地域再生と創造の宿で歴史と現代の融合を体感/NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町(愛媛県大洲市)

日本最大級の分散型ホテル『NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町』

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点在する歴史的な古民家や文化財を客室へ改装し、大洲城下町全体をひとつのホテルとして見立てている『NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町』。

大洲は、江戸時代に大洲城の城下町として栄え、今でもその町並みや風情が色濃く残る場所でもあります。長らく放置され老朽化した空き家の解体により城下町の景観が失われる懸念は、リノベートして歴史的資源の活用だけでなく、町の活性化へとつなげ観光に生かすまちづくりにもつながっています。

大洲藩主の末裔の邸宅であり、国登録有形文化財に指定された旧加藤家住宅主屋をはじめ、個人所有の民家など、現在22棟28部屋が客室へと生まれ変わりました。中には1棟貸し切りで楽しめる建物もあり、それぞれが造りの異なる唯一無二の存在となっています。

城下町を少し歩くだけでNIPPONIA HOTELの暖簾が揺れる建物を目にし、分散型を実感するのはもちろん、ここ大洲にそれだけ古民家が今でも多く残っていることに驚きました。

 

使うことは、残すこと。大洲城下町の歴史を今に伝える客室

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人の気配がなくなった建物は、時間の経過と共に朽ちていきます。歴史を物語る貴重な場所をこれからもここに残していくためには、修繕を行いながら使っていくことも必要です。

使うことは残すことにつながり、そうして建物も生き続けてほしい。ここにしかない価値や魅力いっぱいの客室と、大洲城下町を存分に味わうスポットも併せてご紹介します!

 

随所に感じる『蔵』の名残と空間のインパクト!

『MUNE棟』

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今回宿泊したのは、オーナーである村上長次郎氏の生業である木蝋が保管されていた蔵を改装した『MUNE棟501号室』です。全ての宿泊棟が大洲藩の歴代藩主やその末裔の名前から文字をとって名づけられており、こちらのMUNE棟は4代藩主の加藤泰統(やすむね)から取られたそう。

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蔵の土壁は湿気を吸いやすいため壁側に水回りの設置が難しいことから、中央に設計された浴室やトイレ。意表をつかれるこの姿、開放感たっぷりです。

 

魅力的でユニーク。時を経て、現代と共存する客室ごとのヒストリー

点在している客室をいくつかご紹介します。

 

『MITI棟』

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国登録文化財である「旧加藤家住宅主屋」を使用した『MITI棟』。藩主の末裔である加藤泰通(やすみち)から付けられました。旧大洲藩主の加藤家が大正14年に建築した住宅で、格式高い近代和風建築を味わえる空間となっています。

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『YUKI棟』

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明治26年開業の今岡製糸工場を創設した、今岡梅次郎氏の邸宅『YUKI棟』。大洲8代藩主の加藤泰行(やすゆき)から取られました。今岡生糸は宮内庁御用織物としても評価され、中庭の梅の老木は、昭和3年に昭和天皇即位式典御用生糸に選定された際、宮内庁より贈られた貴重な木だそう。当時からある中庭で、時を経ても存在感を放つ姿は印象的です。

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繭玉のライトや大洲生糸を使用したタペストリーが飾られているなど、製糸業を営んでいたことを象徴する空間になっています。

 

『ATU棟』(中川邸・山下邸)・『TAKE棟』(村田邸・伊東邸)

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大洲5代藩主の加藤泰温(やすあつ)、7代藩主の加藤泰武(やすたけ)から取られた『ATU棟』『TAKE棟』は、点在する物件の中でも特に古い建物だそう。特徴的な⾍籠窓や木格子などそのまま残されており、住居として使われていた当時の生活が感じられる建物のひとつです。

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天井の低さも、当時の暮らしを思わせます。解体時に現れたという壁の文字も、家系図のようにも見えるためそのまま生かすデザインに。

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階段を登ったところにある小上がりのスペースは、穏やかな日が差し込みちょうど腰掛けられる高さ。ここに座って、窓の外を眺めるのがお気に入りだったのかもしれません。住居として使われていた頃に想いを馳せるのもいいですね。

 

『SADA棟』

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大洲城が見える客室が特徴の『SADA棟』は、貸家として使われていた建物で、お茶の先生やお医者さんなどがお住まいだったとか。

どの宿泊棟も、修復と保全を大切に、修復材を使う際にどうしても生まれるスペースなども上手く空間デザインされているのも印象的でした。

 

点在しているのはホテルだけじゃない。宿泊とセットでぜひ訪れてほしい場所

大洲城下町には徒歩圏内に見どころスポットも点在。ホテルのチェックインまでの時間を昔の面影を感じながら散策を楽しみましょう!

