バスと電車と足で行くひろしま山日記 第9回 三倉岳(大竹市)

 

 

▼今回利用した交通機関 *時刻は休日ダイヤ

行き)

  • JR山陽線(おとな片道510円)/横川(8:35)→玖波(9:09)
  • 大竹交通大竹・栗谷線バス(おとな片道680円)/玖波駅(9:10)→栗谷支所前(9:51)

帰り)

  • 大竹交通大竹・栗谷線バス/栗谷支所前(16:16)→玖波駅(16:57)
  • JR山陽線/玖波(17:09)→横川(17:43)

 


「三本槍」にチャレンジ


中国地方の多くの山々がそうなのだが、広島には穏やかな容姿の山が多い。そんな中で、険しい花こう岩の岩稜の山容で知られるのが大竹市北部にそびえる三倉岳(701.6メートル)だ。天を突く三つの岩峰から「三本槍」と称され、ロッククライミングの聖地としても知られている屈指の名山に挑戦してみよう。

天を突く三本槍と称される三倉岳 天を突く三本槍と称される三倉岳

 


お弁当優先のスケジュール


交通機関のルートを見ていただくとわかるのだが、JR玖波駅でバスの乗り換え時間が1分しかない。こんな余裕のない予定を組んだ理由は、お弁当だ。
鶏のから揚げと大ぶりのおにぎり2個が入った「むさし」の「若鶏むすび」が大好物なのだが(個人的にお好み焼きと並ぶ広島のソウルフードだと思っている)、横川駅店の開店時間は午前8時30分。出発時間が早くなりがちな公共交通機関利用の山歩きには結構ハードルが高い。
今回はバスの発車時間が遅めで、バス停も玖波駅の改札を出て50メートルしか離れていないので、ダッシュすれば間に合うと踏んだ。それでも電車が遅れはしないかと少しはらはらしたが、バスの到着が遅れたこともあって結果的には余裕の乗り継ぎだった。


異例の登山プラン


三倉岳の3本の岩峰は、東から朝日岳、中岳、夕陽岳(上ノ岳、中ノ岳、下ノ岳)と名前がついている。それぞれが福・徳・寿を象徴しているという言い伝えもある。当然、登山者としては三つの峰を周回したい。ところが、中岳と夕陽岳を結ぶルートは通行止め(2021年11月25日現在)。県立自然公園でもある一帯を管理する広島県は、Aコースは夕陽岳、Bコースは朝日岳と中岳のみ登山できるという規制をしている。
従うしかないので、まずはAコースで夕陽岳に登り、いったん四合目まで下山してBコースを登り返して中岳と朝日岳のピークを踏むという異例のプランを立てた。急登と急坂の下りを繰り返すので足がもつか心配だったが、とにかく行ってみよう。

Aコース登山道入り口の掲示 Aコース登山道入り口の掲示

 


まずは「寿」の峰へ


バス停から舗装路を歩くこと20分でAコース登山口に到着。道はよく整備されており、快適な滑り出しだ。天気予報は緩やかな下り坂。雲は多いが、登山中に雨に降られることはないだろう。

よく整備された登山道 よく整備された登山道

歩き始めて20分、左手に巨大な岩塊が現れた。「翁(おきな)岩」というそうだ。地震で山頂から転がり落ちてきたといわれているそうで、昔山中で道に迷った僧がこのあたりで木こりの翁と出会ったのが名前の由来だという(説明板)。

巨大な翁岩 巨大な翁岩

ほどなく四合目小屋に到着し、一息入れた。これからが急登の始まりだ。地図を見ても、みっちり間隔の詰まった等高線とほぼ直角に交差するように道がついている。樹林に囲まれた登山道は眺望もあまりないが、途中の見晴岩からは迫力ある岩峰が望めた。

見晴岩から見た三倉岳 見晴岩から見た三倉岳

約1時間15分で九合目の分岐に到達。左に行けば三角点のある山頂(701.8メートル)だが、眺望がないとわかっているのでパス。「寿」の峰、夕陽岳のピークに立った。
眺望はすばらしい。曇りがちで瀬戸内海は見えなかったが、特徴ある山容の吉和冠山(1338.9メートル)や羅漢山(1109.1メートル)、大野権現山(699.5メートル)が確認できた。
頂上からは巨大な岩塊が斜め下に向かって延びていて、数十メートル先の崖っぷちまで歩いて行ける。慎重に歩を進めて往復した。

