GWに家族で登りたい広島の山7選/バスと電車と足で行くひろしま山日記 テーマ編Vol.2

ゴールデンウイーク(GW)が始まる。2020年以降、新型コロナウイルス感染症の拡大が続いたため、旅行や外出の自粛を求められないGWは実に3年ぶりだ。観光地や行楽地などでは多くの人出が予想されている。とはいえ、感染が収まっているわけでもなく、人込みの中に出ていくのはちょっとなあ、という人も少なくないはずだ。そんな時は、家族で自然の中、日帰りの山歩きに行ってみてはどうだろう。これまでの連載で紹介した山々の中から、子どもと一緒でも無理なく登れ、山頂からの眺望も楽しめる7座を紹介する。

 


宗箇山(そうこやま 356メートル 広島市西区) 歴史と文化と眺望が自慢の里山


宗箇山全景 宗箇山全景

【登山口のアクセス】
JR可部線三滝駅(広島駅から8分、おとな190円)
広島バス三滝観音バス停(紙屋町から約20分。おとな220円)

太田川沿いから西に見える、緩やかに裾野を広げる山容が印象的な里山だ。山名は桃山時代の武将茶人上田宗箇(うえだそうこ 1563- 1650)に由来する。浅野長晟の芸州入りに従って広島に移り、城下に建てた上屋敷「和風堂」の借景としてこの山を選び、山頂に松を植えたことから「宗箇山」と呼ばれるようになったという。現在の「宗箇松」は四代目。創始した茶道は「上田宗箇流」(https://www.ueda-soukoryu.com/)としていまも広島の地に受け継がれている。

四代目宗箇松の解説板 四代目宗箇松の解説板

スタートは三滝寺。駒ヶ滝、梵音の滝、幽明の滝の3つの滝と堂塔をめぐり、Aコース登山道へ。竹林や雑木林を経て尾根に上がると、山頂まではよく歩かれている緩やかな道だ。50分から1時間ほどで山頂へ。広島のデルタを一望できる。広々とした山頂はお弁当を食べるのにも最適だ。帰りは市街地に向けて下るBコースをたどろう。Aコースに比べると少し急なところもあるが特別危険はない。ゆっくり歩いて40分ほどで参道入口に近い駒ヶ滝の横に下山できる。

詳しい「宗箇山」記事はこちら  https://hread.home-tv.co.jp/post-127331/

墨絵のような広島湾の島々 墨絵のような広島湾の島々

 


龍頭山(りゅうずやま 928メートル 北広島町) そばの里にそびえる360度展望と名瀑の山


道の駅豊平どんぐり村から龍頭山を望む 道の駅豊平どんぐり村から龍頭山を望む

【登山口のアクセス】
広電バス豊平・琴谷線龍頭山登山口バス停(広島バスセンターから約1時間30分。おとな1010円)

山登りの魅力は何といっても山頂からの眺望だ。しんどい思いをして登頂しても、見晴らしがきかないとテンションは上がらない。頂上に樹々がなく、さらに独立峰であればいうことはない。その条件を満たしてくれるのが龍頭山だ。
そばの里として知られる豊平地区にあり、山腹には名瀑として名高い「駒ヶ滝」がある。江戸時代の広島藩の絵師岡岷山は、長年の念願をかなえて写生旅行を許され、「都志見往来諸勝図」(広島市立中央図書館蔵)にこの滝の絵を残した。バスを降りて登山口まで約20分、登り始めて30分ほどで駒ヶ滝に到着。滝の裏から落水を見ることもできる。

江戸時代から知られた名瀑駒ヶ滝 江戸時代から知られた名瀑駒ヶ滝

最初の展望ポイントは小ピーク・前龍頭(836メートル)直下。麓が近く、集落や田畑が箱庭のように見える。20分ほど稜線を登ればあずまやのある山頂。掛け値なし、360度の眺望が楽しめる。車で9合目、5合目あたりまで行くこともできるので、時間と体力に応じてコースを選べる。下山後に道の駅「豊平どんぐり村」へ立ち寄れば名物のそばや温泉も楽しめる。バスの便数もそれなりにあるので公共交通利用者にはありがたい。

詳しい「龍頭山」記事はこちら https://hread.home-tv.co.jp/post-116018/

360度展望の龍頭山山頂(パノラマ写真) 360度展望の龍頭山山頂(パノラマ写真)

 


日浦山(ひのうらやま 345.4メートル 海田町・広島市安芸区)駅から歩いて行ける展望の里山


JR海田市駅から見た日浦山 JR海田市駅から見た日浦山

【登山口のアクセス】
JR海田市駅(広島駅から8分。おとな200円)
JR安芸中野駅(広島駅まで13分。おとな240円)