 

大洲観光の出発点『大洲まちの駅あさもや』

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大洲観光の総合窓口である『大洲まちの駅あさもや』は、観光案内所の他、物販コーナーも充実。大洲銘菓「しぐれ」を始め、クラフトビールや地酒、麦味噌、海産物などさまざまな商品を取り揃えています。

大洲まちの駅あさもや
愛媛県大洲市大洲649-1
0983-24-7011
http://www.oozukankou.jp/buy-1.html

 

『盤泉荘(旧松井家住宅)』で大正浪漫を感じる

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フィリピンで貿易会社や百貨店などを経営し、富を成した松井國五郎氏によって建てられた別荘『盤泉荘』。高台に建つ3階建てで、肱川や冨士山(とみすやま)などの美しい景観が一望できます。松井國五郎氏のイニシャル「K・M」を用いた鬼瓦や、松のデザインが入る襖など松井氏のセンスが随所に感じられ、近代和風の貴重な別荘建築として評価されています。

盤泉荘(旧松井家住宅)
住所/愛媛県大洲市柚木317
営業時間/9:00〜17:00
休館日/12月29日〜12月31日
観覧料/大人550円 中学生以下220円

 

『大洲神社』を参拝

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大國主命(大黒様)、事代主命(えびす様)を御祭神とし、福徳、商売繁盛、安産の神と知られた『大洲神社』。1331年に大洲城が築城された際に、この地の総鎮守として建てられました。

大洲神社
愛媛県大洲市大洲神楽山417
https://oozujinja.jp

 

町並みに存在感を放つレンガ建築『おおず赤煉瓦館』

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『おおず赤煉瓦館』は、イギリス積みのレンガ建築が特徴の建物で、明治34年に大洲商業銀行本店として建築されました。当時の日本は、文明開化が花開いた頃で浪漫溢れた時代。現在は工芸品や特産物の販売コーナーや、休憩所も併設されているので散策の寄り道にぴったり。

おおず赤煉瓦館
愛媛県大洲市大洲60
0893-24-1281
https://www.city.ozu.ehime.jp/site/kanko/1176.html

 

『ポコペン横丁』で昭和にタイムスリップ

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おおず赤煉瓦館の裏手にある、昭和30年代のレトロな雰囲気を再現している『ポコペン横丁』で束の間のタイムスリップ。

ポコペン横丁
https://pokopen.yokochou.com

 

昼食は油屋名物「とんくりまぶし」を味わう

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おおず赤煉瓦館の向かいにある『大洲炉端 油屋』も、幕末から旅館として歴史を刻んできた建物をできるだけ残して改装されたお店です。「とんくりまぶし」は豚すき焼き肉と大洲産の栗の照り焼きがおひつにたっぷり。出汁をかけて薬味と合わせてお茶漬けにして味わうのもおすすめです。

大洲炉端 油屋
愛媛県大洲市大洲42
0893-23-9860
11:30〜LO.14:00、18:00〜LO.22:00
月曜日定休(月曜日が祝日の場合営業、翌火曜日休み)
https://www.roundtable-tky.com/aburaya/

 

清流・肱川の『おおず 城下のお舟めぐり』

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愛媛県の西南部を流れる一級河川・肱川(ひじかわ)は昔、人々の生活と直結した河川であり、舟運の流通拠点だったことでも知られています。1時間ごとに6便が運行する定期船で、4ヵ所の乗り場で乗り降り可能です。静かに揺られながらの水路移動、肱川から眺める大洲の町並みや風景もまた格別です。

おおず 城下のお舟めぐり
事前に乗船券または観覧セット券の購入要。
乗船券/中学生以上1,100円 小学生550円
観覧セット券(大洲城・臥龍山荘・盤泉荘)もあり。中学生以上1,300円〜
チケット売り場/大洲観光総合案内所(大洲まちの駅あさもや内)、伊予大洲駅観光案内所、大洲城、臥龍山荘、盤泉荘

