【太田川シジミが消えた】ピーク時は年間300トンの水揚げ|地球派宣言

広島市内を流れる太田川では、以前はシジミの漁が盛んに行われていました。しかし、実はいま、食害を理由に存亡の危機にたたされています。

広島市内水面漁協の鈴木修治(すずき・しゅうじ)組合長は、広島市内の川で、土をざるに入れふるいをかけていましたが、シジミの姿はありません。

地球派宣言 シジミを探す鈴木組合長

シジミの代わりに川の中で見つけたのは、「チヌがシジミを食べてフンをした跡」でした。「チヌはいくらでもシジミを食べる。大きいチヌは大きいシジミを食べる」と言います。

地球派宣言 チヌが川の中でフンをした跡

チヌは、正式にはクロダイといい、沿岸や河口域に生息しています。

組合長によると昔から太田川にもいましたが、数が増えすぎてしまったといいます。漁協がチヌを捕まえて確認したところ、おなかの中から大量のシジミの殻が見つかりました。

地球派宣言 太田川のチヌ

チヌの一番の好物はムール貝ですが、何年かとれないときがあって、その後シジミを食べるようになってしまったそうです。

それでも川の中のチヌをすべて駆除するわけにはいかないといいます。

地球派宣言 チヌが食べたシジミの殻

この日、約1時間掘ってみましたが、確認できたシジミはわずか5個でした。

地球派宣言 取れたシジミ

太田川シジミは一般的なシジミと比べて身が大きく味も濃厚とされ、県内を中心に親しまれてきました。

ピーク時には年間300t水揚げされていましたが、年々減少。5年前からは数が減りすぎたためとることを禁止しています。

地球派宣言 太田川シジミ

シジミ漁師を30年以上やっていた鈴木組合長。以前は1日に100キロほども掘っていたそうです。

地球派宣言 太田川シジミの漁の様子

姿を消してしまった太田川シジミ。漁協や広島市では他県から購入したシジミを川に放流し、増やす取り組みを続けてきました。

4,5年前に宍道湖から約7トンのシジミを購入し、広島の川に放流しましたが、1週間ももたなかったそうです。

地球派宣言 シジミの放流(1990年)

また広島市ではシジミの稚貝を生産し、川底に設置した管(かん)の中に入れて育てていましたが、増水すると流れてしまうため思うような効果が出ず、市は稚貝の生産を3年前にとりやめました。

地球派宣言 川底に埋められた塩ビ管 提供:広島市水産課

広島市水産課の工永泰裕(くなが・やすひろ)さんは「せっかく放流しても、稚貝が大きくなって産卵し、個体が増える前にシジミに食べられてしまい、なかなか資源の回復につなげることが難しい状況。結果としてはうまくいかなかった。」と話します。

地球派宣言 広島市水産課の工永さん

そこで市では、昨年度から漁協と協力して魚の食害をうけにくい岩場に他県から購入したシジミの放流を始めました。

岩場は流されることもなく、生き残る稚貝が多いこともわかったので、この取り組みを継続していくということです。

地球派宣言 岩場に放流されたシジミ

広島の特産品の一つだった太田川シジミが復活する日は来るのでしょうか。関係者の地道な取り組みは続きます。

 

広島ホームテレビ『5up!
地球派宣言コーナー(2022年6月1日放送)

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