海田市駅から徒歩10分、大師寺の参道がBルート登山口だ。最初の石段は少しきついが石仏が並ぶ参道とそれに続く登山道はよく整備されており、約1時間で山頂に着く。標高こそ低い山だが、眺めの良さは近郊屈指だ。眼下に広島市東部から続く海田の町と海田湾。続く広島湾に似島、金輪島、厳島、江田島、能美島の島々が並ぶ。海田は古くから陸路と水路の要衝にあり、ここ日浦山の山頂にも日裡山城という城が築かれていた。この立地と周囲を見渡せる地形を見れば、城郭が設けられていたのもうなずける。ただ、楽に登れる山だけに、それほど堅固な城ではなかったのかもしれない。

日浦山頂上からの眺望 日浦山頂上からの眺望

下山は複数のルートが考えられる。登ってきたルートの少し東側を下るAルートで海田市駅に戻るのが一般的だが、少し物足りないなら山塊を縦走して安芸中野駅方面に下る影コースもいい。途中のかつてテレビ塔があった標高258メートルの広場はベンチが整備され、瀬野川を挟んで存在感のある鉾取山(711.1メートル)を主峰とする山塊を望むことができる。ほかにも観音免公園に下るルートなどもあり、時間と体力に合わせて選べる。

詳しい「日浦山」記事はこちら https://hread.home-tv.co.jp/post-148957/

標高258メートルの展望広場 標高258メートルの展望広場

 


鈴ヶ峰(すずがみね 312メートル 広島市西区・佐伯区) 広島南アルプス南端の展望台


鈴ヶ峰山頂からのパノラマ写真 鈴ヶ峰山頂からのパノラマ写真

【登山口のアクセス】
広電バス八幡東小学校バス停(五日市駅北口から山田団地・美鈴が丘高校行き=路線番号②=に乗車し約10分、おとな220円)
JR新井口駅(広島駅から12分、おとな200円)

広島市街地の西側に連なる通称「広島南アルプス」南端の山。標高は312メートル(東峰)と低いが、山頂からの眺めのよさは随一だ。広島市街地と太田川放水路を眼下に、似島や能美島、厳島などの島々が並ぶ一大パノラマが楽しめる。
登山ルートは複数あるが、ポピュラーなのはJR新井口駅から団地を抜けて井口台中学校の上の鈴ヶ峰登山口から登るルート。木段が多い道は苦手な人もいるかもしれないが、駅から1時間余りで頂上に立てる。おすすめは八幡東登山口から西尾根を登って西峰(320.1メートル)を経て東峰に至るルート。右手に広島で最も古い歴史をもつという広島ゴルフ倶楽部鈴ヶ峰コースと五日市の市街地、海を隔てて厳島、後方には極楽寺山を見渡せる登山道のロケーションもいい。八幡東登山口から新井口駅まで休憩時間も含めて3時間もあれば踏破できる。

八幡東登山口ルート途中から。ゴルフ場の向こうに厳島(2021年5月30日撮影) 八幡東登山口ルート途中から。ゴルフ場の向こうに厳島(2021年5月30日撮影)

あまり知られていないが、鈴ヶ峰と峰続きの鬼ヶ城山(282.4メートル)からの眺めもすばらしい。山田団地までバスで行けば、団地上の遊歩道を経て簡単に登れるので、体力のない小さなお子さん連れでも安心だ。鈴ヶ峰との2山縦走も楽しい。

詳しい「鈴ヶ峰」の記事(広島南アルプス㊦)はこちら https://hread.home-tv.co.jp/post-146313/

鬼ヶ城山。こちらもおすすめ 鬼ヶ城山。こちらもおすすめ

 


安芸小富士(あきのこふじ 277.8メートル 広島市南区) 小さな船旅と郷土富士


船上から見た似島の安芸小富士 船上から見た似島の安芸小富士

【登山口のアクセス】
似島汽船学園前桟橋・似島港(広島港から20~40分 おとな片道450円、往復券は890円)

広島湾に浮かぶ似島の主峰。最近は高層建築が増えてきたため広島市内から見られる場所も減ってきたが、端正な三角形の姿は、広島市のシンボルといってもいい山だ。富士山に似た山容の山に地元の名をつけて呼ぶ「郷土富士」でもある。
広島港から似島汽船のフェリーで小さな船旅に出る。登山口は学園前桟橋と似島港だが、学園前桟橋を経由する便は限られるので時刻表(https://ninoshimakisen.jp/time_price)を事前に確認すること。
高さは低いが、島の山なので標高をほぼまるまる登ることになるため意外に登りがいがある。学園前桟橋からの登山道は深く浸食されていたり、とてもすべりやすかったりするところがあるので少し注意が必要だ。心配なく登るなら似島港からのルートを選びたい。どちらも1時間ほどで登頂できる。もう少し歩きたい向きには下高山(202.8メートル)への縦走も選択できる。江田島が眼前に迫る山頂からの景色は見ごたえがあるが、安芸小富士ほどには歩かれていない道なのでファミリーにはあまりおすすめしない。

