぐに道路を渡って小路に入る。住宅の間を上っていくと墓地があり、標識に沿って歩くと遊歩道の入り口だ。まずは「頭部(ずうぶ)みはらし公園」を目指す。道はコンクリートで舗装され、手すりと階段が整備されているところもある。登山道というよりも遊歩道、ハイキングコースといった方がよさそうだ。
スタート&ゴールのJR坂駅墓地の中の遊歩道入口
眼下にJR坂駅
階段の道を行く
30分ほど歩くと、階段の先に展望台が見えてきた。標高188.7メートル、「頭部みはらし公園」だ。高台の広場の周囲は梅林になっており、白梅や紅梅が七分咲きだ。梅林があることは知らなかったのでうれしいサプライズ。紅梅にはピンク色と濃い赤の二種類があり、目を楽しませてくれる。春の訪れが近いことを実感する。眼下には坂の町並みや金輪島、元宇品、似島が見える。他の登山者(ハイカー)に交じって写真を撮り、展望台で小休止した後で先へ進む。
頭部みはらし公園の展望台が見えてきた梅林に囲まれた広場
景色を楽しめる展望台
白梅
ピンクの紅梅
赤が濃い紅梅
展望地の先には鮮やかな赤い花を咲かせたヤブツバキも見られた。ただ、舗装された路面がコケに覆われて滑りやすくなっているところがあり、注意しながら進む。10分ほど歩くとあずまやとベンチのある小ピークに。前方の行く手にはせんこう頭部(せんこうずぶう 358.9メール)が見える。階段を下りると住宅街に出た。ここは「上条口」と呼ばれ、ここまでが「頭部ルート」(坂町の遊歩道マップにリンクします)だ。ここからJR水尻駅に通じる水尻ルートもあるのだが、災害復旧工事のため通行止めだ。
コケがついた遊歩道。スリップ注意!これから向かうせんこう頭部
ヤブツバキ
上条口への下り階段
上条口の案内標識。水尻方面は通行止め
天狗岩ルートは階段から
案内看板に従って天狗岩へ向かう天狗岩ルートに入る。いきなり階段の急登が続く。よく整備されていて歩きやすいのだが、少し息が上がる。せんこう頭部までは約30分の道のりだが途中に平岩や見晴岩といった展望ポイントがある。休憩やお弁当にもってこいだが、まずは先を急ぐ。
天狗岩ルートの始まりは階段の急登平岩
見晴岩の入り口
このルートのいいところは、ピークだけでなく遊歩道の途中にも樹木を切り開いて展望を楽しめるポイントが多くあることだ。海側だけでなく、東側の絵下山や安芸アルプス、北側の呉娑々宇山などの景色を楽しみながら歩くことができるので気分が上がる。
せんこう頭部には10時50分に到着。ここもベンチがしつらえてあるがそのまま先へ向かう。
せんこう頭部の山頂広場それにしてもこの変わった山名の由来は何なのだろう。「角川日本地名大辞典34 広島県」にも載っておらず、同書に掲載されている坂町の地図には、せんこう頭部は「西岳」と味もそっけもない山名になっている。ちなみに頭部みはらし公園は「孤ヶ城(トオミ)」、天狗岩は「スドコ」という山名になっているが、いずれも由来は書かれていない。
絶景の山頂と見晴岩のカレーメシ
奇岩が連なる天狗岩(370メートル)には11時に到着。広島市街地から西中国山地の山々が見渡せる。元宇品には5月のG7サミット首脳会談の舞台になるホテルが見え、似島から厳島、能美島、江田島が見渡せる。標高は大したことはないのだが、海までの距離が近く、見ごたえのある景色だ。岩の上に上ったり、ベンチに腰掛けたりしながら体を休めた。
天狗岩を南から見る天狗岩の展望パネル
天狗岩から見た金輪島(手前)と元宇品。遠く雪をかぶった西中国山地が見えた
ここからJR小屋浦駅に下山するコースは残念ながら災害復旧工事で通行止め。2018年の豪雨災害のつめ跡はなお深い。ここで昼食にしてもいいのだが、まだ時間が早いのと頂上付近は少し狭いこともあって引き返し、見晴岩まで戻ることにした。
小屋浦方面は通行止めその名の通り、見晴岩からの眺めはすばらしい。西中国山地の山並みは、まだ山頂付近が雪に覆われている。岩上が広く、平らなこともあってお弁当にするにはもってこいだ。今回もバーナーを持参したが、カップ麺ではなく「カレーメシ」。お湯を入れて5分、しっかりかき混ぜたらできあがり。初めて買ってみたが、なかなかいける味だった。登山飯のレパートリーに加えよう。
今回の昼食は初のカレーメシ見晴岩からの絶景を眺めながらのお昼ご飯
食事を終え、ゆっくり来た道を引き返して下山した。天気が良くて暖かく、梅の花と瀬戸内海の景観を楽しめる最高のハイキングだった。全行程4時間ほどで、ファミリー向けのコースでもある。総歩行距離は7.2キロだった。
山行のお供は今年のカープのキャッチフレーズキャップでした2023.2.26(日)取材 《掲載されている情報は取材当時の内容です。ご了承ください》
50代後半になってから本格的に山登りを始めて5年ほど、中四国の低山を中心に日帰りの山歩きを楽しんでいます。できるだけ公共交通機関を利用しますが、やむを得ない場合に時々レンタカーを使うことも。安全のためトレッキングポールは必ず携行。年齢のわりに歩くのは速い方です。
■連載コラム「バスと電車と足で行くひろしま山日記」