ベンガラの町で歴史・体験・グルメを満喫!/吹屋(岡山県高梁市)
岡山県南西部に位置する高梁市。標高約550mの山間に突如、赤く染まった町並みが現れます。
ここは赤色の顔料「ベンガラ」の生産地として栄えた町・吹屋。赤銅色の石州瓦とベンガラ色の外観で統一された日本家屋が建ち並ぶ景観は、江戸~明治時代にかけて豪商たちが作り上げたもの。往時の面影を色濃く残した町を歩くと、タイムスリップしたような気分になります。
郵便局もフォトジェニック。『吹屋ふるさと村』と呼ばれる町並みは、国選定の重要伝統的建造物群保存地区であり、また2020年には「『ジャパンレッド』発祥の地~弁柄と銅(あかがね)の町・備中吹屋~」として日本遺産に登録されました。
最近では、今年10月に公開された岡田准一さん主演の映画『燃えよ剣』のロケ地としても注目を集めています。そんな話題性たっぷりの吹屋を満喫してきました!
【スポット1】『下町ふらっと』でベンガラ染めを気軽に体験!
まずは吹屋の町並みの南端にある『吹屋案内所 下町ふらっと』で、ベンガラ染めにチャレンジ! ハンカチや手ぬぐい、Tシャツなどを染めることができます。
『べんがら染め 弥八』の屋号で活動する染色作家・小倉邦子さんがやさしくサポートしてくれるので、大人から子どもまで楽しく体験できます。
今回は輪ゴムで布を縛って染める「絞り染め」(左)と、三角に折り畳んだ布を2枚の板で挟んで染める「板締め絞り」(右)という2種類の方法を体験しました。
水でふやかした大豆をすりつぶして作る「呉汁」で、顔料を溶いた染色液。
実は、ベンガラの顔料には赤色だけでなく黄色や黒色もあるのだとか。それぞれの顔料を混ぜれば、オレンジ色や緑色など多彩な色を作り出すことができるのです!
絞り染めも板締めも、染色液を刷毛や筆で布に染み込ませる手順は同じです。「こうしなきゃ」なんてルールはなく、思うままに色をのせていく作業はすごく楽しい!
さらに『下町ふらっと』では、ベンガラ絵の具を使った型染めも体験できます。型紙の上から専用の刷毛をくるくる回して、絵の具を刷り込んで染めていくだけなので簡単!
染め終えたら外に干して乾かします。右端が絞り染め、その隣が板締め絞りで染めた作品です。
「乾かしている間に町を散策する人も多いのよ。さ、いってらっしゃい!」と小倉さん。ではお言葉に甘えて、次のスポットに行ってきまーす!
吹屋案内所 下町ふらっと
住所/岡山県高梁市成羽町吹屋890
電話/090-8999-0477
営業時間/10:30~16:00 ※予約優先、12~2月は完全予約制
体験料金/ベンガラ染め…ハンカチ1,800円~、型染め…コースター800円~
※材料費込み。持ち込みの場合は500円引き
所要時間/ベンガラ染め…約30分~、型染め…約20分~
定休日/不定休
スマホ決済・カード決済不可
https://www.facebook.com/simomachiflat
【スポット2】国の重要文化財『旧片山家住宅』
1759年の創業以来、200年以上ベンガラの製造・販売を手掛けてきた片山家。ベンガラ屋としての店構えを残す主屋とともに、ベンガラ製造にかかわる蔵や仕事場などの付属屋が立ち並ぶ『旧片山家住宅』は、国の重要文化財に指定されています。
腰高格子を飾る袖壁や繊細な出格子、なまこ壁など、意匠が凝らされた外観も見どころ。
広大な敷地内には、ベンガラ製造・販売にまつわるさまざまな資料などが展示されています。
隆盛を極めた片山家が描かれている、明治時代初期のポスター。ハイカラです。
主屋に残る台所などから、当時の暮らしが伝わってきます。
旧片山家住宅
住所/岡山県高梁市成羽町吹屋367
電話/0866-29-2205(高梁市観光協会吹屋支部)
営業時間/10:00~17:00 ※12~3月は10:00~16:00
入場料/一般500円 小・中学生250円 ※郷土館と共通
定休日/年末年始
スマホ決済・カード決済不可
【スポット3】吹屋を代表する建築物『郷土館』
『旧片山家住宅』のほぼ真向かいに位置する『郷土館』。どちらも映画『燃えよ剣』の撮影に使用されたスポットです。
『郷土館』は片山家の分家で、ベンガラ窯元の総支配人・片山嘉吉の邸宅でした。石州の宮大工が手掛け、1879年(明治12年)に完成。妻入の入母屋造りで、吹屋を代表する建築物です。
石州瓦で葺かれた屋根や格子窓を間近で見ることができます。
こちらは細~い隠し廊下。隠し部屋に繋がっています。
郷土館