九合目小屋…跡ですね 九合目小屋…跡ですね 夕陽岳から西方を望む。中央は羅漢山 夕陽岳から西方を望む。中央は羅漢山

 

夕陽岳山頂から延びる岩塊 夕陽岳山頂から延びる岩塊

 

後ろを振り向くと… 後ろを振り向くと…

東に目を転じれば、中岳のピークの岩の上に4、5人の登山者がいるのが見える。ほんのすぐそこなのだが、最短距離で行くことはできないので下山にかかる。鎖とロープで厳重に封鎖された縦走路を横目に急坂の階段を約40分で分岐まで下った。

中岳への縦走路の立入禁止表示 中岳への縦走路の立入禁止表示

ロッククライミングの聖地


Bコースの登山道沿いにはロッククライミングのフィールドがたくさんある。岩には課題ごとに「ワッフル」や「ABCフェイス」、「青白ハング」などの個性的な名前が付けられており、多くのクライマーたちが挑んでいた。ルート総数は170もあるそうで、県外からも多数の愛好家が訪れるという。しばし「ワッフル」でクライマーの妙技を見学して中岳、朝日岳を目指す。

「ワッフル」に挑むクライマー 「ワッフル」に挑むクライマー

急登に耐えて稜線に上がった後、中岳へは木の根が絡み合う鎖場が待ち受けている。慎重にクリアして夕陽岳から見たピークの岩場に着いた。ここは割と平坦で広く、昼食にはもってこいだ。360度の眺望の中で食す「若鶏むすび」は格別だった。

中岳頂上で若鶏むすびをいただく。後方は夕陽岳 中岳頂上で若鶏むすびをいただく。後方は夕陽岳

 

中岳山頂から見た大栗林、小栗林の集落 中岳山頂から見た大栗林、小栗林の集落 中岳から見た朝日岳 中岳から見た朝日岳

最後の朝日岳に登ると、中岳の崖下から声が聞こえる。何事?と思って目を凝らすと、クライマーたちが中岳の正面の岩壁を登っている。おそらくこのまま中岳の頂上を目指すのだろう。普通の登山者には想像もできない。さすがは三倉岳というべきか。驚きつつも軽い感動を覚えて下山した。足は最後まで何とか持ちこたえた。

中岳直下の岩壁を登るクライマーたち 中岳直下の岩壁を登るクライマーたち

 


登山道の管理は…


今回は通行止め個所を避けて登山をしたが、実際には多くの登山者が通行止めの警告表示を無視して中岳~夕陽岳を縦走している。ネットの投稿などを見ても、通ろうと思えば通れてしまうようなのだ。この日も実際に通行止め個所を通って縦走したという人に会った。中岳側の警告には「鎖が腐食し大変危険」とも表示されているが、ロープの横の立入禁止のテープは切られていた。
通行禁止になったのは2018年7月の豪雨災害以降らしいが、自己責任とはいえ、登山者が危険な(と県が認定している)通行止め個所を自由に往来できている状況はよくないと思う。災害から3年が過ぎても通行止めの状態が続いているのはなぜなのか。再整備する予定はあるのか、ないのか。Aコース、Bコースの登山道や麓のキャンプ場などは、県立自然公園の名にふさわしいすばらしい整備状況だっただけに、残念な思いと疑問が去らなかった。 総歩行距離は8.5キロ。

Bコース登山口近くのキャンプ場のトイレ。しゃれたデザインかつ清潔 Bコース登山口近くのキャンプ場のトイレ。しゃれたデザインかつ清潔

 

JR玖波駅~栗谷支所前を乗せてくれた大竹交通のマイクロバス JR玖波駅~栗谷支所前を乗せてくれた大竹交通のマイクロバス

 

ライター えむ
還暦。50代後半になってから本格的に山登りを始めて4年ほど、中四国の低山を中心に日帰りの山歩きを楽しんでいます。できるだけ公共交通機関を利用しますが、やむを得ない場合に時々レンタカーを使うことも。安全のためトレッキングポールは必ず携行。年齢のわりに歩くのは速い方です。
■連載コラムバスと電車と足で行くひろしま山日記

 

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