詳しい「安芸小富士」の記事はこちら https://hread.home-tv.co.jp/post-102057/

安芸小富士の登山道から下高山方面を望む 安芸小富士の登山道から下高山方面を望む

 


武田山(たけだやま 410.5メートル 広島市安佐南区) 中世の巨大な山城跡が残る人気の山


武田山全景 武田山全景

【登山口のアクセス】
JR可部線下祗園駅・大町駅(広島駅から13~20分 おとな210円)
アストラムライン大町駅(本通駅から18分 おとな320円)
広島交通春日野北バス停(広島駅から約40分 おとな360円)

広島市街地を取り巻く山々の多くに中世の城跡が残る。中でも最も規模が大きいのが武田山の銀山(かなやま)城跡だ。鎌倉時代の1221年に安芸国の守護だった武田信宗によって築かれ、難攻不落を誇った。1541年に毛利元就に攻め落とされるまで安芸武田氏の本拠として続いた。山中には見張台や御門跡、千畳敷など中世山城の遺構が各所に残っている。

見張台 見張台

登山口は大町駅から徒歩10分の大町登山口か下祗園駅から徒歩約20分の武田山憩いの森登山口がメイン。どちらもよく整備された登山道で気持ちよく歩くことができる。標高250メートルあたりから傾斜がきつくなり、かつての堅城の片りんを感じさせる。
山頂からは可部方面から足下の広島市街地、広島湾まで一望できる。広い本丸跡はお弁当を食べるのにも絶好だ。大人気の山で、休日には多くの登山者が行き交う。
ここから南に向かって鈴ヶ峰まで「広島南アルプス」の縦走路が通っている。全部を歩き通すと20キロ近いロングコースだが、隣の火山(488メートル)まで足を延ばし、権現峠から春日野団地に下山してバスで帰るルートなら無理なく楽しめる。

詳しい「武田山」の記事(広島南アルプス㊤)はこちら https://hread.home-tv.co.jp/post-143882/

武田山山頂 武田山山頂

 


二葉山~牛田山 縦走(ふたばやま~うしたやま 広島市東区)戦跡と歴史、文化の縦走路


牛田山山頂から二葉山、安芸小富士方面を望む 牛田山山頂から二葉山、安芸小富士方面を望む

【登山口のアクセス】
JR広島駅から徒歩10分
アストラムライン不動院前駅(本通駅から約10分 おとな230円)

広島でファミリー登山を始めるならぜひおすすめしたいコース。広島東照宮をスタートし、銀色の仏舎利塔が立つ二葉山(139メートル)へ。尾長山(186メートル)、牛田山(260.7メートル)の三山を縦走して広島市内唯一の国宝がある不動院へ下山する。戦跡あり、史跡あり、遺跡あり、もちろん眺望も。盛りだくさんの山歩きが楽しめる。

仏舎利塔 仏舎利塔

二葉山の山上には戦時中の防空施設だった高射機銃陣地の跡が残っている。仏舎利塔周辺は市街地展望の名所。標高が低い分町並みが近く、暮らしの息づかいを感じる。ここまでは車で登ってくることも可能だ。いったん住宅街に下りて尾長山の登りにかかると、市街地のすぐ近くにもかかわらず本格的な山歩きの雰囲気が味わえる道になる。アップダウンもそれほど激しくはなく、ほぼほぼハイキングの感覚で歩くことができる。
ルート最高峰の牛田山は頂上付近に中世の山城跡や古代の貝塚がある。貝塚では今も貝殻を見つけられる。牛田山からの下山は文化財に出会うなら不動院へ、天然温泉の日帰り入浴を楽しむなら神田山荘方面へ。紹介したルート以外にも多くの道があり、万一体調が思わしくなくなった場合にどこにでも下山できるのもありがたい。

詳しい「二葉山・尾長山・牛田山」の記事はこちら https://hread.home-tv.co.jp/post-129543/

牛田山からの下山路。不動院方面と神田山荘方面の分岐 牛田山からの下山路。不動院方面と神田山荘方面の分岐

 

ライター えむ
還暦。50代後半になってから本格的に山登りを始めて4年ほど、中四国の低山を中心に日帰りの山歩きを楽しんでいます。できるだけ公共交通機関を利用しますが、やむを得ない場合に時々レンタカーを使うことも。安全のためトレッキングポールは必ず携行。年齢のわりに歩くのは速い方です。
■連載コラムバスと電車と足で行くひろしま山日記
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