 

数寄屋造の傑作、『臥龍山荘』で建築美や自然を堪能

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国指定重要文化財である『臥龍山荘』は、木蝋貿易で富を得たとされる河内寅次郎氏が老後の余生を過ごしたいと築造した別荘です。印象的だったのは、不老庵と名付けられたこちらの部屋。全国で2カ所しかないとされる仕掛けが施されている部屋です。カーブを描いた網代天井は、肱川の水面に反射した月光を集めるように計算されて造られているそう。

臥龍山荘
住所/愛媛県大洲市大洲411-2
営業時間/9:00〜17:00 年中無休
観覧料/大人550円 中学生以下220円

 

宿泊者限定!大洲城ナイトツアー特別プラン

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NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町の宿泊オプションで、『大洲城ナイトツアー特別プラン』に参加してみました。普段は非公開の、夜の大洲城。甲冑姿の家臣が、大洲城の完全復元ストーリーと共に城内を案内してくれます。築城秘話も満載で、昼間とは違う雰囲気を味わいながら夜の大洲城の内部見学を楽しめます。

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大洲城ナイトツアー
1組あたり18,000円(税抜)
※時期により変動あり
※開催日は限られています。ご興味のある方は電話でお問い合わせください。

 

ライトアップされた大洲城を眺めながら、レストラン棟で至福のディナータイム

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たっぷりと大洲散策を楽しんだ後は、『NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町』のレストラン棟『LE UN』へ移動して、至福のディナータイム。大洲城を綺麗に眺められる位置にあり、宿泊棟『SADA棟』も併設されています。美しい砥部焼の器で提供されるのは、瀬戸内・愛媛を存分に味わえる本格フレンチ。ゆっくりと舌鼓を打つことができます。

 

夜はこれから!大洲の夜の過ごし方

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日が暮れた城下町。昼間歩いた町並みを、夜の静けさを感じながらゆっくり歩くのも良いものです。もう庭のような、地元のような感覚になりながら部屋へと戻ります。

食事会場と部屋までは送迎車の利用も可能です。宿泊者が無料で楽しめるフリーラウンジもあるので、お酒やドリンクで夜の時間をゆっくり過ごすのもよし、夜の静かな町並みをぶらり歩いてみるのもまた良しです。

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大洲の地元の皆さんからも愛されているソウルフードがあると聞き、やってきたのは『ラーメン屋台 福ちゃん』。雨の日以外の21時頃からひっそりと営業が始まるそう。昭和42年から3世代に渡って営業を続け、愛されてきた福ちゃんラーメン。

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メニューはラーメンのみで、程よいコシのある麺とあっさりしたスープは飲んだ後の締めにも最高。まさにソウルフード!

ラーメン屋台 福ちゃん
愛媛県大洲市大洲690-1
21:00〜2:00(雨の日は休業)

 

チェックアウトはゆったり12時

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翌朝、朝の散歩がてら朝食会場へ移動して朝食を楽しんだ後、チェックアウトの12時までの間、部屋やフリーラウンジなどで自由にゆっくりと過ごせます。

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今回私はチェックアウトまでの時間にちょっとドライブにも行ってみました。
大洲城下町から車で約7分、臨済宗妙心寺派に属する『如法寺仏殿』です。朝の澄んだ空気が気持ち良い中、お参りをしてきました。

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「ここにしかない」がたくさん見つかる大洲城下町

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魅力的なスポットが満載の大洲。徒歩圏内に見所が凝縮されているので気軽に足を伸ばすこともでき、泊まるだけで大洲城下町全体を楽しめる、そんな町でした。散策中も地元の人に会うと、こんにちはと声をかけてくれるのが印象的で、また来たいなと思える町でした。

旅先で出会う風景や、人や食、そしてその街の歴史。どれもが貴重でかけがえのない時間であることを改めて感じることができました。ぜひ大洲へ訪れてみてくださいね。

NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町
ホテルフロント
住所/愛媛県大洲市大洲378
電話/0120-210-289(VMG総合窓口11:00〜20:00)
https://www.ozucastle.com

 

瀬戸内Finderフォトライター CHIEMI NISHIMORI

▼記事提供元

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