山焼きから3カ月 深入山のいま 地球派宣言

安芸太田町の深入山(しんにゅうざん)では、4月に250年以上続く、恒例行事の山焼きが行われました。町の職員が山頂から点火すると、火は瞬く間に広がり、約5時間で95haを焼き尽くしました。

山焼きでこげた深入山 山焼きでこげた深入山

山焼きから3カ月がたち、山は緑あふれる草原に姿を変えていました。西中国山地自然史研究会の大竹邦暁(おおたけ・くにあき)専門員は「山焼きが終わり1週間もすると、植物が新しい芽を出す、いまはすっかり生えそろって草地ができあがった状態」と話します。

新緑の深入山 新緑の深入山

深入山で自然観察会の講師を務めている大竹さんに案内してもらいました。

山を案内する大竹専門員 山を案内する大竹専門員

谷筋に咲いている紫色の花は、ノハナショウブ。アヤメやカキツバタの野生種で、夏の訪れを知らせてくれます。

ノハナショウブ ノハナショウブ

所々にこげた後が残る山の中では、美しい見た目からは想像できない名前の山野草・クサレダマを見ることができます。大竹さんによると「黄色い花を咲かせる連玉(レダマ)というよく似た花の木に似ている草ということで、この名前になった」そうです。

クサレダマ クサレダマ

ほかにも県の絶滅危惧種などに指定されているヤマトキソウや、葉が笹に似ているササユリなど希少な花をみることができます。

ヤマトキソウ ヤマトキソウ

実はこれらの花の成長にも、山焼きが関係していると大竹さんは説明します。山焼きをすると、地上部は熱くなるものの、実は地面の下にはほとんど熱は伝わらないそうです。枯れ草や木は焼けて枯れますが、地下に残っている植物にとっては上に生えていた植物が無くなることで、日当たりが良くなり、芽を出すには最適な環境ができるのだそうです。

山焼きで焼かれた草木 山焼きで焼かれた草木

大竹さんによると、草原は「風が強くて木が成長しない場所」に多いそうですが、深入山では、そのままだと木々が成長してしまうため、山焼きをしなければ維持できないのだそうです。

深入山の草原 深入山の草原

全国的に草原は減ってきていて、草原でしか生息できなかった動植物が絶滅してしまうことも。草原にしか生息できない生き物たちを守っていく場所を残すために、山焼きをして草原を維持しているのです。

山を案内する大竹専門員 山を案内する大竹専門員

県の絶滅危惧種に指定されているヒメシジミ。草原特有のチョウで、山焼き後に育った花から蜜を吸っているそうです。250年以上の伝統を持つ山焼きは貴重な生き物や草原を維持するための先人たちの知恵なのです。

ヒメシジミ ヒメシジミ

 

広島ホームテレビ『5up!
地球派宣言コーナー(2022年7月6日放送)

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