土砂災害で被災した水田…獲れたコメで4年越しの酒づくり【地球派宣言】
安佐北区可部の旭鳳(きょくほう)酒造。タンクの中のお酒を前に談笑する地域貢献プロジェクト「ふるさと楽舎」の馬場田真一(ばばた・しんいち)さん。7代目蔵元の濵村洋平(はまむら・ようへい)さんと一緒に日本酒のもととなるお米を作りました。
タンクの前で話す馬場田さんと濵村社長馬場田さんは 「お米を作るのでお酒にしてください。一緒にやりましょう」と蔵元の濱村社長に声をかけたといいます。濱村社長は「ゴールは明確だったけど、なかなか難しかった」と振り返ります。
談笑する2人8年前の広島土砂災害で被害が出た安佐北区大林町。馬場田さんがこの場所で米を作ろうと思ったのは、田んぼを所有する住民との出会いでした。
安佐北区大林町田んぼを所有する河藤繁子さんは「被災して田んぼはもう絶対出来ないと思い諦めていた。でも石垣を直してもらって被災以前と同じように田んぼができるようになった。馬場田さんから米を作らせてもらえないかと言われたときはすごく嬉しかった」と振り返ります。
田んぼを所有する河藤さん馬場田さんは家族で大林町に移住し耕作放棄地になっていた水田を修復。地元住民のアドバイスを受けながら日本酒に使うコメ作りを始めました。
馬場田さんは「地域の魅力を再発見したり発信するためにいろんなことをしていかないといけない。飲み二ケーションという言葉があるくらいなので、米から作ってお酒に加工してみんなで飲もうというのが最初の一歩です」と話します。
田植えをする馬場田さんしかし・・・馬場田さんに農業の経験はありません。地元の学生にも協力してもらい手探りでコメを作りましたが…
「この3年間失敗づくし。必要な収量がとれないというトラブルもあって、ちょっと残念な結果になっています。まさに今年こそは覚悟の4年目。」と話します。
そして去年の秋。4度目の挑戦で日本酒造りに必要な量が実りました。
コンバインで米を収穫馬場田さんは「今年はコンバインかけている時、嬉しかった。量も多くできたし、実も太かった。害虫には絶対やられないぞと思った」と振り返ります。
収穫を喜ぶ馬場田さんら収穫から2カ月後。一緒に作ってきた濵村さんの酒造会社で酒の仕込みが始まり、先月、ようやく初搾りを迎えたのです。
日本酒の仕込み作業日本酒に使う米は表面を削って使いますが、このお酒は、米の風味が感じられるようほとんど削らずに仕上げたそうです。
完成したお酒試飲した馬場田さんは「甘みがふわっときた後にずっと残る感じ。4年越しにできた!」と興奮気味。できたお酒は4合瓶にして2000本程度。米の出来がよく、想定よりも多くできたそうです。
試飲する馬場田さん酒の評価について聞かれた蔵元の濵村社長は「エキスがしっかりあるお米なので味は想定よりもしっかり出ましたね。深みがあって土地の味を感じる、しっかりした味わいは表現できたかな」と話します。完成したお酒はクラウドファンディングで支援してくれた人に送るほか、店頭での販売も予定しています。
旭鳳酒造の濵村社長ようやく生まれた馬場田さんたちのお酒。馬場田さんは「1つの大きな核になる活動ができました。これが核になって活動がスタートする」と話しました。
試飲する馬場田さん土砂災害で被災した水田を修復し移住して始めたコメ作り。目標のお酒は完成しましたが、まちを元気にする活動はこれからも続きます。
馬場田さんの米で作った日本酒