住所/岡山県高梁市成羽町吹屋699
電話/0866-29-2205(高梁市観光協会吹屋支部)
営業時間/10:00~17:00 ※12~3月は10:00~16:00
入場料/一般500円 小・中学生250円 ※旧片山家住宅と共通
定休日/12~3月の火~金、年末年始
スマホ決済・カード決済不可
【スポット4】『カフェ燈(あかり)』で地元野菜たっぷりのランチ
広いお屋敷を歩き回ってお腹がぺこぺこになったところで、吹屋の町並みの北端にある『カフェ燈(あかり)』へ。
お目当ては、高梁市周辺や近隣農家で採れた新鮮野菜をふんだんに盛り込んだランチ(1,200円)です。
吹屋の郷土料理をベースにした10品以上の献立は、全て地元のお母さんたちの手作り。
内容は日替わりで、この日は自家製ドレッシングで味わうサラダ、カボチャとひき肉のあんかけ、栗の渋皮煮などが登場しました。どれもほっとするような、やさしい味わいです。
カフェタイムには、高梁市の特産品であるもち麦と『みさわ味噌』を使ったシフォンケーキ(ドリンク付き900円)をどうぞ。
ランチ・スイーツともに、ドリンクは地元産の和紅茶『高梁紅茶』または市内の焙煎所『Mellow Cofee』のコーヒーから選べます。
『カフェ燈』は、築約140年の町家をリノベーションした宿『町家ステイ吹屋 千枚』に併設されています。一日一組限定・一棟貸し切りスタイルの宿で、せわしない日常を忘れてゆっくり過ごすのもおすすめ。
カフェ燈(あかり)
住所/岡山県高梁市成羽町吹屋398
電話/0866-29-3050
営業時間/10:00〜16:00
定休日/火~木、年末年始
スマホ決済・カード決済可(詳細はお問合せください)
https://fukiya-stay.com
【スポット5】『佐藤紅商品』が作る、吹屋の新たなお土産品
ユニークなダルマや天狗の箱に入った柚子胡椒『吹屋の紅だるま』と唐辛子ソース『吹屋の紅てんぐ』、キュートな猫が描かれた『ゆずニャーニャレード』、ご飯が変顔(?)しているラベルの『にんにくみそ』『もろみとうがらし』……。
愛嬌満点のこれらは全て、吹屋周辺で自社栽培した食材などを使ってお土産品を開発・製造している『佐藤紅商品』の商品です。
一番人気は、柚子の豊かな香りと唐辛子のピリリとした辛さが料理を引き立てる『紅だるま』(写真中央、650円)。さらに藻塩を加え、柚子と唐辛子の存在感が一層感じられる粗挽きタイプ(写真左端、650円)は、吹屋にしかない限定商品なのでお買い逃しなく!
こちらの『長尾醤油酒店』をはじめ、吹屋の5つの店舗・施設で購入できます。
長尾醤油酒店
住所/岡山県高梁市成羽町吹屋704
電話/0866-29-2819
営業時間/9:00~18:00 ※冬期は~17:00
定休日/不定休
スマホ決済・カード決済不可
【ほか取り扱い店舗】
・麻田百貨店
・ラフォーレ吹屋
・スープカレーのお店 つくし
・吹屋食堂
【スポット6】『ベンガラ館』でベンガラの製造工程を学ぶ
最後は、吹屋の町並みから車で5分ほどの場所にある『ベンガラ館』へ。
明治時代のベンガラ工場を復元した施設で、当時の製造工程を知ることができます。
工場はベンガラの原料であるローハ(硫酸鉄)を焼く『窯場室』、焼いたローハを水洗いして不純物を取り除いた後、石臼で挽く『水洗い・碾臼場』、挽いた粉を水槽に入れて酸(アク)を抜く『脱酸水槽室』の3棟と、酸の抜けた粉を天日干しする場所『干棚』で構成されています。
こちらは『水洗い・碾臼場』。工場内は全て赤く染まっています。重厚な石臼がかっこいい!
ベンガラ館
住所/岡山県高梁市成羽町吹屋86
電話/0866-29-2136
営業時間/10:00~17:00 ※12月~3月は10:00~16:00
入場料/一般300円 中学生以上150円
定休日/火~金(祝日の場合営業)、年末年始
スマホ決済・カード決済不可
ベンガラ生産で築かれた独自の歴史、ベンガラ染め体験、地元食材づくしのランチなど、好奇心を刺激する要素がぎゅっと詰まった吹屋。小さな町なので、一日あれば今回ご紹介したスポットは全て回ることができます! ノスタルジックな赤い町並みに癒やされつつ、アクティブに楽しんでくださいね!
瀬戸内Finderフォトライター ヒロエカナコ
※感染症対策に配慮した上で撮影を実施しています。
▼記事提供元
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